035 錬金術師の工房(マチェット工場)稼働! そして街へ、ドライ&アハトの護衛任務
ノズチから剥ぎ取った最高級の素材をマジックバッグに詰め込み、レンたちは村へ凱旋した。
早速ジュリアに戦利品を渡すと、彼女は目を輝かせて受け取り、興奮気味に声を弾ませる。
「ありがとう! これで最高のマジックバッグと、レンとヘレナのための『戦闘服』を作ってあげるわ」
「戦闘服……?」
「そうよ。ノズチの強靭な食道素材で作れば、魔法も物理攻撃も一切通さない最強の防具になるわよ」
レンは背筋に冷たいものが走るのを覚えた。ジュリアの職人としての腕や技術は心から信頼しているが、その奇抜すぎる独自の美的センスだけはいつまで経っても未知数だからだ。
「……あの、ジュリアさん。服を作ってくれるのは本当に嬉しいんですけど、デザインは『いつもの定番の普段着』と全く同じに、シンプルに作ってくださいね?」
(自信満々すぎる笑顔が逆にめちゃくちゃ不安だ……。フリルとか変な模様とか、絶対につけないでくれよ……)
「さて、ノズチは解体して持ち帰ったけど、胃袋と食道以外の素材は要らないのかな?」
「要らないわね。毒の膜と強靭な粘膜さえあれば十分よ」
「ヘレナ、他に使い道はないかな?」
「うーん、皮はそこそこの値で売れるけれど、肉は毒気があるから捨てるしかないわね。あんな大蛇の肉なんて誰も食べないし、角も牙も骨もないし」
「なら肉はコボルトたちにあげよう。彼らの胃袋なら分解できるだろうし、謎肉として貴重なタンパク源になるはずだ。皮は街のギルドに売りに行くか」
レンはジュリアに向き直り、村の安全に関わる懸案事項を確認する。
「ところで、村の防衛が最優先だから、武器の『マチェット作成』を先に進めてくれないかな?」
「ああ、マチェットね。もう仕込みは完璧よ。……コボルトの中でも特に頭の回転が早いこの3匹に、一から作り方を徹底的に教え込んだから、今後はこの子たちが勝手に量産してくれるわ」
ジュリアが自信満々に指さした先には、ボーダー・コリー、プードル、シェットランドシープドッグ風のコボルトたちが、職人のような真剣な面持ちで立っていた。すでに高度な錬金術と鍛冶の基礎を叩き込まれたらしい。
「わん!(俺たちに任せてワン! 全力で最高の武器を打つワン!)」
「わんわん(もうすでに数本試作を終えて、完璧な出来栄えだワン!)」
「わんわんわん(鍛冶仕事なんて簡単だったワン! マスターを満足させてみせるワン!)」
「おお……! なんという頼もしさだ。みんなの武器を早急に、……とにかく丁寧に作ってくれ!」
◇◇
それから数日後。
ジュリアの手によって、見た目は普段着と全く変わらない(しかし防御力は極限まで高められた安心デザインの)戦闘服を身にまとったレンは、ノズチの皮を売却し、さらなる武器材料を大量に調達するため、ドラッヘに乗って街へ向かうことにした。
村の留守番にはアインス、ツヴァイ、フィア、フンフの4匹を指名して任せ、今回の街への護衛にはドーベルマンのドライと、ワイマラナーのアハトを指名した。両者とも短毛でモフモフ度は低めだが、その冷徹なまでの実戦的戦闘力は、これまでの戦いで折り紙付きだ。
ヘレナとレンが巨大なドラッヘに二人乗りし、その後ろをドライとアハトが地を抉るような凄まじい勢いの全力疾走で追随する。
レンがドラッヘに跨る練習を始めてまだ数日、いまだに完全に乗りこなせておらずバランスを崩しがちであるため、ヘレナが後ろからしっかりと支えてくれているのは非常にありがたい。
道中は何事もなく順調に進み、一行は無事に活気あふれる街の冒険者ギルド前へ到着した。
「レン、私はテイマーズギルドの方に少し確認したい用事があるから、ここからは別行動ね」
「分かった。気を付けてね、変な輩に絡まれないように」
「レンの方こそ、相変わらず戦闘面は軟弱なんだから、ドライとアハトにしっかりしがみついて守られなさいよ?」
「ガウガウ(任せておけワン。主の命に代えても守り抜くガウ)」
「ガフガフ(全力を尽くして護衛するワン)」
ヘレナに見送られ、レンは2匹の精鋭と共に、喧騒に包まれた冒険者ギルドへと足を踏み入れた。
いよいよ本格的な高額素材の売却と、開拓村の戦力を底上げするための大規模な買い出しの始まりである。この街の取引を成功させれば、アレス王国の足場はさらに盤石なものとなるはずだ。




