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【完結版】史上最弱のコボルトテイマーが異世界を征服するらしいっす〜最弱スキルの犬たちは、最強の軍勢になりました〜  作者: ボルトコボルト


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138 莫大なる「犬件費」のカラクリと、王城に集いしモフモフ乙女の官僚団

 アレス王国の財政は、他国から見ればまさに「異常」の一言に尽きた。


 この国には、コボルトたちが熱心に働くことで生み出される莫大な歳入がある。いや、厳密に言えば、コボルトたちが稼いだ資金は一度すべて「レン個人の収入」となっている。


 まあ、レンはその天文学的な私財をそっくりそのまま国家の予算として惜しみなく投入しているので、彼にとっては自分の財布だろうが国庫だろうが、どちらでも良いらしい。


 コボルトという種族は、基本的に働き者で従順、かつ真面目。レンから言われた任務には文字通り一所懸命に励むため、国にもたらされる増収は天井知らずだった。


 何故そこまで資金が残るのかといえば、理由は単純。彼らコボルトは「お金」という概念を欲しないからだ。


 食事や生活必需品も自分たちで狩りや調達をして賄ってしまう。つまり、コボルトが働いた分の賃金相当額は、人件費として消えることなく、すべてがそのままレンの収入となるのであった。


 通常の人間を雇うよりも遥かに安く抑えられた、驚異の「犬件費」。


 この圧倒的な低コスト化の恩恵により、国内の物価は信じられないほど低く抑えられ、アレス王国の国民はごく普通の暮らしをしていても、経済的にかなり余裕のある豊かな生活を享受できていた。


 かと言って、これがコボルトたちにとって過酷な「ブラック職場」なのかと言えば、断じてそんなことはない。


 元々コボルトたちは真面目に働く気質だが、同時に昼寝も大好きだし、仲間と遊ぶことも死ぬほど大好きだ。


 アレス王国にはすでに膨大な数のコボルトが暮らしているため、一匹あたりの労働時間は一日のうち「半日程度」に設定されている。あとは交代勤務のローテーションを組めば、無理なく効率的に現場は回り、全く問題は生じない。


 こうして、アレス王国はコボルトたちがもたらす膨大な資金力を背景に、国内の隅々までが潤い、他国が羨むほどの充実した国家基盤を確立しているのだった。


  ◇◇


 ところ変わって、アレス王国王城の国王執務室。


 今日も今日とて、国王レンと王妃ヘレナが机を並べて熱心に執務を行っていた。


 そしてレンの両脇には、ワイマラナーのアハトと、

ボルゾイのノインに代わって新たな直属護衛となった、ジャーマンシェパードドッグのドライツェンの姿があった。


「ガフガフ……あ〜あ、しっかり動いたら腹が減ったなぁ、ワン」

 アハトは床に寝そべり、早くも休憩モードでだらけきっている。


「わんわん!(お前は主の御前だぞ、だらけ過ぎだワン! 護衛なら私のように警戒を怠るなワン!)」


 隣で微動だにせず、軍用犬の鑑のような見事な直属不動の姿勢を保つドライツェンが、鋭い声でお説教を垂れていた。


「ふふふ、見て頂戴レン。今月も我が国の財政は大幅な黒字よ」

 ヘレナが嬉しそうにニコニコと微笑みながら、集計された報告書をレンの机の上に置いた。


「おお、いつもありがとう、ヘレナ。……それで、次なる地『ミノス』には、最終的に誰が一緒に行くことになったんだ?」


「そうねぇ。主要メンバーとしては、私とロジーナ、フェルダー、エリー、ダリア、ゲイル、サンディ、そして大将軍になったヴァイシュラかしらね」


 レンの問いかけに、ヘレナが手帳を確認しながら答える。


「あれ? ジュリアさんやアンナさん、それにバークさん夫婦は今回は来ないのか?」


「ええ、今回はパスだそうよ。王都の暮らしにもすっかり馴染んで気に入ったらしくてね、『引っ越すのが億劫だし、どうせ陛下のことだから、また1年も経たないうちに次の場所へ国ごと引っ越すんでしょ?』って笑ってたわ」


