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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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052 規格外のマジックバッグと、甘えん坊な最強コボルト軍団の「お留守番」

「そうそう、レンくん。頼まれていたノズチの胃袋を使ったマジックバッグが完成したわよ。周囲の目を引かないように、見た目はあえて普通のバッグにしておいたけれど……中身の容量は凄いわ。超大型、いえ、国家秘蔵レベルのマジックバッグよ」


 ジュリアがクスクスと笑いながらレンに手渡したのは、黒い、どこにでもあるようなごく普通の革製の肩掛けバッグだった。


「へえ、本当に普通に見えますね。これがノズチの……」


 レンが驚いてバッグの口を開けて中を覗き込むが、底は完全な闇に包まれており、どれほど深いのか見当もつかない。


「ダンジョンに行くなら丁度良かったわね。宝箱でも魔物のレア素材でも、好きなだけ詰め込んで持って帰って来てちょうだい」


「素材ですかぁ。程よい魔物が居れば良いのですが……」


「もし外装のデザインが気に入らない時は、後でいくらでも格好よく変更できるから言ってね?」


「いや、目立たないこれが一番良いです。流使、ジュリアさんですね。ありがとうございます!」


「ふふ、喜んでもらえて何より。あとは胃袋の端切れがまだ残っているから、それを使えば、小型や中型のマジックバッグも大量に作れると思うわ。これから工房のこの子たちに作り方を仕込むから、完成したら後で貰いに来ると良いわよ」


「それは有り難い! 狩りに行くコボルトたちに使わせましょう。荷物の持ち運びが格段に楽になります」


 レンが目を輝かせると、足元のコボルトたちも「それは便利だワン!」とお耳をピンと立てた。


「――ジュリアさん。当然、その分の作成料金も後できっちりお支払いします」


 ここでヘレナがサッと帳簿を手に会話に割り込み、ジュリアに告げる。


 「ええ、その超大型の試作品の作成代金はいただくわね。でも、残りの量産分はコボルトたちが自分たちで勉強しながら作るから、技術指導料も含めて無料タダでいいわよ」


「有り難う御座います。では、そのように処理させていただきますね」


 事務処理に関しては絶対に妥協しないヘレナと、職人肌なジュリアのテキパキとしたやり取りを、レンは「流石だなあ」と黙って感心しながら見守るのだった。


   ◇◇


 その後、工房を後にしたレンたちは、移動のためにトカゲの巨大な愛馬(?)である魔物ドラッヘの元へと向かった。


 道中、レンはふと思いついて、隣を歩くドーベルマン風のコボルト・ドライに声を掛ける。


「ドライ、現地での警戒用に、そこそこ腕が立つ戦闘職のコボルトを数名、お前の判断で声を掛けて同行させてくれ」


「ガウ!(了解だワン、マスター!)」


 ドライは短く吠えると、近くでお留守番のパトロールをしていたミニチュア・シュナウザー風のコボルトを呼び止め、何やら「ガウガウ、ワン!」と鋭い口調で指示を伝えた。耳の長いシュナウザーコボルトは「お任せを!」とばかりに敬礼のポーズを取り、猛スピードで村の奥へと走り去っていく。


「レン、急にどうしたの?」

 ヘレナが不思議そうに首を傾げた。


「もしそのゴブリンの穴が本物のダンジョンだった場合、俺たちが中にいる間に外から別の魔物や不審者が入って来ないよう、入り口に見張りを置いた方が良いだろう?」


 レンの適切なリスク管理に、ヘレナは少し感心したように目を丸くした。


「……。それもそうね。あんた、たまには領主らしい冴えたことを言うじゃない」


 レンとヘレナはドラッヘの広い背中に乗り、ドライたちを先頭に村の出入り口の大きなゲートへと到着した。すると、そこにはすでに、見るからに強靭な体躯を持った猛者ぞろいのコボルトたちが、一列にビシッと整列して待機していた。


 胸板が厚く威風堂々とした土佐犬風のコボルト、筋肉の塊のようなアメリカン・ピットブル・テリア風のコボルト、超大型で圧倒的な威圧感を放つカンガール・ドッグ風のコボルト、全身が美しい純白の毛に覆われたドゴ・アルヘンティーノ風のコボルト、頑強な骨格を持つロットワイラー風のコボルト、そして気品と強さを兼ね備えたアクバシュ・ドッグ風のコボルト……。


