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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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046 領主への直訴と冷ややかな視線! 暴かれる豚ギルマスの強欲と、暴走の終着点

「大至急の案件だ! 街の存亡に関わることなんだよ!」


 冒険者ギルドのギルマスは、息を荒くして門番の衛兵にねじ込み、強引に辺境の街の領主への面会許可をもぎ取った。汗と泥にまみれた肥満体を揺らし、大慌てで領主の執務室へと通される。


 豪奢なデスクの前に座る領主は、酷く狼狽した様子で入ってきたギルマスを、冷徹で落ち着いた眼差しで見つめ、冷静に問いかけた。


「大至急の案件と聞いたが、一体何があったのだ?」


「大、大変なのです領主様! 未曾有の大事件です! この街を拠点にしている我がギルドの精鋭冒険者、総勢50人が無残にも皆殺しにされました! 事態は一刻を争います、今すぐ領兵を派遣してくだされ!」


 ギルマスは悲壮感を演出しながら、大袈裟に身振りを交えて叫んだ。


「な、なんと……! それは穏やかではないな。我が領の貴重な戦力が50人も……。して、その暴徒はどこに潜んでいるのだ? どこへ領兵を派遣すればいい?」


「辺境の開拓村です! あそこにいつの間にか巨大な砦が築かれており、数百匹もの狂暴なコボルトを従える極悪人が立て籠もっているのです! 冒険者ギルドの総力を挙げて討伐に向かいましたが、残念ながら力及ばず、卑劣な罠によって返り討ちに遭いました!」


「辺境の開拓村なぁ……」


 領主は椅子の背もたれに体を預け、記憶の引き出しを探るように目を細めた。

「その、数百のコボルトを従えるという極悪人の名は、何と言うのだ?」


「レンです! コボルトテイマーの、レンという世間知らずのガキです!」


「辺境の開拓村、レン……」

 どこかで聞いたことのある、いや、絶対に聞き忘れてはならない最重要の組み合わせに、領主の眉がピクリと跳ねた。領主は何も言わず、脇に控える年老いた執事へと視線を送る。


 すっと音もなく、スマートに領主の傍らへと近づいた執事は、その耳元で極上の静けさをもって囁いた。


「――ミッキー侯爵……いえ、新国王アネガコージ陛下より極秘裏に通達のあった、あの『レン王子』にございますな。継承権を持たれたまま、あえて辺境で爪を研いでおいでのお方です」


「む、そ、そうか……。やはりな」

 領主は小さく頷き、冷や汗をにじませながらも、何食わぬ顔でギルマスへと視線を戻した。その瞳の奥には、すでに目の前の男に対する強烈な憐れみと軽蔑が宿っていた。


「……50人もの大軍勢で討伐に向かうとは、そのレンとやらは、よほどの大罪を犯したのだろうな?」


(よし! すぐに領兵を動かしてくれるな!)

 そう確信したギルマスは、領主の声音がどこか低く冷たいものに変わったことへの違和感をスルーし、ここぞとばかりに縋り付いて弁舌を振るった。


「は、はい! あのガキは、この街の冒険者ギルド内で、神聖なる規則を破って我がギルド自慢のCランク冒険者パーティに重傷を負わせたのです! その冒険者たちは、現在も再起不能の重体に陥っております!」


「再起不能になぁ……。しかし、何もなく急に争うことなど、そうそう起きまい。何か、そのレン殿……いや、レンという少年が激昂するような明確な理由があったのではないか?」


 ギルマスは、領主の追及が思ってもみない方向へ移っていくことに焦りを覚え始めた。


(チッ、この領主、何を渋ってやがる……。こうなれば、こいつの『欲』を刺激してやるまでだ!)


 方針を切り替えたギルマスは、下卑た笑みを浮かべて領主への「メリット」を提示しにかかった。


「実は……あのレンというガキは、たかが最底辺のEランク冒険者のくせに、とんでもなく巨大な『ノズチの皮』をギルドに売りに来ました。あの規格外の大きさからすれば、本体の胃袋も食道もさぞや巨大だったはず。国宝級、いや、国家予算レベルの莫大な価値を持つ超一級品であると推測されます! しかし、あの小賢しいガキは皮しか売ろうとしなかったのです!」


「……胃袋と食道は、討伐した本人が自分で何かに使うのではないか? それがどうしたのだ」


「ん? い、いやですから領主様! 領兵を動かしてあのレンを拘束し、胃袋と食道の在り処を吐かせれば、その至宝はすべて領主様のものになるのですよ! 莫大な、それこそ一生遊んで暮らせるほどの金が転がり込んでくるのです!」


「……。お前は、その者をすでに拘束したのか?」

 領主の声が、さらに数度低くなる。


「いえ! そもそもノズチはEランクごときでは天地がひっくり返っても討伐できない、災害級のAランク魔物です! どこぞの凄腕から盗み、横流しして売りに来たに決まっています! ギルドで拘束さえできればすぐに白状させられたのですが、化け物コボルトどもに激しく抵抗され、逃げられてしまったのです!」


 領主は、静かに拳を握りしめた。

(この男……頭が完全に狂っているのか? ――よりにもよって、我が領地を遥かに凌駕する武力と、新国家の血を引く『本物の王子』に対して、何の証拠もなく『盗人』の濡れ衣を着せて捕らえようとするなど……!)


 領主は深い溜め息を堪えながら、皮肉を込めて言った。


「……おい、ギルマスよ。例えば高貴なる貴族の子息が、己の配下の騎士たちに討伐させた魔物の素材を、自身の『箔』をつけるために冒険者ギルドへ持ち込むことは、よくある話だろう? 恥ずかしながら、儂も若い頃はよくやったものだ。……お前の理屈では、それらはすべて『盗んで売っている』と見なされ、お前の私兵に襲撃される対象になるのか?」


「え? んん……!? いや、それは……貴族様は別と言いますか……」


(なんだ……? なんだか話の雲行きが、完全におかしくなってきたぞ……!?)


 冷や汗の量が一気に増えたギルマスは、己の破滅を決定づける「最後のカード」を、自信満々に提示してしまった。


 「領主様! 忘れてはなりませぬ、あのレンは今、このエリア一帯で大高騰している『大量の薬草』をあの村に隠し持っているのです! 辺境の開拓村を領軍で攻め落とせば、山のような薬草も、ノズチの素材も、すべて領主様が総取りできるのですよ! これ以上の大儲けはありません!」


 ギルマスは、自分が墓穴を掘り続けていることにも気づかず、領主が欲に目を眩ませて「出兵だ!」と叫ぶ瞬間を、いやらしい笑顔で待ち構えるのだった。

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