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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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146 規格外のコボルト兵站術! 興奮する軍師と、留守一派の鉄壁なる包囲網

「よし、漸くオミラン王国に向けて再出発だ!」


 レンの威勢の良い号令と共に、一行は次なる決戦の地、北オミラン王国を目指して一斉に出発した。


 今回のオミラン攻略に赴くメンバーは、これ以上ない精鋭中の精鋭たちだ。


【本陣】 国王レン、護衛兼側仕えのロジーナ、直属護衛のアハト(ワイマラナー)とドライツェン(ジャーマンシェパードドッグ)。


【軍部中枢】 大将軍ヴァイシュラとフィルツェン(ブラッドハウンド)、軍師サンディとノイン(ボルゾイ)。


【前線将帥】 将軍フェルダーとドライ(ドーベルマン)、弓術騎士団長エリーとツヴァイ(ゴールデンレトリーバー)、魔法師団長ダリアとフィア(フラットコーテッドレトリバー)、槍術騎士団長ゲイルとフンフ(シベリアンハスキー)。


 人間が8人に、コボルトが8匹。


 人間側の8人は全員が俊敏な「騎竜」に跨り、その真横を強靭な身体能力を持つ8匹のナンバーズたちが一糸乱れぬ動きで並走する。これだけの規模でありながら、彼らの移動速度はとにかく凄まじく速かった。


 これから一国を相手に戦争へ赴くとは到底思えない、驚異的な身軽さ。これこそがアレス王国の誇る最大の強みであった。


 通常の軍隊であれば、動員する人数が多ければ多いほど、全体の移動時間は反比例して遅くなる。進軍速度というものは、常に「軍の中で一番遅い人間(通常は行軍練度の低い歩兵や、重い荷物を引く補給部隊など)」に合わせる必要があるからだ。


「よし、このあたりで一度休憩にするぞ!」

 レンが手頃な開けた平原を見つけて声をかけると、野営の準備のために全員がそれぞれ手際よく動き始めた。


 レンが愛用のマジックバッグから慣れた手付きで折りたたみ式のディレクターズチェアを取り出して腰掛けると、ロジーナがすかさず完璧なタイミングで淹れたての香ばしいコーヒーを運んできた。


「はい、レン様どうぞー」

「おお、いつも有難う」


 温かいマグカップを受け取り、レンがホッと一息ついたその時、すぐ目の前に軍師サンディが凄まじい勢いでやってきた。


「――レン様! これは、歴史を覆すほど本当に画期的な事ですよ!」


 サンディは興奮のあまり、その知的な瞳をらんらんと輝かせてレンにぐいぐいと詰め寄る。


「な、なにいきなり。一体何がそんなに画期的なんだい?」


「『兵站へいたん』に決まっているでしょう! 戦争という営みにおいて、最も重要であり、かつ最も困難を極めるのはいつだって兵站なのです!」


「あ、ああ。まあ、僕のマジックバッグやテイマースキルのおかげで、大量の食糧をごてごてと馬車で運ばなくても良いしね」


「はぁ……! レン様、貴方はこれほどの奇跡を成し遂げておきながら、やっぱり何にも分かっていません!」

 サンディはもどかしそうに盛大にため息をついた。


「良いですか? 古くから『戦争のプロは兵站を語り、素人は戦略を語る』という有名な格言があります」


「ほう、そうなのか。確かに言い得て妙だね」


「そうなのです! 単に食糧を運ぶ運ばないという次元の話ではありません。武器防具をはじめとするあらゆる戦略物資の準備、維持、そして輸送。必要なモノを、必要な時に、必要な量だけ、正確に必要な場所へ補給するために、古今のあらゆる名将たちが血の涙を流して頭を悩ませてきたのです。どれほど兵が強くとも、モノがなければ戦えません。通常、この膨大な軍需物資の輸送には、運ぶ実動部隊だけでなく、後方を警備する防衛兵、在庫を管理する優秀な文官、それらを統制する高度な指揮官が必要であり、だからこそ兵站専門の部隊や、それを預かる極めて希少で優秀な人財を国家規模で育てる必要があるのです!」