「おおお……見るからに強そうな面々だ。ん? そこにいる土佐犬とピットブルは、最初に直接テイムした『35匹の眷属』の中の2匹じゃないか! 久しぶりだな!」


 レンがドラッヘから降りて近づくと、それまで軍人のように直立不動だった土佐犬風とピットブル風のコボルトが、一瞬で破顔してレンに突撃してきた。


「わんわん!(マスターーー! 会いたかったワン!)」


「わんわん!(久しぶりワン! 撫でてワン!)」


 大きな体を丸めてレンに嬉しそうに抱き着いてくる2匹。レンは笑いながら、その分厚い頭や胸の筋肉をガシガシと豪快に撫で回してやった。


 そんな感動の再会に、ドライが嫉妬に駆られたようにじろりと睨みを利かせ、低い声で唸る。


「ガウガウ!?(おいお前ら、何故ここにいるワン! 腕の立つ奴を呼べと言ったはずだワン!)」


 すると、土佐犬風のコボルトがレンに撫でられながら、ドライにフンと鼻を鳴らした。


「わんわわん(俺たちが村の中でもそこそこ……いや、トップクラスに強いから選ばれたに決まってるワン)」


「ガウ!(お前らの実力は『そこそこ』じゃないワン! 俺の方が強いワン!)」


「わんわん(まぁ、ドライ兄貴と比べれば『そこそこ』って謙遜しただけだワン)」


「ガウ?(……さては、お前ら職権乱用したな?)」


 ドライが目を細めると、ピットブル風のコボルトが「てへっ」とお耳を寝かせて白状した。


「わんわわわん(もちろん、本当はただマスターに会いたかったからだワン!)」


「わんわん(いつもドライやツヴァイの兄貴たちばかりマスターの隣にいてズルいワン!)」


「わんわわん(俺たちだって、マスターの護衛がしたいワン!)」


 ゲート前で繰り広げられる、屈強な大型犬コボルトたちの凄まじい大音量の「ワンワン、ガウガウ」というおねだりの合唱。


 あまりの騒がしさに、レンはついに両手で耳を塞いで大声を張り上げた。


「あああああ! もう、ワンワン煩い!! 静かにして!」

 ピクッ! と、全員のお耳が綺麗に同時に跳ね上がる。


「ガウ〜……(ごめんなさいワン……)」

「わん〜……(すいませんワン……)」


 さっきまでいかつい顔で言い合っていた土佐犬たちもドライも、大好きなレンに怒られて一瞬でシュンと小さくなり、お耳としっぽを完全に下げてショボンと反省モードになってしまった。そのギャップがたまらなく愛らしい。


 レンは苦笑しながら、改めて彼らの顔を見つめて真面目な声で指示を出した。


「よし、反省したなら良し。これからの任務を説明する。俺たちは今からゴブリンがいる穴に入って内部の調査を行う。お前たちの任務は、俺たちが穴に入っている間、他の魔物や人間を『絶対に』この穴に近づけさせないことだ。できるか?」


 その言葉に、土佐犬風を筆頭とした精鋭たちが、一瞬でキリッとしたプロの戦闘員の顔に戻った。


「わんわん(任せてワン! 一歩も通さないワン!)」


「わんわん(マスターの安全は俺たちが死守するワン!)」


「よし、頼んだぞ。行くぞ、ドラッヘ!」


 レンたちは再びドラッヘに跨り、ゴブリンの穴へと向かって出発した。


   ◇◇


 やがて、鬱蒼とした森の奥にある不気味な岩肌の前に到着した。そこには大きな空洞――ゴブリンの穴があり、周囲では最初に対象を発見した斥候班のコボルト数匹が、気配を消して忠実に待機していた。


「みんな、ご苦労さま! よく見つけてくれたね」


 レンはドラッヘから降りると、右手を上げて斥候のコボルトたちの頭を優しく労うように撫でてやった。それだけで彼らは天にも昇るような幸せそうな顔をする。


「じゃあ、ここからの留守番は頼んだよ」


 レンが後ろに控えていた土佐犬風のコボルトたちに指示を出すと、彼らは穴の周囲を取り囲むように、一糸乱れぬ動きで完璧な防衛陣形を敷いた。この鉄壁の布陣なら、どんな魔物が襲ってこようと一瞬で肉片に変わるだろう。


「よし、それじゃあ、中に入ろうか」

 レンを先頭に、一行はゆっくりと暗闇が広がる不気味な穴の奥へと足を踏み入れていく。


 レンと共に突入したのは、松明を持ったヘレナ。そして前衛として鋭いマチェットを構え、いつでも飛び出せる姿勢を崩さないドライ(ドーベルマン風)、アハト(ワイマラナー風)、ノイン(ボルゾイ風)の3匹。後衛には、レンのすぐ背後をぴったりとマークし、鼻先をレンの服に触れさせながら守るツヴァイ(ゴールデン風)とフィア(フラットコーテッド風)だ。


 過保護すぎるもふもふフォーメーションにガッチリと囲まれながら、レンたちはついに未知の領域へと足を踏み入れるのだった。

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