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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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050 もふもふ経済圏の歪み!? 限界ワンオペ美少女と、レンの超・不労所得生活

「ウォンウォン(じゃあ、出発決定かなワン)」


 ボルゾイ風コボルトのノインが、心なしか嬉しそうに長い尻尾を「ゆっ、ゆっ」と振った。どうやらノインは、ツヴァイやフィアほどレンの外出を頑なに止めたいわけではなかったらしい。むしろ、大好きなマスターとお出かけできるのがちょっと楽しみなようだ。


「はぁ……。仕方ないわね、こうなったら私もついて行くわよ」

 ヘレナが額を押さえながら重いため息をついた。


「え? ヘレナも来るの? 今、仕事とか忙しくないのか?」


「忙しいわよ! 激務よ、激務!!」

 ヘレナがキッとレンを睨みつける。


「あんたの代わりに、私がこの領主の仕事を半分以上……いや、九割がた片付けてるんだからね! 次に募集する移住者は、絶対に頭のキレる文官にするんだからぁぁ!」


「お、おう。……その辺りの人員募集は、俺にわざわざ相談しなくても、イアンと二人でガシガシ決めちゃっていいよ?」


「はぁ、全く……。この村はあんたという存在が中心にいないと、一秒たりとも成り立たないんだからね。あんたがもし万が一にでも倒れたりしたら、村の運営は一瞬でストップして大混乱に陥るの。その自覚を持って頂戴。……何せここは、無給で喜んで働くコボルトたちありきの仕組みなんだから。彼らの主人マスターであるあんたが死んだら、この楽園は一瞬で崩壊よ」


「そ、そうだね……」

 ヘレナの正論に、レンは小さくなって頷くしかなかった。


   ◇◇


 ――ヘレナの言う通り、このもふもふ城塞都市の経済構造は、現代の地球人が見れば卒倒するほどレンにとって都合よく、そして超効率的に出来上がっていた。


 まず、コボルトたちは自分で狩りをして、自分の食事(お肉)を自分で賄うことができる。その上、彼らが狩ってきた魔物の毛皮や魔石などの上質な素材は、すべてイアンの商会を通して近隣の領地に売却されるのだが……その莫大な利益は、なんと全額が領主であるレンの懐に入る仕組みになっていた。


 さらに、コボルトたちは服を着る必要がない。


 住居に関しても、プライベートな一軒家などは必要なく、夜にぐっすり眠るためだけの『カプセルホテル型』の寝床があれば十分だった。犬小屋を想像してもらえば分かりやすいだろうか。


 コボルトたちの生活の九割は屋外だ。そのため、通常の2階建ての一軒家ほどの建屋が一つあれば、なんと50匹が快適に眠ることができた。あとは、みんなでワイワイと大好物の焼き肉を食べるための広い食堂さえあれば、彼らの生活空間としては大満足なのである。


 これほど優秀で自活能力の高いコボルトたちが、なぜこの村に引き留められ、レンのために尽くしているのか。


 理由は単純――レンが『コボルトテイマー』として、無自覚に彼らを魅了し、テイムし続けているからだ。


 本人が直接テイムしたと思っているのは、最初の35匹だけである。しかし実際は、その35匹の精鋭たちがそれぞれ群れのリーダーとなり、新しく加わったその他のコボルトたちを従属させていたのだ。言わば『孫テイム』状態である。


 コボルトは習性として、群れになればリーダーに絶対服従する。そして、レンはそのリーダーたちの絶対的な主人なのだから、300匹超のコボルト全員がレンを敬愛し、命を懸けて従うのは当然の摂理であった。


 さらに、もふもふ経済のチートっぷりはこれだけに留まらない。


 薬師のアンナや錬金術師のジュリアが作った回復薬や魔道具、大工のバークが建てた建築物の代金は、当然彼女たちの収入になる。だが、彼女たちに弟子入りして働いているコボルトたちには、お金という概念が必要ない。そのため、彼らが本来受け取るべき高額な報酬や労働の利益も、すべて自動的にレンの収入として右から左へ流れていく。


 最近では、イアンの発案によってコボルトたちによる大規模な『農業』まで始まっていた。村で消費しきれない上質な作物は、当然イアンの商会が近隣の領地へ高値で売りさばくため、その農業利益も雪だるま式にレンの口座へと蓄積されていく。


 まさに、働かずして富が集まる『最強の不労所得システム』。


 そんな万能に見えるコボルトたちだが、当然ながら致命的に苦手なことも存在した。――その一つが『事務作業』である。


 文字を読むことも書くこともできないコボルトたちには、領地の帳簿をつけたり、予算を管理したりする事務仕事は逆立ちしても出来なかった。


 だからこそ、その膨大な事務作業を一手に引き受けているのが、他ならぬヘレナだったのだ。


 元々テイマーズギルドを一人で切り盛りしていた彼女にとって、書類仕事はお手の物。最初は、かつてのカツカツで破産寸前だったギルド運営とは違い、豊富で潤沢な資金が雪だるま式に増えていく通帳を見て、ヘレナも喜び勇んで自ら進んで作業を買って出ていた。


 しかし……いくらなんでも、300匹超のコボルトと数十人の職人たちが生み出す経済規模は大きすぎた。今では一人でこなすのが流石にキツくなり、時折、カミラやイアンの商会の従業員たちに泣きついて手伝ってもらいながら、なんとか不眠不休でこなしているのが現状だった。


 そんな怒涛のバブル経済の中で、最高権力者であるレンは何をしているかというと……。


 彼の仕事は、村の運営が円滑に回るように、コボルトたちに「〇〇をしてね」と指示を出す『指揮命令全般』だった。


 これは、コボルトたちの言葉を完璧に理解でき、かつ彼らが盲目的に従うレンにしかできない、唯一無二の最重要任務である。


 数少ない人間の領民から上がってくる「コボルトたちにここを手伝ってほしい」という依頼や、「ちょっと足を踏まれちゃって」という可愛い苦情、問題解決の相談や新しい提案への対応など、業務は多岐にわたる。


 とはいえ、大抵のことは、護衛として常に周りにいる最初の10匹――レンが心の中で密かに【ナンバーズ】と名付けた頼もしい側近たちに指示を出すだけで、彼らが適切な人員の割り振りをテキパキと行ってくれるため、レン自身の労働環境はそれほど過酷でもなかったりする。


 「他人からは、いつも犬と真剣に話し合っている変な領主様に見えちゃうことだけが、ちょっと残念なんだよなぁ……」


 レンがぼそっと溢すと、ヘレナは呆れたように笑い、ドライとアハトは「そんなことないワン!」とばかりにレンの足元でゴロゴロと甘え始めるのだった。


 ――かくして、限界ワンオペ美少女ヘレナを巻き込み、過保護なもふもふ【ナンバーズ】たちにガッチリと周囲をガードされたレンの、一風変わった「ダンジョン(?)調査」が幕を開けようとしていた。

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