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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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025 ゴブリン蹂躙の卒業試験! そして、愛情爆発のスクロールで覚醒せきコボルトメイジ

 辺境の開拓村に我が物顔で居座っていたゴブリンたちの制圧。いや――それは制圧という生ぬるいものではなく、「殲滅」、あるいは「蹂躙」と呼ぶに相応しい一方的な大掃除だった。


 お手製の武器を携え、統率された動きを見せる35匹のもふもふ軍団を前に、20匹ほどのゴブリンなど敵であるはずもなかった。コボルトたちはあっという間に作戦目標を達成し、村を綺麗に片付け終えた。


「ガウガウガウ!」(マスター、任務完了だワン!)


 レンたちの元へ、一番に勝利の報告へ駆け戻ってきたのは、ドーベルマン風のドライが率いる第一班だった。副隊長を務めるのは、シルバーグレーの毛並みが美しいワイマラナー風のアハト。


「ガフガフ!」(俺たちの班だけでゴブリンを七匹倒したワン!)

「お、一番乗りはドライのチームかな?」


「ガウガウ!」(そうだワン! 圧倒的だったワン!)

「ほう、ドライが一番か。流石は俺の愛弟子、筋が良いな!」

 自分が目をかけてしごき上げたドライ班が最高戦果を挙げたことで、馬の上のフェルダーは満足げに鼻を高くする。


「ちぃっ……! こんなことなら、移動中にもっと魔法を仕込んでおくか、スクロールを覚えさせれば良かったわ……!」


「ワォン……(うう、ダリアお師匠さま……ごめんなさい。負けちゃったワン……)」


 二番手で戻ってきた第二班のリーダー、フラットコーテッドレトリバー風のフィアが、耳をペタンと寝かせてしょんぼりとダリアの足元に擦り寄る。そんな愛弟子の姿を見たダリアは、悔しさと愛おしさで胸をかきむしられた。


「ごめんねフィア! 私がスクロールをあげるのを躊躇したばっかりに、こんなに悲しい顔をさせて……! ――よし、これでどうよ!!」


「ちょ、ちょっとダリア!? あなた何を――まさか、それを! 魔法のスクロールをコボルトに使うなんて正気!? 魔物がスクロールを使えるなんて歴史上聞いた事ないわよ! 止めなさい、そんな高価なもの勿体無―――」


 横から見ていたヘレナが、ダリアの意図を察して大慌てで止めようと手を伸ばしたが、……時すでに遅し。


 ダリアの手の中で、魔法のスクロールがパァァァッと目も眩むような鮮烈な光を放つ。


 そしてその魔法の光は、吸い込まれるようにしてフィアの小さな身体へと全て吸収されていった。


 眩い光が収まったそこには――なんと全身からパチパチと微小な火花を散らし、賢好な光を瞳に宿した**『コボルトメイジ(火魔法使い)』**へと進化を遂げたフィアが立っていた。


「ヘレナ、良いのよ。この火魔法のスクロールはね、いつか私に子供か本気の弟子ができた時に譲ろうと思って大切に持っていたモノ。今のフィアは、紛れもない私の可愛い弟子だわ! いえ、もう私の子供と言っても過言では無いわ!」


 ダリアはフィアをきつく抱きしめ、誇らしげにヘレナを振り返った。


「元々、魔法使いが接近された時に身を守るための杖術だけでは、前衛としては不十分だと思っていたの。でも、これで私のフィアは名実ともに誰にも負けない最強の魔法戦士よ!」


「あ〜あ、やっちゃった……。普通のコボルトの寿命なんてせいぜい10年よ? あと何年生きるかも分からない魔物にそんな一財産を……。でも、明確に『コボルトメイジ』に進化しちゃったわね。これはとんでもない大発見よ。元々この子に驚異的な魔法の素養があったのかしら……」


 ヘレナは頭を抱え、テイマー(研究者)の血が騒ぐのか、ブツブツとノートに書き留めるように独り言を呟き始めた。


 覚醒したフィアは、今まで自分が使っていたマチェットを、副隊長であるボルゾイ風のノインへと恭しく手渡した。


「ワォン」(ノイン、このマチェットを預けるワン。私が魔法を唱えている間、私の近くに誰も近付かせないように守ってほしいワン)


「ウォン、ウォン!」(任せてワン! お姉様の盾になるワン!)


