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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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144 軍神の黒刃に刻まれし涙! 九頭竜が宿す九つの属性と、一挙大増産の特注兵装

「あ、アレス王国国王レンだと……!? むむ、ということは、もしやその後ろにいらっしゃるお方は……かの高名な軍神ヴァイシュラ様ではないのか!?」

 キンジューはリザードマンの大きな目を更に見開いた。


(おいおい、俺のことは国王って分かっても呼び捨てなのに、ヴァイシュラには『様』付けかよ……)


 レンは心の中で苦笑いしたが、特に気にする風でもなく、振り返って彼女を促した。


「はい。私がヴァイシュラです」


「おお……! 拝顔の栄誉に浴します。では、その御腰に、御腰に差していらっしゃるのは、師匠セイシューが晩年に遺した伝説の『流星刀』で相違ないか!?」


「ええ、流星刀です」


「是非……! 是非とも、一目だけでも拝ませてはくれんかの!? もし見せていただけるのなら、そのコボルトたちの小刀マチェット、10本と言わず20本、すべて最高峰の出来で無料で作ってみせます故!」


「ふふ、構いませんよ。どうぞ」

 ヴァイシュラは気さくに微笑むと、腰から流星刀を抜き放ち、その美しい黒刀をキンジューへと手渡した。


「おお……! おお、おおおおお……!! これよ、これじゃよ! 儂がまだ駆け出しの弟子だった頃、師匠が文字通り命を削って打っておられた『流星刀』に間違いない。まさか、このような異郷の地で再び相見えることができるとは……。むむ、むむむ……なるほど、ここの焼き入れは、こうして……」


 それからしばらくの間、キンジューは完全に無言になった。大粒の涙をその緋色の鱗に這わせながら、じっくりと、愛おしそうに流星刀の刃紋を見詰めていた。師の魂が宿る至高の技術を、その目に焼き付けるかのように。


「――よし! 作刀の件、確かに承知した。師匠の至高の技を久しぶりに肌で感じ、職人としての滾るような意欲が身体中に漲って来たわい!」


 キンジューは流星刀をヴァイシュラへと丁寧に返却すると、表情を一変させ、プロの鍛冶師の顔でレンとマチェットの仕様を詰め始めた。


「キンジューさん、先程『良い属性武器が作れそう』と仰っていましたが、九頭竜の素材を使うと、具体的にどういった耐性や属性が付加されるのですか?」


「……お主、それほどの素材を仕留めておきながら、魔物の特性を何も知らぬのじゃな?」


「わんわん!」(おい! マスターに対して随分と失礼な物言いだワン!)


「ガフガフ」(じいさん、少し口が過ぎるワン。やるか?)


 レンの素朴な質問に対するキンジューのぶっきらぼうな物言いに、直属護衛のアハトとドライツェンをはじめとするコボルトたちが、一斉に鋭い牙を剥いてキンジューを睨みつけた。その圧倒的な獣の威圧感に、キンジューは慌てて手を振った。


「い、いや! 悪気はないんじゃ! 儂はしがない職人ゆえ、これ以上の敬語は使えんぞ!?」


「ハハ、みんな睨むのは止めな。僕は別に敬語じゃなくても全く気にしないからさ」


 レンが苦笑しながら宥めると、コボルトたちは「マスターがそう言うなら……」と素直に怒りの矛を収めた。


「ふぅ……。いいか若造、九頭竜ヒュドラというのはな、9つの首それぞれが異なる属性のブレスを吐き出す、歩く天災のような魔物なんじゃよ」


「え? 属性ブレス? ……そういえば、あの白い首が何か光るものを吐き出そうとしていたのは見たけど、他の首はブレスなんて吐こうとしていたかい?」

 レンは後ろのフェルダーたちを振り返って尋ねた。


「ああ、レン様。九頭竜がブレスを吐く前には、特有の強力な魔力チャージ――いわゆる『溜め』の時間があるんだよ。その溜めている最中に集中攻撃を叩き込めば、ブレスは不発に終わってキャンセルされるのさ」


