034 Aランク魔獣ハック作戦決行! 穴掘り職人(コボルト)の本気と、ドラッヘの二人乗り
ついにレンたちは、村を脅かすAランク魔獣「ノズチ」の討伐作戦へと乗り出した。
メンバーは、相棒の騎竜に二人乗りしたレンとヘレナ。そして――
戦闘兼解体要員(精鋭8匹):
アインス、ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフ、アハト、ノイン、ツェンの一期生・二期生フルメンバー。
穴掘り特化要員:
力自慢のコボルト20匹。
レンとヘレナはコボルトたちの移動速度に合わせるため、新しく購入した馬ならぬ「騎竜」に二人乗りでやってきた。ちなみに、この騎竜にはレンが『ドラッヘ』(ドイツ語でそのまんま「竜」)という名前をつけている。
当然、前世でも今世でも乗馬経験ゼロのレンに手綱は握れないため、ヘレナが前に座り、レンがその後ろから腰にしがみつく格好だ。
「危ないから、しっかり抱き着いていてよ?」
「は、はい……っ」
密着するヘレナの体温と良い香りに、ちょっと恥ずかしくも内心かなり嬉しいレン。
ヘレナから竜車購入を勧められた際、騎竜用の鐙付き二人乗り鞍や頭絡といった竜具一式も一緒に買い揃えておいたのが大正解だった。拍車付きのブーツを履き、腰に鞭を携えたヘレナの御者姿は、実にサマになっている。
「ワフワフ!(マスター、こっちだワン!)」
一度ノズチの臭いを覚えたアインスの鼻は完璧だった。迷うことなく先導し、遠くからノズチの姿を捉えることに成功する。
周囲には、あらゆるものを吸い込む巨大掃除機の百倍はあろうかという轟音が響き渡っていた。
「ワフワフ(いたワン)」
「いたわね……」
「あれだね。今は動いてないし、絶好のチャンスだ」
「アインス、みんなは一度ここで待機だ」
「ワフ(了解ワン)」
レンとヘレナは、ノズチが今いる位置と斜面の角度から「転がり落ちるルート」を緻密に予測。穴掘り部隊20匹を引き連れて、先回りのポイントへ静かに移動した。
「この辺りね」
ドラッヘから降りたレンとヘレナは、地面に木の棒で掘るべき穴の位置と大きさを素早く描いてコボルトたちに伝える。
「みんな、ここを大急ぎで掘ってくれ!」
「わんわん!(任せてワン!)」
鉄製のスコップを手にしたコボルトたちは、レンの指示を受けると、まるで宝探しでもするかのように実に楽しそうに穴を掘り始めた。本能的に穴掘りが大好きな彼らの爪とスコップの勢いは凄まじく、文字通りあっという間にドンドンと土が撥ね退けられていく。
「流石、大型種20匹のパワーは凄まじいな。仕事が早すぎる」
「そうね、これならあっという間だわ」
「よし、深さは十分だ! みんな危ないから、一度離れて待機して!」
罠の設置を終え、レンとヘレナは再びドラッヘに跨ってノズチの元へと引き返した。本陣の精鋭コボルトたちに最終指示を飛ばす。
「フィア、落とし穴の準備はできたぞ! 予定通り、穴とは反対側から火魔法でノズチを燃やしてくれ! アインスたちはナイフを手にして、ノズチが綺麗に穴に転がり落ちるように左右の角度を調整するんだ。絶対に正面(口の前)には立つなよ!」
「レディ・ゴー!」
ヘレナの鋭い号令とともに、もふもふの精鋭たちが一斉に飛び出した。レンとヘレナは安全な距離までドラッヘを下げ、状況を見守る。
フィアが紅く輝く火竜の杖を天に掲げ、強力な火魔法を放った。
「ブオオオオオオオオオ――ッ!?」
自慢の体毛を一瞬で燃やされたノズチが、驚きと熱さで悲鳴を上げ、狙い通り身体を丸めてゴロゴロと斜面を転がり始めた!
アインスたちはジュリアから借りたミスリルやアダマンタイトのナイフを構え、転がるノズチの側面に回り込む。炎が収まりそうになるとフィアが間髪入れずに追撃の火魔法を放ち、誘導。アインスたちが絶妙な連携でノズチの尻尾側や頭側をチクチクと突き刺して進路の微調整を行った結果――。
――ズドン!!
ノズチは完璧に、計算通りの落とし穴へとスッポリ縦型に収まり、完全に身動きを封じられた。
すかさず穴の上に飛び乗ったアインスたちが、ジュリア特製の超硬度ナイフを振るい、手際よく「生きたままの解体」を開始する。
「みんな! 喉や食道は絶対に傷つけないように慎重に解体してね! 食道も胃袋に負けないくらい重要な素材だから!」
ヘレナが大きな声で指示を飛ばす。
「え、食道も重要な素材なの?」
不思議に思ったレンが尋ねると、ヘレナはドヤ顔で頷いた。
「そりゃあそうよ。何でも吸い込む魔物なのよ? もし食道が弱かったら、危険なものを胃袋に送る前に自分が大怪我しちゃうじゃない。ノズチの食道は魔法も物理攻撃も一切通さないほど強靭だから、一度吸い込まれたら最後、絶対に脱出不可能なの。異次元の胃袋を支える食道もまた、尋常じゃないレア素材なのよ」
「へぇ……。その食道からは何が作れるの?」
「あらゆる攻撃や魔法を遮断する『全耐性付きの防具(服)』よ!」
「それはすごいな。絶対に傷つけさせちゃダメだね」
安全な高みの見物を決め込みながら的確な指示を出すヘレナと、生きたままサクサクと解体されていくAランク魔獣の姿を、レンは「コボルトたちの作業効率、恐るべし……」と若干引き気味に、しかし満面の笑みで見つめるのだった。