「そうだね。ロバート将軍の本隊にも、かなり大規模な兵站専門部隊がいるって聞いたよ」


「そう、そこなのです! ところが、このフェルダー将軍たちが率いる我がアレスの最前線部隊には、それに相当する後方補給部隊が『一切存在しない』。それなのに、作戦行動において何一つ問題が発生していないのです! まるで貴族がちょっとそこらの山へ旅行かピクニックにでも行くような軽装のまま、他国が驚愕する最速のスピードで国境を侵入し、そのくせ、いざ戦場になれば万を超える強固なコボルト兵の軍勢を展開して戦える……。これがどれほど異常で、どれほど恐ろしいことか!」


「はは、そうだね。それが僕たちの最大の強みだと思っているよ。正直なところ、隠密性を高めるためなら、連れてくるコボルトも直属護衛のアハトとドライツェンの2匹だけでも充分なくらいなんだけどね」


 レンが何気なくそう口にした瞬間――


「ワンワン!」(マスター! 聞き捨てならないワン!)


「ワォンワォン!」(それは絶対に無いに決まってるワン!)


「ガウガウ!」(俺たちも命懸けで同行するワン!)


「バウバウ!」(置いて行かないでワン! 寂しいワン!)


 並走してきたツヴァイ、フィア、ドライ、フンフの4匹が一斉に耳をピンと立て、レンの言葉に激しく反応してワンワンと抗議の声を上げた。


(あ、しまった……コイツらめちゃくちゃ耳が良いんだった。完全に聞かれてたかぁ)


「ごめんごめん、ちょっとした例え話だよ」

 レンは慌ててツヴァイたちに両手をあげて平謝りし、苦笑しながらサンディに向き直った。


「でも、僕がここで身軽に動けているのも、後方の辺境村でパグが完璧に食糧や物資の準備をしてくれているからだし、アレス王国の王都ではゼクスやズィベンがいつでも工兵部隊を出陣させる準備をしているはずだし、アインスだって負傷兵をいつでも受け入れられるように待機してくれているからね」


「まさにそこなのです! モノや兵をダラダラと物理的に輸送するのではなく、必要なコボルト兵そのものをレン様がその場で瞬時に『召喚・送還』できる。これによって輸送の手間やリスクを完全にゼロにし、すべてのロジスティクスを安全な後方だけで完結できていること自体が、他国の常識からすれば信じられない奇跡なのですよ!」


「そ、そうだね(熱量がすごいな……)」


「通常、他国の遠征軍は現地調達……つまり敵国からの過酷な略奪を行うことも前提に兵站計画を立てることが殆どですが、我が国のコボルト兵は略奪など一切行わず、純粋に敵対する武力勢力のみを迅速に打倒して戦うことができる。一般の領民からすれば、自分たちが平和に暮らせるなら、ぶっちゃけ誰が国王になろうが不平不満は出ないのです。つまりアレス王国は一切の怨嗟を生まない! レン様、貴方の持つ『コボルトテイマー』のスキルは、やはり世界最強にして最高の本質的なチートですよ!」


 興奮のあまり、顔をこれでもかと近づけて熱弁を振るうサンディ。


「あ、有難う……サンディの熱意はよく伝わったよ」


 レンがその勢いに若干圧倒されて後ろにのけぞる。すると、横から冷たい紅茶を片手に持ったロジーナが、すっと二人の間に割って入った。


「はーい、サンディさん。お仕事の熱弁はそれくらいにしておきなさーい」


「え? ロジーナ、何を――」


「留守を預かるヘレナ様とリリス様からね、『戦争のドサクサに紛れて、絶対にレンに浮気させたり変な虫を近づけたりしないように!』って、特命の監視任務を直々に言い渡されているの。だから、それ以上レン様に抱きつきそうな距離まで近づくのはめっ! ですよー」


ロジーナがジト目でサンディを制する。


「そ、そ、そんな不純なつもりは、な、ないですっ……! 私は純粋に、軍事的な評価を……っ!」

指摘されたサンディは、一瞬にして耳まで真っ赤に染め上げ、慌てて数歩下がっておろおろと顔を伏せた。


「ええっ!?」

(ロジーナって、戦場では僕の護衛兼側仕えじゃなくて、そっちの『貞操の護衛』的な役割も兼ねてたの!?)


遠く離れた王都に残してきた二人の愛妻による、あまりにも完璧で恐ろしい先手を打った包囲網を知り、レンはコーヒーを吹き出しそうになりながら、戦慄混じりの驚きを隠せないのだった。

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