「そうそう! 奴らが魔力を溜めている間は、ブレス以外の攻撃が出来なくなって完全な無防備になるからね。私たち前衛にとっては絶好のチャンスなのよ」


「アレス王国の第一騎士団と魔法師団が、そんな美味いチャンスをみすみす逃す訳ないでしょ?」


 フェルダー、ダリア、エリーが、それぞれ得意気に胸を張って答える。


「なるほど〜。その割には、最後の最後で白い首にブレスを吐かれそうになって大ピンチだった気がするけどな?」

 レンがジト目で指摘する。


「うぐっ……それは、本当に悪かったわよ。あのとき、白首はもう他の攻撃で倒れたものだと完全に思い込んでいて、一瞬見逃しちゃったのよ……」


 エリーがバツが悪そうに顔を赤くして視線を逸らした。


「まあ、間一髪のところでヴァイシュラに助けて貰ったから良かったものの、ね」


「そうそう! レン様、その話はもうそのくらいにしませんか!? 終わったことですわ!」


 当時の見落としに責任を感じる軍師サンディが、慌てて話を切り替えるべく割り込んできた。


「ははは、そうだね。終わった事を今更責めてもしょうがない。フィルツェンも無事だったし、その話は終わりにしよう。ところで、その九頭竜の首にはどんな属性があったんだ?」


「俺が見た限り、白首は『光』のブレス、赤首は『炎』のブレスだったな」

 フェルダーがそう言って、エリーに視線でバトンを渡す。


「橙色の首は『土』だったかしら。で、黄色の首は激しい『雷』よ」

 エリーが滑らかに続け、今度はダリアを見る。


「緑の首は『風』、青の首は『水』、そして藍色の首は『氷』を司っていたわ」

 ダリアが指を折りながら答える。


「そして最後の紫首は恐るべき『毒』、中央の黒首は万物を呑み込む『闇』ですね」

 最後にサンディがすべての属性を厳かに告げた。


「光、炎、土、雷、風、水、氷、毒、闇……。なるほど、それじゃあ、最大で九種類もの異なる属性のマチェットが作れるというわけか」

 レンが感心して顎に手を当てる。


「レン様、それならコボルトたちのマチェットだけでなく、俺たちの『槍』もいくつか作ってはもらえないだろうか?」


これまで静かに控えていた槍術士騎士団長のゲイルが、一歩前に出て願い出た。


「ああ、そうか。フンフたちナンバーズの槍部隊にも、九頭竜の素材を使った強力な槍が必要不可欠だな。よし、良いだろう。キンジューさん、槍も追加でお願いします」


「だったら、その属性を放つ矢に付与できるような、特別な『弓』も欲しいわ! レン、良いでしょ?」

エリーもここぞとばかりに目を輝かせてレンにお願いする。


「え、弓にそんな高度な属性付与なんて出来るの?」

 レンが確認のためにキンジューを見る。


「ん〜……九頭竜のしなやかな腱と、牙の加工を組み合わせれば、多分大丈夫じゃ。素晴らしい弓ができるぞい」


「ついでにレン様。九頭竜の頑強な革と鱗が余っているのでしたら、それらを使ってコボルトたちの籠手や肘当て、膝当て、肩当てなどの『防具』も一式作って貰うと良いですよ。前衛での負傷が劇的に少なくなるでしょう」


 ヴァイシュラが的確な大将軍としての助言を付け加えた。


「素晴らしい提案だ。よし、キンジューさん、今挙がった武器も防具も、作れるだけ全部作ってくれ! 金はいくらでも払う!」


「おおー! レン様、相変わらず太っ腹!」

「流石は我がアレス王国の王!」

「やった〜! 最高の装備が手に入るぞ!」


 フェルダー、ダリア、エリーが子供のように大喜びで拍手喝采を送る。


「いや、うちの軍の決定的な戦力増強だからね。ここを出し惜しみして、みんなやコボルトたちに怪我をさせる訳にはいかないだろう?」


 レンのどこまでも仲間想いな言葉に、コボルトたちも嬉しそうに大きく尻尾を振るのだった。

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