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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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051 オリハルコンのショートソードと、マドンナたちの秘密の囁き!?

「レン、ダンジョンに行くなら剣ぐらい用意しなさいよ! まさか本当に丸腰で行く気?」

 ヘレナの当然すぎるお説教が、出発前の執務室に響き渡った。


「そうだね。ヘレナの言う通りだ。ちょっと武器を調達してくるよ」


 レンはヘレナの言葉に素直に従い、護衛のもふもふ軍団を引き連れて、元総ギルドマスター・ジュリアが営む錬金術の工房へと足を運んだ。


 扉を開けると、フラスコや怪しげな素材が並ぶ本格的な工房の中で、超大型犬であるチベタン・マスティフ風のコボルト・ツェンが、器用に小さなマチェットを錬成している最中だった。


「よう! ツェン、元気にやってるか?」

「バフバフ!(マスター、久しぶりだワン!)」


 レンが声を掛けて、ツェンのライオンのようにフサフサとした極上の頭の毛をなで回すと、ツェンは大きな尻尾を「ブンブン」とちぎれんばかりに振って喜んだ。


「わんわん?(マスター、今日はどんな用事だワン?)」


 すぐ近くで、ふわふわのカットが愛らしいプードル風のコボルトがレンの足元にすり寄り、クーンと甘えた声を上げる。


 さらに、ジュリアから直々に錬金術の英才教育を仕込まれているボーダー・コリー風のコボルトと、シェットランド・シープドッグ風のコボルトも、作業の手をぴたりと止めて、レンをキラキラとした純粋な目で見つめていた。工房の中は、一瞬で「僕も私も撫でて!」というもふもふの嵐に包まれる。


「あー、みんな可愛いね。……ジュリアさんはいるかな? 実はちょっと、剣が欲しいんだけど」


 レンがプードル風コボルトの頭を優しくなでながら尋ねると、その子は「わんわ〜ん(ジュリアさ〜ん! お客様だワン!)」と、弾むように工房の奥へとジュリアを呼びに走っていった。


「あら、レンくんにヘレナちゃん。珍しいわね、どうしたの?」

 奥から出てきたジュリアが首を傾げる。


「ちょっと、実戦用の剣が欲しいなと思って」

「誰が使うのよ?」

「俺」

「あらあら、何かあったのかしら?」

「ちょっとね、近くで見つかったダンジョンに行こうと思ってさ」


 すかさず、ヘレナがジュリアの前に一歩踏み出した。

「ジュリアさん、お願いですから止めてくださいよ!」


「うふふ、ヘレナちゃん。レンくんも一人の男の子だからね。たまにはそんな冒険気分になることだってあるわよ?」


「ですよね〜!」

 レンが我が意を得たりとばかりに笑顔を浮かべるが、ヘレナの冷たい視線に一瞬で射抜かれる。


「レンは黙ってて! ……ジュリアさん、レンは本当に弱々なんですよ!? 戦闘でもしものことがあったら、この村がどうなるか……大変なことになるわ!」


「あはは、大丈夫よ。レンくんには前に仕立てたあの『ノズチの戦闘服』があるし、これに……そうね、このオリハルコンのショートソードがあれば何とかなるわよ。昔、私が現役時代に使ってたものだけど、レンくんにあげるわ」


 ジュリアが腰のマジックバッグから取り出したのは、美しい青白い輝きを放つ、一振りの極上の短剣だった。


「えっ、良いんですか!? ありがとうございます!」

 レンが受け取り、慎重に鞘から抜くとしげしげと眺める。


(ほう……なんて綺麗な輝きだ……)


 剣の目利きなど一切分からないレンだったが、それでもこの剣が恐ろしいほどの切れ味を誇る、一級の芸術品であることだけは直感で理解できた。


「良いのよ。私はこの村に来てから、毎日がとっても充実していて本当に楽しいの。研究費も素材も使い放題だし、レンくんには心から感謝しているものね」


 ジュリアは、隣で誇らしげに胸を張る弟子のツェンを優しく撫でながら、大人の色香が漂う笑顔をレンに向けた。


「もちろん、後でちゃんとお代は帳簿から引いておきますからね。変な借りは作りたくないので……。はぁ、ジュリアさんなら大人としてレンを止めてくれると思ったのに、完全に当てが外れたわ」


 ヘレナはボソッと肩を落とし、最後は聞こえないほどの小声で不満を呟いた。


 ジュリアはそんなヘレナの様子を見てクスッと微笑むと、他意はないといった様子で言葉を続ける。


「本当に感謝してるわよ。レンくんのことは、なんだか自分の息子みたいに可愛くて仕方ないしね」


「あははは、息子ですか。光栄です」


 レンは照れ隠しに笑って誤魔化したが、その一瞬、ヘレナがもの凄く真剣な、どこか値踏みするような目でジュリアをじっと見つめたのを、レンは見逃さなかった。


(おや……? もしかして、実はこの二人、裏では仲が悪かったりするのか……? いやいや、そんなことないよな)


 そんなレンの鈍感な心配をよそに、ジュリアはヘレナの肩を抱き寄せ、顔を近づけてコソコソと耳打ちを始めた。


「……ヘレナちゃん、気持ちは分かるけどね。男の子だもの、本人のプライドも考えて、時には大きな心で見守ってあげるのも大事な可愛いげよ? ……それに、うかうかしてると、イアンの商会にいる若い女の子たちも、虎視眈々とレンくんの『ワンチャンス』を狙ってるんだからね?」


「えっ!? ……あ、あの子たち、そんな不届きなことを考えて……!? 全然気づかなかったわ。……フン、今度会ったら、しっかり釘を刺しておかなくちゃ!」


 ヘレナの瞳に、領地の治安維持(?)に燃える炎のような決意の光が宿る。


 そんな美少女二人が秘密のガールズトークに花を咲かせていた、その時。


「バフバフ!(マスター、俺もそのダンジョンってやつに行きたいワン! 荷物持ちでも何でもするワン!)」


 チベタン風の巨体を揺らし、ツェンがレンに猛アピールを開始した。


 しかし、すかさずドライとアハトが左右から割り込み、ツェンをグイグイと押し戻す。


「ガウ!(お前は留守番だワン! ジュリアさんの修行はどうしたんだワン!)」


「ガフゥ(そうそう。今回の護衛の定員はもういっぱいだワン。諦めるワン!)」


「バフゥン……(ケチだワン……)」

 すっかりいじけて、床に突っ伏して大きなモップのようになってしまったツェン。


 オリハルコンの剣という最強のロマン武器を手に入れたレンは、そんなもふもふたちのコミカルな小競り合いを笑いながら見守りつつ、いよいよダンジョン調査へと足を進めるのだった。

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