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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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049 過保護なもふもふ包囲網! 秘密のクリーン魔道具と、レンの折れない探究心

 パタパタと小気味よい足音が響き、フラットコーテッドレトリバー風のコボルト・フィアが執務室に戻ってきた。……その背後に、何やら呆れたような顔をしたヘレナを伴って。


「なによ、レン。フィアに突然服の裾を引っ張られて、何かと思えばあんたの執務室じゃない。一体何があったのかしら?」


 ヘレナが首を傾げると、レンは机に頬杖をついてため息をこぼした。


 「あー、いやね。ツヴァイの仲間がゴブリンのいる穴を発見したらしくてさ。俺が直接見に行くって言ったら、この子たちに全力で通せんぼされたんだよ。フィア、お前わざわざヘレナを呼んできて、俺を説得させようとしたのか?」


 レンがじと目でフィアを見ると、フィアはフサフサの尻尾を誇らしげに一振りし、胸を張った。


「ワォン!(そうだワン!)」

「おいおい、俺はお前たちのマスターだぞ? 領主様だぞ?」


 すると、横にいたゴールデンレトリーバー風のツヴァイが、レンの膝に顎を「すんっ」と乗せ、上目遣いでフィアに加勢した。


「ワンワワン(でも、マスターはやっぱり弱いワン)」

「うぐっ……ツヴァイまで言うか」


 ショックを受けるレンの肩に、ボルゾイ風のノインが細長く美しい顔をそっと寄せ、大きな前足でレンの背中を「ぽす、ぽす」と優しく叩き始めた。


「ウォーン……(かわいそうに、よしよしワン……)」

「ノイン、慰めてくれるのは嬉しいけど、これ完全に『弱い子扱い』されてるよね!?」


 その一連のもふもふなやり取りを眺めていたヘレナは、「ふ〜ん、そういうことね」とすべてを察して腕を組んだ。


「なんだよ。ヘレナ、もしかしてあんたも反対なのか?」


「そりゃそうでしょ。あんた、自分で戦えるの? 街のギルマスには相当な啖呵を切って、王子としての威厳を見せつけたらしいけど、私はあんたが武器を持っている姿すら見たことないわよ。毎日もふもふと戯れてるだけで、訓練だって全くしてないじゃない」


 ヘレナの痛烈な正論に、レンはうぬぬと唸った。しかし、ここで引き下がるわけにはいかない。


「むむ……。おい、誰かドライとアハトを呼んで来い!」


 レンは、近くでお給仕をしていたメイド服姿のチワワコボルトに命令した。


「わんわん!(承知しましたワン!)」

 ウルウルとした大きな瞳のチワワコボルトは、大好きな領主様の命令に絶対服従だ。短い後ろ足で一生懸命にトコトコと走り、急いで執務室を出ていく。


 ヘレナはそれを見送り、フッと不敵に笑った。

「あ、さては、戦闘大好きなイケイケ派のドライとアハトなら、自分の味方をして一緒に行ってくれると思ってるのね?」


「あはは、バレたか。あいつらなら『行こうぜ!』って言ってくれるはずさ」


 レンが鼻を鳴らすと、フィアがすかさず「ワォンワォンワォン!(僕たちだって意地悪じゃなくて、マスターを心配してるんだワン!)」と、不満げにお耳をパタパタさせて抗議する。


「いやね、ヘレナ。俺が思うに、そのゴブリンの穴って、ただの巣じゃなくて『ダンジョン』だと思うんだよね」


「ダンジョン!?」


「そう! もし本物のダンジョンだったら、男として一度は入ってみたいじゃん。ロマンだよ、ロマン!」


「尚更危ないでしょ! 何が入っているか分からないのよ!?」


「でもさ、ダンジョンだったら、中に眠る宝箱から『魔法のスクロール(魔導書)』とかが出るかもしれないだろ?」


「スクロール? あんた、そんなものが欲しいの? だったら普通に商人から買っちゃえばいいじゃない。お金なら、この前、隣の街の領主がギルマスの件でお詫びにと、全財産じゃ足りないほどの莫大な賠償金を置いていったでしょ。予算なら腐るほどあるわよ」


