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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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044 哀れなギルマスの大自爆! 孤立無援のパラノイアと、もふもふ城壁からの救いの手

「おいおいおい……。俺たちは一体、どこを攻めさせられるんだ?」


「なんだよ、あのバカげた高さの城壁は……!」


 辺境の村に近づくにつれ、並んで進軍していた馬車や馬の速度が目に見えて落ちていった。


「辺境のしがない開拓村じゃなかったのかよ」


「あんなガチの要塞を攻めるのか? マジで無理だろ」


「ああ、今すぐ家に帰りてえ……」


 目の前に現れた重厚にして圧倒的な三重の防壁を前に、50人の冒険者たちの心は戦う前から完全にボキボキに折れていた。


「な、なんだなんだ……。なんだあの壁は!? 辺境の村は廃墟だったはずではないのか!?」


 誰よりも動揺していたのは、お立ち台の上であれほど大見栄を切ったギルマスその人だった。冷や汗が引きも切らず流れ落ち、肥満体を包む豪奢な服を濡らしていく。


 やがて、天を衝くほど偉容に聳える巨大な城門の前に、完全に腰が引けた50人の軍勢が辿り着いた。


 門の凄まじい迫力に完全に気圧されながらも、ギルマスは虚勢を張り、喉を引き裂かんばかりの大声で叫んだ。


「レン! 出て来い! この盗人野郎が! お前が隠し持っている大量の薬草と、ノズチの素材を今すぐここに出しやがれ!!」


 その瞬間、後ろに控えていた冒険者たちの間で、一斉に冷ややかなザワつきが広がった。


「……え? 仲間(漆黒の翼)の仇討ちじゃなかったのか?」


「おい、俺たち、ただの私欲のために薬草を強奪しにきたのかよ?」


「ノズチの素材ってなんだ? ギルマス、完全に自分の取り分しか考えてねえじゃねえか」


 呆れ果てる冒険者たちの前に、防壁の上から一本の凛とした影が姿を現した。


「ギルマス! 随分と久しぶりね。……あなた、うちの領主を殺しに50人もの武装集団を連れてきたそうじゃない。本当に馬鹿なの? それともとうとう頭が狂ったのかしら。自分が今、どれほどの大罪を犯しているか分かっている?」


 美しい髪を風に揺らしながら、テイマーズギルドの元サブギルドマスター・ヘレナが冷徹な眼差しで見下ろしていた。


「ヘ、ヘレナ!? 何故お前がこんな最果ての地にいる!? ええい、問答無用だ、その門を開けて今すぐレンをこちらへ引き渡せ!」


「私がこの領の『領民』だからここにいるのよ、この大馬鹿者。暴漢や強盗の類に、自分たちの尊い領主様を引き渡す領民が世界のどこにいるっていうの? 薬草とノズチの素材を出せ、ですって? 他人の領地に不法侵入しておいて、よくもまあそんな盗賊みたいなセリフが吐けたものね」


 ヘレナの正論が、鋭い矢のようにギルマスの胸に突き刺さる。


「黙れ、黙れぇい! おい、魔法使いども、何をボサッとしている! あのクソ女に魔法を放て! 焼き殺してやるんだ! レンやあの村の味方をする奴は、全員ギルドの敵だぞ!」


 発狂したように喚き散らすギルマス。しかし、後方に控える魔術師たちは杖を握ったまま、困惑したように顔を見合わせるばかりで誰も動かない。


「いや、でも……」

 客観的に見て、どう考えても自分たちのやっている行為は正義の活動などではなく、ただの『押し込み強盗(盗賊)』そのものだったからだ。相手の防壁の上では、強弓を番えたコボルトたちが一糸乱れぬ構えでこちらを狙っている。勝てるわけがなかった。


 躊躇する冒険者たちへ、ヘレナはさらに優しく、しかし明瞭な声を響かせた。


「冒険者のみなさん。どうか自分の置かれている状況を、冷静に考えてみてください。ギルマスの私欲のために他人の領地を襲撃するなど、弁明の余地なき犯罪行為……明らかな『盗賊の所業』です」


「……だよなぁ。冒険者資格を剥奪されるのはきついが、国家反逆や強盗の罪で本物の犯罪者(奴隷落ち)になるのはもっと御免だ」


「ああ。どう考えても勝ち目はねえし、ここで命を捨てるなんてバカバカしすぎる」


 ヘレナの言葉に、冒険者たちの心は完全に「撤退」へと傾いていく。


「お前ら、あの女の口車に騙されるな! お前らは冒険者ギルドに属する冒険者だぞ! ギルドの命令に背き、名誉を守れない奴は全員、即座に冒険者資格剥奪だ!!」


 裏切りを阻止しようと、ギルマスは必死の形相で叫び散らすが、ヘレナの追撃の手は緩まない。


「どうせいつものように『資格を剥奪するぞ』と脅されて、無理やり連れてこられたのでしょう。ですが、理由はどうあれ、この神聖なる領地に武器を持って攻め込む者は、私たちの手で完全に排除します。……もし、あの男のせいで資格を奪われ、明日からの生活に困るというのであれば、うちの領地で『専属のハンター(猟師)』として正式に雇ってあげてもいいですよ?」


「「えっ!?」」

 思いもよらない、ヘレナからの破格の救済措置に、冒険者たちの目に希望の光が宿る。


「皆さんも薄々感づいているはずです。そのギルマスが裏でどんな違法行為に手を染めてきたかを。そして、その汚い手先として動いていたのが『漆黒の翼』だったということを。このままあの男の言葉に乗り、犯罪行為に加担するなら、あなたたちも同罪として裁かれることになりますよ?」


 ヘレナの決定打とも言えるその言葉に、最前線にいた中堅の冒険者が、持っていた剣を地面に突き刺した。


「……ああ、おい。あんたの言う通りだ。俺はもうイチ抜けた。こんな豚ギルマスの私欲のために死ぬなんてお断りだ」


「俺も抜けるよ。こんな馬鹿げた遠征、最初から反吐が出そうだったんだ」


「俺もだ」「俺も抜ける!」

 一人、また一人と、武器を収めてギルマスの背後から離脱していく冒険者たち。


「き、貴様らぁぁぁ! 謀反か! ギルドへの反逆か! 貴様らは全員、今この瞬間をもって冒険者資格剥奪だ! 明日から路頭に迷って泣き叫びやがれ!!」


 顔を般若のように歪め、泡を飛ばして絶叫するギルマス。善良な冒険者たちが次々と自分を捨てて離れていく現実を認められず、強制的な資格剥奪の脅し文句を乱発して、かろうじて残ろうとする者たちを必死に繋ぎ止めようとするのだった。


 しかし、その哀れな足掻きさえも、強固なもふもふ城塞都市の前では、ただの滑稽なピエロの独り芝居に過ぎなかった。

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