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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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026 崩壊した村の農具ハックと、ヘレナの不穏な二つ名「闇姫」の謎

 たどり着いた辺境の開拓村は、想像以上に酷い有様だった。


 かつてののどかな家屋はことごとく瓦礫となって散乱し、かろうじて建っている家も、いつ崩れてもおかしくない、雨風をなんとか防げる程度のボロ小屋ばかり。ゴブリンたちに徹底的に荒らされた爪痕が生々しく残っている。


「よし、まずは片付けからかな! 各班、瓦礫やゴミを村の中央の広場に集めてくれ。それから、これから使えそうな工具や、武器になりそうなモノも一緒に集めよう!」


「ワフワフ!」「ワンワン!」「ガウガウ!」「ワォンワォン!」「バフバフ!」

(((((了解だワン!!!!)))))


 レンの号令に、35匹のコボルトたちが元気よく班ごとに散らばり、凄まじい効率で片付けを始めた。さすがは超大型犬種も混ざる軍団、人間なら数人がかりで運ぶ瓦礫も、ゼクスやツェンたちが軽々と咥えたり担いだりして運んでいく。


 広場には、次々と瓦礫やゴミ、そして彼らが見つけてきた「武器になりそうなモノ」がうず高く積まれていった。


 集まったのは、ナイフ、包丁、鎌、ハンマー、斧、なたをはじめ、三本鍬、4本鍬、大正鍬、スコップ、鉄梃バールなど、開拓村ならではの頑丈な農具や工具が何十種類も出てきた。


 特に包丁のバリエーションが異常だった。牛刀包丁、三徳包丁、出刃包丁、筋引包丁、柳刃包丁、菜切包丁、果ては中華包丁まで、なぜ開拓村にこれほどの種類が揃っているのか謎なほど豊富である。


(ほう、これは凄いな。この先端が尖った牛刀包丁や筋引包丁、頑丈な出刃包丁なんかは、木の棒の先に括り付ければそのまま最高に切れ味の良い槍の穂先ハックにできそうだな。即席の石槍とは大違いだぞ)


 作業をしているうちに日はとっぷりと暮れ、この日は村の広場にテントを広げて野営をすることになった。

 コボルトたちは、今日狩ったゴブリンの肉や、レンのマジックバッグから出された謎肉、謎ホルモンを鉄板でジュージューと焼き、大賑わいで焼き肉パーティを楽しんでいる。その横で、レンたち人間5人は車座になって静かに自分たちの食事を摂っていた。


「レン、まだ片付けは続くと思うが、俺たちはあくまで護衛だからな。明日には予定通り街へ引き上げるよ。レンはどうする? このままこのボロ小屋に住むのか?」

 フェルダーが干し肉を齧りながら尋ねてきた。


「いずれはここにちゃんとした拠点を建てて住もうと思ってますけど、家屋がこの状態じゃ今すぐ住むのは難しいですね。かと言って、途中でこんな大所帯になっちゃったので、この人数(35匹)を引き連れてまた街のテイマーズギルドに戻るわけにもいかないですし……」


 レンは、肉の焼き加減を巡ってギャーギャーと楽しそうに騒いでいるコボルトたちを遠目に眺める。


(道中で懐いてくれた新入りのコボルトたちを、ここに置き去りにして行くなんて絶対にできないしなぁ)


「なので、俺と数匹のコボルトだけが明日、皆さんと一緒に一度街に戻って、腕の良い大工を連れて来ることにします。残りのコボルトたちはここに残して、片付けの続きと村の防衛を任せます。だから俺も、明日一緒に街へ戻りますよ」


「大工か……。でも、ゴブリンに襲撃されたばかりのこんな辺境の危険地帯だぞ? 職人が来てくれるかねぇ。命がけになるんだ、お金をかなり積まないと無理じゃないか?」


「あ、それならちょっとした強い『当て』があるので、多分大丈夫だと思いますよ。ふふ」


 レンの脳裏には、今日アンナさんの家で「腕がなまっちまいそうだ」とがははと笑っていた頑固大工・バークの顔が浮かんでいた。


「ふぅ〜ん、当てねぇ……」

 フェルダーが首を傾げていると、スープを飲んでいたヘレナが不敵に微笑んで手を挙げた。


「だったら、私がここに残って留守番をしておいてあげても良いわよ? その代わり、私がいる間はコボルトたちは私の言う事を聞くようにレンくんから命令しておいてね。戻ってくるまでに、やれる片付けはやっておいてあげるわ」