 ヘレナの超現実的な金満発言に、レンは首を振った。


「違うんだよ。大体さ、うちの可愛いコボルトたちには、汚れを落とす『クリーン(生活魔法)』のスクロールが必須なんだぜ? でも、今クリーンを使えるのはツヴァイたち上位の5匹だけだろ。全員とはいかなくても、ある程度の数のコボルトにはスクロールを配って、いつでも綺麗でいられるようにしてあげたいんだよ!」


 マスターが自分たちのためにスクロールを欲しがっていたと知り、ツヴァイやフィア、ノインたちの瞳がじわっと感動に潤む。


 しかし、ヘレナは呆れたようにパチパチと瞬きをすると、ふぅと大きなため息をついた。


 「……あんたね。今更ながらだけど、この村に住んでる300匹超のコボルトたちの中に、汚れていたり臭かったりする子が『一匹もいない』ことに、まさか気づいてないの?」


 「え? ……あ、そう言えば、みんな毎日泥だらけで遊んでるはずなのに、いつも毛並みがフカフカで綺麗だな……」


 「そうよ。少し前にジュリアがね、『クリーン』の効果を自動で発動する特製の魔道具を作って、コボルト専用の出入り口に設置したのよ。だから、コボルトたちが外から村に入るとき、そのゲートを通るだけで、みんなどこぞの高級サロン帰りみたいにピカピカに洗浄されてるわ。だから、クリーンのスクロールなんて不要よ、不・要!」


「知らなかった……」

 レンはガーンと雷に打たれたような衝撃を受けた。


「そういう便利なチートっぽい魔道具って、普通は主人公である俺の発案とか提案で作るもんじゃないの……?」


「チートが何だか知らないけど、あんたはいつも『みんなが幸せならいいよー』って人任せなんだから、いいでしょ。些細な生活の改善は、こっちの女子組でどんどん進めちゃうわよ。もふもふたちの衛生環境は、待った無しの最優先事項なんだからね」


「そうか……。うん、みんなを綺麗にしてくれて本当にありがとう……」


 レンがガックリと肩を落としていると、先ほどのチワワコボルトが、お目当てのドーベルマン風コボルト・ドライと、ワイマラナー風コボルト・アハトを連れて戻ってきた。


「ガウガウ!?(マスター! なんか面白そうな穴に行くって本当か!?)」


「ガフガフガフガフ!(俺たちが全力で守ってやるワン! 武器の準備はバッチリだ、すぐに行こう!)」


 期待通り、血気盛んな二匹は尻尾をブンブンと振り回し、大はしゃぎでレンに飛びついた。


「おう! お前たち、やっぱり分かってくれるか!」


 レンは待ってましたとばかりにドライとアハトの首元に抱きつき、「よしよし」と極上の毛並みを撫で回す。そんな調子の良い主の姿を、ヘレナは冷ややかなジト目で見つめていた。


「ちょっと、ドライ、アハト。フィアとツヴァイはね、あんたたちの何倍も、レンの身の安全を本気で心配して止めてるんだからね!」


 ヘレナの言葉に、フィアとツヴァイがすかさずレンの前に立ちはだかる。


「ワンワンワンワン!(そうですワン! 主の安全が第一だワン!)」

「ワォンワォン(ドライたちも、少しは頭を冷やすワン!)」


「あはは……みんなが俺を心配してくれてるのは本当によく分かってるよ。でもさ、主人がどうしても行きたいって言ってるんだから……ね? 今回だけは行かせてよ。その代わり、ドライたちと一緒に、俺のことを完璧に守ってくれ!」


 レンが手を合わせ、真剣な目でお願いすると、過保護なもふもふ包囲網もついに折れたようだった。


 フィアはツヴァイと顔を見合わせ、やれやれと困ったようにお耳を下げた。


「ワンワン……(フィア、こうなったらマスターは頑固だから仕方ないワン……)」


「ワォン(そうね……私たちが絶対に怪我をさせないように、全力で張り付くしかないワン)」


 こうして、もふもふ軍団の妥協(過保護な厳戒態勢)を勝ち取ったレンは、ドライとアハトを先頭に、いよいよ謎の「ゴブリンの穴」へと調査に向かう準備を始めるのだった。

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