「あはは……確かに否定はできないな。まあ、本人がここを気に入ってくれているなら良いか。プリシラとオリビアは王都に残るのか?」


「うん、そう。ポメ(ポメラニアン)とトイ(トイプードル)も一緒に王都の居残り組ね」


「ふ〜ん、なるほど。ロバートさんたち騎士団の本隊もアレスの防衛のために残すし……こうして見ると、一緒に行く初期メンバーは割と少なくなったな」


「そうねぇ。私の祖父も、このまま王都に残って余生をのんびり過ごすって言っていたわ」


「そっかぁ……。ところで、ヘレナ。君が僕と一緒にミノスに行っちゃうとなると、アレスの国内統治や内政の管理は大丈夫なのか? ヘレナの代わりをキッチリ務められる人はいるの? うちの重臣たちは戦いや軍事に向いてる脳筋……いや、前衛の人が多くて、政治や官僚仕事はダメそうだからな。かなりの人材不足なんじゃないか?」


 レンの率直な懸念に対し、ヘレナは不敵な笑みを浮かべた。


「ところが、全くそんな心配は要らないのよ」


「おお! それは頼もしいね。どうしてだい?」


「私の代わりとして、内政を完璧に回せる優秀な女性たちを、事前にアンナさんから何人も紹介してもらっているの。前から少しずつ実務の引き継ぎも進めているから、私がいなくなっても業務は滞りなく回るわ。……ふふ、気付いた? 『女性』よ」


「うん? 女性?」

 レンが首を傾げる。


「そう。思い返してみて。ヒダ王国もエマの地も、古い大国では女性が政治の表舞台に関わること自体が、まるでタブーのようになっていたじゃない?」


「ああ、確かにそうかもな。法律で禁止されているわけじゃなくても、暗黙の了解というか、悪しき慣習というか、そんな空気があった気がする」


「そうでしょう? そもそも女性が出世できる職業なんて、あっちでは片手で数えるほど限られていたわ。だけど、このアレス王国はどうかしら? 私は結婚前から事実上の宰相として国政を執り行っているし、ダリアは魔法師団長、エリーは第一騎士団長。さらにジュリアさんとアンナさんが、最高相談役として重臣のポジションに就いている訳でしょう?」


「まあ、言われてみればそうだな。僕の周りで、内政面で本当に信頼できる政治のプロは、何故か女性が多いな」


「それに加えて、今回サンディが国を背負う軍師として招聘されて、ヴァイシュラ様が大将軍に就任したでしょう? その上、ジュニア(コボルト)たちが可愛く事務仕事をお手伝いしている姿が他国にも伝わって、今やこのアレス王城は、一部の人間から『モフモフの聖地』みたいな扱いをされているのよ。おかげで、王城で官僚や文官として働くことを希望する女性志願者が殺到して、後を絶たない状態なの」


「なるほど、実力派のモフモフ信者かぁ……。でも、能力的な面は大丈夫なのかい?」


「そこは厳格な筆記試験と面談、それに過去の素行調査も徹底的に行っているから、全く問題ないわ。むしろ、他国なら歴史に名を残したであろう超実力者たちが勢揃いよ。今まで『女性である』という不条理な理由だけで、いくら実績を出しても役職が上がらなかった不遇な天才官僚たちが、こぞってアレス王国に亡命同然で就職してきているんだもの」


「ほほう、それは素晴らしいな! それなら、今後どれだけ領地が増えてアレス王国が巨大化していっても、各地を治める為政者や文官の確保には困らないな」


「ええ、全く困らないわよ。有能な乙女たちが、このアレスの地で虎視眈々とさらに実力を磨きながら、いつでも次の領地へ赴任できるようスタンバイしているわ」


 ヘレナが誇らしげに胸を張るのを見ながら、レンは「我が国の文官組織は、世界で一番強固で華やかなモフモフ天国になるかもしれないな」と、未来の巨大帝国の姿を思い描いて愉快そうに笑うのだった。

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