032 増殖するもふもふ軍団と、魔獣ノズチ討伐作戦会議!
村の中に入ると、至る所でコボルトたちが忙しそうに働いていた。レンを見つけるたびに、彼らは誇らしげに頭を下げて挨拶をしてくる。レンも一人ひとりの頭を撫でたり、ポンと手を挙げたりしながら奥へと進んでいった。
一行は村長の屋敷へと到着する。そこにはいつの間にかヘレナによって大きな布のタープが張られ、臨時の応接スペースが作られていた。
「いやぁ、日陰で涼しくて良い感じね」
アンナが安堵したように椅子へ座ると、足元にはすかさず秋田犬風のアインスが滑り込み、あごを乗せてリラックスし始める。
「わん(お茶をどうぞワン)」
ミニチュアダックスフンド風の小柄なコボルトが、手際よくお茶を運んできた。
レンはふと気づき、ヘレナに尋ねた。
「ヘレナさん、……なんだか村のコボルト、また増えてない?」
「そうね。百匹を超えたあたりから、もう数えるのを諦めたわ。フィアたちが近くの野生の集落から仲間に声をかけて連れてきているみたいだし、新しく加わった子たちがまたさらに仲間を呼ぶから、増える一方よ」
「……百匹……。はぁ、とんでもない数になってきたな」
レンは呆れつつも、まずは当面の拠点について口を開く。
「バークさん、まずはこの村長の屋敷を改築してください。それが済んだら皆で住んで、その後にヘレナさんの家、アンナさんとバークさんの家、ジュリアさんの家と順番に作っていきましょう。コボルトたちの住処も最後じゃなくて早めに作らないとね」
「私は当面、レンくんと一緒にこの屋敷に住むわ。一人じゃ広すぎるでしょ? それより、まずは村の防衛が先決よ」
「うむ。屋敷の改築と並行して、まずは村の外周に堅牢な塀を築こう。ゴブリンも多いし、何より近くにあの『ノズチ』がいたからな。安全第一だ」
その言葉に、ヘレナが目を見開く。
「ノズチ!? ノズチがいたの?」
「ああ、かなり大型の個体だったよ」
「……ジュリアさん。そのノズチ、倒して『異次元の胃袋』をゲットしたいんだけど、なんとかならないかしら?」
レンが切り出すと、ジュリアが嬉々として付け足した。
「ノズチねぇ……ふふ、倒し方は簡単だからなんとかなるわよ。ねえジュリアさん、ミスリルかオリハルコンのナイフは持っている? アダマンタイトでもいいわ」
「全部揃ってるわよ、この通り」
ジュリアが躊躇なく最高級のナイフをテーブルに並べる。
「じゃあ決まりね。ノズチは討伐して、胃袋をゲットしましょう」
「やりましょう」
(おいおい、Aランク魔獣相手にこの即決具合……。ヘレナとジュリア、仲が良いのは分かったけど、俺の意見は完全に置いてけぼりだな……)
レンが苦笑している横で、二人は既に討伐後の胃袋の使い方について盛り上がっていた。
「それじゃ、俺は屋敷の改築作業から始めるよ」
「お願いします! バークさん」
レンはすぐに、村で最も体格の良い二匹を呼び寄せた。
「ゼクス! ズィベン!」
「アフ!(お呼びですか、マスター!)」
「ウワン!(マスター、何でも言ってワン!)」
遠くから地響きのような足音を立てて二匹が駆け寄ってくる。ゼクス(アイリッシュウルフハウンド風)とズィベン(グレートデン風)は、他のコボルトたちが130cm程度なのに対し、150cmを超す巨躯を誇る村の力自慢だ。
「お前たちが村で一番力持ちだ。他に力自慢の仲間を連れてきて、バークさんの改築作業を全力で手伝ってやってくれ!」
「アフ!(任せてください、全部俺たちに任せてワン!)」
「ウワン!(最強の作業団を結成するワン!)」
二匹は誇らしげに胸を張り、他の仲間たちを引き連れて作業現場へと向かっていく。
こうして、ただの廃村だった開拓村は、もふもふたちの熱気と、凄腕職人たちの技術によって、驚異的な速度で「要塞都市」へと変貌し始めていた――。