 極上のモフモフ毛並みを持つ俊敏なノインが、しっかりとマチェットを構えて応える。


 その健気な師弟・姉妹愛のような光景を見ていたダリアの親バカメーターが、ついに限界を突破した。


「フィア……! 流石は私の子ね、素晴らしい判断だわ! そこまで魔法の道に賭けるっていうなら、お母さんがこれもあげちゃうわ!」


 ダリアはマジックバッグから、自分自身の「予備の杖」を取り出してフィアに手渡した。


 それは、先端に真っ赤に煌めく高級な『火竜の魔石』が埋め込まれた、超一級の魔法触媒である『エルダートレント(長寿霊木)』の素材で作られた最高級の杖だった。まさに、魔法を使うためだけに特化した極上品である。


「フィア、これを持っていれば、少ない魔力でも強力な魔法が放てるようになるわ。同じ消費魔力なら、威力は倍以上よ!」


「ワォン♪(お師匠さま、ううん、お母さん! 有難うワン! 大切にするワン!)」


 フィアは新しい高級な杖を両手で大事そうに抱え、嬉しそうに尻尾をパタパタと振った。


 そうこうしているうちに、残りの3つの班、計21匹のコボルトたちも次々と戦場から戻ってきた。ツヴァイ隊はエリーのところへ褒めてもらいに直行し、フンフ隊は無口なゲイルの足元へ嬉しそうに駆け寄っていく。


「ワフワフ……(マスター、ごめんなさい……俺たちの班は、4匹しか倒せなかったワン……)」


 そして最後に、すっかり悄気しょげ返ってトボトボと戻ってきたのは、最古参でありながら最下位の戦果に終わってしまったアインス率いる第五班だった。


「あはは、あまり気にするなよアインス。アインスは戦うだけじゃなくて、アンナさんから教わったみたいに薬草の採取をしたり、傷ついた仲間を治す回復薬ポーションを作ったりする技術があるだろ? みんなそれぞれ役割があるんだから、アインスはそっちのサポート分野の能力をどんどん伸ばしていけば良いんだよ」


 レンが優しくアインスの頭を撫でて慰めていると、アインス班の副隊長であり、全35匹のコボルトの中で最も巨大な体躯を誇るアイリッシュウルフハウンド風のゼクスが、一歩前に出て鼻を鳴らした。


「アフアフ(でもマスター、俺は薬草むしりより、あいつらみたいに前線で武器を持って戦う方が好きだワン……)」


「そっかぁ。まぁ、落ち込むなよゼクス。まだ始まったばかりだし、今回のチーム分けはとりあえずのものだからね。みんなまだお手製の槍や弓を持ったばかりで、本当の得意武器だって決まってないし、色々な戦い方を試してみないと自分が本当に好きなことも分からないだろう?」


 レンは、立ち上がると自分より背の高いゼクスの頭を、腕を伸ばして優しく撫でてやった。


「もし本当に戦うのが好きなら、これからはそういう戦闘意欲が高い子たちを各班から集めてさ、戦闘に特化したアインス直属の『遊撃突撃隊』みたいなものを新しく作っても良いしね」


「アフ!(本当ワン!? 楽しみだワン!)」

 ゼクスが嬉しそうに尻尾を大きく振る。


 頼もしい35匹の家族たちの声を聴きながら、レンはゆっくりと顔を上げ、ゴブリンの血で汚れた、しかし自分たちの新しいスタートラインとなる「廃墟になった辺境の開拓村」を、静かに見回すのだった。

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