024 驚異の35もふもふ軍団結成! お手製武器を手に、開拓村での卒業試験へ
新入りコボルトを5匹仲間に加えたことで、レンたちの旅の進行速度はさらに落ちることとなった。
馬と馬車だけならそれなりの速度が出せるのだが、いくらコボルトたちが人間で言う子供サイズとはいえ、流石に馬車に人間4人、ヘレナ、そしてコボルト9匹が乗るスペースはない。結果、戦闘班のコボルト9匹は馬車と並走して歩くことになったからだ。
だが、このスローペースが良い方向へと作用した。
移動の道すがら、アインスが新入りの5匹に薬草採取のコツをマンツーマンで教え、食料となる魔物を手際よく狩っていく。その姿を見ながら、『朝焼けの光』の面々も新入りのコボルトたちを熱心に鍛え上げることができたのだ。
そんなある日の移動中、レンがふと気になったことを呟いた。
「そう言えば、新入り達にまともな武器がないな。毎回素手で戦わせるわけにもいかないし……」
すると、御者台からエリーが振り返って軽い調子で応えた。
「あ、それなら弓と槍でいいんじゃない?」
「弓と槍?」
「そうそう。一流の狩人たるもの、予備の弓と矢くらい自分で作れないと駄目だからね。実は旅の途中で、ツヴァイに簡単な弓矢の作り方を教えておいたのよ」
「え! ツヴァイって弓と矢を自分で作れるの?」
「もちろん作れるわよ。そしたらそれを見ていたゲイルも、フンフに槍の作り方を教えてたわ。流石に鉄を打って剣を作るのは無理だけど、槍と弓矢なら基本は木製だもの。槍の穂先(刃)は、その辺で狩ったアルミラージの角を使ってもいいし、鋭く尖った石を括り付けるだけでも十分武器になるらしいよ」
「それはすごく良いね!」
(なるほど、地球で言うところの竹槍みたいなものか。払って斬ることはできなくても、急所を狙って突き刺すことなら十分できそうだ)
その日の夜の野営では、さっそく即席の「弓矢・槍作り講習会」が始まった。
初めて刃物を持たされた新入りコボルトたちが作ったものは、最初はひん曲がったりバランスが悪かったりと不格好なモノばかりだったが、「そのうち数をこなせば作るのも上手くなるだろう」とエリーとゲイルは温かい目で見守っていた。
「とりあえず、今使えればそれで良いだろ」
ゲイル先生がボソリと太鼓判を押すので、実戦で使う分には何の問題もないのだろう。
そんなこんなで、紆余曲折を経ながら辺境の村へと向かうレンたちだったが、道中はそれだけで終わらなかった。
その後も、道を進むたびにゴブリンの小規模な群れに襲われている野生のコボルトたちを助けたり、森の奥で飢えてお腹をペコペコに減らしている哀れなコボルトを保護して仲間に加えたりしていった結果――。
気がつけば、コボルトの総数は総勢35匹にまで膨れ上がっていた。
今や全員が、自分たちの手で削り出したお手製の弓矢や槍を誇らしげに携えている。
狩りや戦闘のイロハについても、最初にテイムされたアインス、ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフの5匹が「先輩」として、新入りたちに手際よく指導を行っていた。
『朝焼けの光』の4人は、そんな自分たちの頼もしい弟子たちが立派に新人を指導する姿を、まるで我が子の成長を見るかのように満足そうに眺めており、最近では時折後ろからアドバイスを飛ばすくらいになっていた。
そして旅を始めて数日、いよいよ目的地である辺境の開拓村の残骸が、地平線の遠くに見え始める。
「ワフワフ!」(マスター、前方に嫌な臭いだワン! ゴブリンがいるワン!)
「バウバウ!」(おのれゴブリンめ、俺たちの修行の成果を見せてやるワン!)
「……やっぱり、ゴブリンがいるわね」
ダリアが杖を握り直し、『サーチ』の魔法で周囲を探索しながら呟いた。
「何匹いる?」
フェルダーが馬の上からレンに尋ねる。
「アインス、正確な数は分かる?」
レンが足元のアインスに声をかけると、アインスとドライが鼻をフンスと鳴らして応えた。
「ワフワフ」(大体20匹ぐらいだワン)
「ガウガウガウ」(もう少し近づけば、より正確な配置まで分かるワン!)
「了解。フェルダーさん、20匹くらいだって」
「ほほう、手頃な数だな。多すぎず少なすぎずだ」
「そうね。そのくらいなら、今のツヴァイたちの実力なら平気で蹴散らせるでしょ」
エリーとダリアも余裕の笑みを浮かべる。
フェルダーはニヤリと不敵に笑うと、大剣を掲げてコボルトたちを見下ろした。
「良し! お前たち、これが『朝焼けの光』による卒業試験だ! あのゴブリン共を、一匹残らず殲滅してこい!」
「ワフ!」「ワン!」「ガウ!」「ワォン!」「バウ!」
(((((了解だワン!!!!)))))
フェルダーの鋭い号令に、5匹のリーダー格が力強く吠えて返事をした。
現在の35匹のコボルト軍団は、アインス、ツヴァイ、ドライ、フィア、フンフの5匹がそれぞれ「分隊長」となり、新入りたちを均等に分けた**『1班7匹の合計5個班』**で構成され、統率の取れた班ごとに行動する組織的な軍隊へと変貌を遂げていた。
「さあ、どの班が一番多く敵を倒すか競争だ! ――よ〜い、……………ドン!」
フェルダーの合図が響き渡った瞬間、お手製の武器を構えた35匹のもふもふ軍団が、凄まじい地響きを立てながら一斉に開拓村へ向かって駆け出した!