 レンは、親切を申し出てくれたはずのヘレナを、じーっと訝しげな目で見つめた。


(……なんか、俺がいない間にコボルトたちを勝手に新種登録するとか、怪しい実験の素体にするとか企んでないか?)


「ちょっと、何よその目は! 酷い偏見ね! 別にコボルトたちに酷い事をしようだなんてこれっぽっちも思ってないわよ。基本的に魔物に優しいのがテイマーなの! テイマーは高潔な魔物の研究家な――」


「まぁ、ヘレナに残ってもらえるならレンも安心だろ。彼女はこう見えてテイマーズギルドの『サブギルドマスター』でもあるし、ギルマスのプロフェッサーは魔物研究の第一人者だからな。魔物に無茶な負担はさせないさ。……そう言えば、プロフェッサーの孫娘って、昔冒険者の間で**『闇姫やみひめ』**って呼ばれてた凄腕の元冒険者だったんじゃないか?」


 フェルダーがヘレナのマシンガントークを遮るようにしてフォローを入れた。だが、その内容にレンは引っかかった。

「……サブギルドマスター? それに、……『闇姫』?」


 レンはますます目を細め、ヘレナを訝しむ。


「やぁねぇ! 二人しかいない零細ギルドなんだから、サブギルドマスターだろうが、受付だろうが、苦情担当だろうが、一人で何役もやって何でもこなしてたのよ! 本当にブラックで大変だったんだからぁ! それと、その変な二つ名はね――」


「闇姫っていうのは?」

 ヘレナの話が長くなりそうだったので、レンはすかさず質問を挟んで主導権を握る。


「……そう呼ぶ不届きな人達が一部にいるようね。自分で名乗った事なんて一度もないわよ。昔、私が現役の冒険者だった頃の古い二つ名よ。ちょっと冒険者ギルドの上層部と色々揉め事があって、嫌気がさして冒険者は引退したの。あのギルドの奴らときたら――」


「へぇー、二つ名があるくらいだから、ヘレナさんって実はめちゃくちゃ強いんだ?」

「強いのは私が契約してる従魔よ。当時の私の冒険者ランクはBだったわ。私自身の戦闘力はそれ程でも――」


「プロフェッサーの孫娘だもの、私も噂を聞いたことがあるわ。『闇姫』って言ったら、実質Aランク寄りのBランク最上位だったんじゃない?」

 今度はダリアがニヤニヤしながら口を挟んできた。


「へぇ、そうなんだ。……そう言えばテイマーズギルドにいたのに、ヘレナさんの従魔ってさっきのヤタ以外に見た事ないね。まあ、自分から言い出すまでは聞かない事にしてたし……うん、聞かない事にしてたから、これからもあえて聞かない事にするよ! 言いたくなったらそのうち教えて……!」


(あ、ヤバい。このまま掘り下げたら、ヘレナの『冒険者ギルドへの愚痴マシンガントーク』が朝まで始まる予感がする……!)


「それはね、ギルドの奴らが――」

「いや、待ってヘレナさん! その話は、俺が街から大工さんを連れて戻ってきたら、その時にゆっくり、じっくり聞くから!」


「えっ、あ、そう?」

 レンは慌てて、身振り手振りを交えてヘレナの言葉をピシャリと止めた。横を見ると、『朝焼けの光』の4人も「ナイス判断だ」と言わんばかりに深く頷いていた。どうやら百戦錬磨のBランクパーティですら、ヘレナの長話には辟易していたらしい。


 こうして、聞けば絶対に長くなる面倒な過去話(地雷)を綺麗に先延ばしにしたレンは、明日の街へのとんぼ返りに向けて、そっとお茶を濁すのだった。

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