120 辺境のブサカワ新町長誕生! 炸裂するメタ発言と、留守を預かる鉄壁の義足
今回のお話は、「作戦会議」という名を借りたキャラクター紹介回となります!
ありがたいことに最近登場人物(と可愛い毛玉たち)がかなり増えてまいりましたので、ここで一度スッキリと整理させていただきました。
少々説明が長くなっておりますが、次なる西征への布陣として、どうぞ温かい目でご容赦いただけますと幸いです!
「え〜、続きまして。次はアレス王国の防衛と内政の統治分担についてだな。大きく分けて元ヒダ領、元エマ領、そして僕たちの出発点である辺境地域の3つになる訳だけど───」
「ちょっとレン、辺境ってば元ヒダや元エマに比べたら、規模がとっても小さいじゃん」
レンの言葉に、隣のヘレナがさっそく鋭いツッコミを入れる。
「だけどさ、あそこはコボルトの数がめちゃくちゃ多いだろ? いつまでもヘレナが直轄で見続ける訳にはいかないよなぁと思ってさ」
「それはそうなんだけど……。でも、コボルトちゃんたちってば、ご飯さえあれば基本的に人件費(賃金)が要らないから、あそこの農場と牧場からの収益って、実は今もの凄いのよねぇ……ふふふ」
「ヘレナ、お前もすっかり悪徳領主みたいな顔をするようになったなぁ」
「へへ、まぁね〜!」
「「あははははは!」」
夫婦揃ってのブラックな冗談に、居並ぶ元冒険者や騎士団長たちはシラ〜っとした視線を送っているが、リリスだけは「まぁ、微笑ましい格差ですわ」と大変温かい目で見守っていた。
「冗談はさておき、辺境の村も街も、その近隣一帯も含めて、そろそろ誰か信頼できる人間に統治を任せた方が良いだろう」
「そうねぇ。辺境の街と近隣の村は誰かに任せても良いけど……問題は、私たちが最初にいた『辺境の村』よね。あそこは住民がほぼコボルトしかいない特殊な環境だから、普通の人間を領主代行に置くのは難しいんじゃない? 大体、既にコボルトが増えすぎて、村の規模じゃない大都市になりつつあるんだけどね」
「ん〜。じゃあ村のことは後回しにして、まずは『辺境の街(大都市)』の方だけど、あそこはネイサンに任せよう。いいかい、ネイサン」
「はい! 陛下、このネイサン、誠心誠意務めさせていただきます!」
力強く頭を下げたネイサンは、元ヒダ王国の大都市で衛兵隊隊長を務めていた男だ。生真面目で治安維持のノウハウもあり、新体制への忠誠心も高い。
「よし、頼んだ。……それで問題の『辺境の村』なんだが。いっその事、かつて大都市の暫定措置でやったみたいに、優秀なコボルトにそのまま村長を任せるのも手だな」
レンがそう呟くと、ヘレナが悪い顔をして手を擦り合わせた。
「へへへ、シャチョーサン、ちょうどソコに、イイコイルヨー」
「ヘレナ、さっきからキャラのブレが酷いなぁ。で、どんな奴なんだ?」
「ちっちゃくて、こう……クシャッとした、ブサ可愛いモフモフなんだけどね。今、私が不在の辺境村のコボルトたちを、実質トップとして完璧に仕切ってくれてる子がいるのよ」
「へえ、それは興味深いな。ちょっとここに召喚してみよう。――『召喚』!」
レンがスキルを発動すると、魔法陣からポンッと一匹の小さなコボルトが現れた。
それは、地球の知識で言うところの「パグ」の姿をしたコボルトだった。
毛色は上品なフォーン(薄茶色)。短毛のダブルコート。クシャッと潰れたような顔に垂れ耳、くるんと巻いた尻尾。短鼻で鼻をフゴフゴと鳴らす、文句なしにブサ可愛い小型のコボルトである。
「わん?」(ふごっ? ここはどこだワン?)
「おお、お前は……最初にテイムした35匹の中の一匹じゃないか! 戦闘向きの形態(犬種)じゃなかったから前線には呼ばなかったけど、元気にしてたかい?」
「わんわん♪」(マスター♪ 会いたかったワン!)
パグコボルトは短い足をパタパタさせてレンの足元に駆け寄り、嬉しそうに激しく尻尾を振った。
「よしよし。今日からお前の愛称は『パグ』に決定だ! パグ、お前にその高い統率力を買って、辺境の村の『村長』を任せる」
「わん! わんわんわんわん!」(パグ! 素敵な名付けに感謝しますワン! 辺境村の運営なら、このパグに丸ごと任せてワン!)
「頼もしいね。辺境村は今の素晴らしい方向性のまま、農場と牧場をさらに広げて発展させてくれ。それから、今後のコボルト軍勢の育成の場として、若い実力あるコボルトをどんどん育てて、前線に送り出してほしい」
「わんわん!」(任された! 最高のモフモフたちを育成して、頑張るワン!)
「頼んだぞ。――それからイアン。あの村には、お前の商会の子たちが何人か常駐して残っているんだろ? その子たちに、パグの外部折衝のフォローをお願いするよ。それから、さっき話題に出たジュニアたちに、読み書きを教える先生(教育者)も何人か現地へ派遣してくれ」
レンが指名したイアンは、レンが初めて辺境の村に向かった乗り合い馬車で、偶然一緒だった商人だ。その時からの長い付き合いであり、現在ではアレス王国の商売を一手に任されている。その結果、彼の商会はいまや国内で誰もが知る大商会へと急成長を遂げていた。
「はい、陛下。あのコボルト村は我が商会の者たちの間でも『癒やしの聖地』として大人気ですので、常駐の希望者はいくらでもおります。教育者に関しても、可愛いジュニアたちに勉強を教えられるならと、行きたがる人間が列を作っておりますよ。どうぞお任せください」
「それは良かった。……さて、あとは元ヒダ領と元エマ領の統治かぁ」
レンは、やれやれと頭を抱えながら、円卓の端に座るランドルフへとチラッと視線を向けた。だが――。
「ああ、駄目駄目です。お断りしますよ。私ももう良い歳ですからね。大局的な相談には乗りますが、これからは大好きな魔物研究だけをやらせてください」
手を振って即座に拒絶したランドルフは、ヘレナの祖父であり、元Aランク冒険者。さらにはテイマーズギルドの元ギルドマスターだった偉大な人物だ。
かつてレッサーワイバーンをテイムした圧倒的な功績でヒダ王国の伯爵位を叙爵されていたのだが、本人は魔物研究が好きすぎて、孫のヘレナを置いてフィールドワークに出歩き三昧だったという過去を持つ。
冒険者たちからは「プロフェッサー(教授)」の愛称で深く慕われている。
「まったく、Aランク冒険者ってのはどいつもこいつも我儘だなぁ……」
苦笑いしながら、レンは次に、その隣に座る老婆ジュリアへと視線を移した。
「ふふふ、私も駄目よぉ、レンちゃん。私はもう歳で現役を引退したんだからぁ。相談には乗ってあげるけど、これからは可愛い子たちに囲まれて、余生をゆっくり過ごさせてよねぇ。ねぇ、ツェンジュニアちゃんたち?」
「バフバフ!」(そうだワン!)
「バフバフ!」(ばあちゃん、お腹空いたワン!)
クンクン、クンクン、クンクン……。
ジュリアの足元では、チベタンマスティフ風コボルト・ツェンの子供たちが、5匹も群がって彼女の服の匂いを嗅ぎながらウロウロと甘えていた。
ジュリアは辺境街の元錬金術ギルドのギルドマスターであり、アンナの親友。そして、現在はアレス王国の最高火力を誇るツェンの「錬金術の師匠」でもある。
「ん〜、しょうがないな。元ヒダ領に関しては取り敢えず、国王の業務と兼務という形でヘレナに総括を任せるよ。誰か実務をこなせる適当な人間を、ヘレナの『領主代理』として実戦配備しても良いからさ」
「はぁ……結局そうなっちゃったかぁ。分かったわ、私の手足として動かせる優秀な官僚を誰かそこに据えておくわ」
「助かる。それから、元エマ領の方だけど……ロジーナ、あそこは今、実際どうなってるんだっけ?」
「ああ、あそこなら例の『モフモフ守り人部隊』の娘っ子の父親である侯爵が、なかなかに有能で話の分かる良い感じのオジ様だったから、今は暫定的に領地経営を任せてるよ」
「じゃあ、エマはその侯爵をそのまま正式な領主代行にして継続でいいや」
「分かった、そう伝えておくよ。そのうち正式な臣従の挨拶に、王都まで来ると思うよ」
「そうだな。一度くらいは顔を合わせておくか」
「……一度じゃ済まないでしょうね、国王陛下?」
ヘレナがジト目でレンを睨む。
「え〜……そういう面倒な貴族対応は、ヘレナに任せるよ」
「ええええええっ!? それも私なのぉ!?」
「じゃあ、リリス。頼んだ」
「ふふふ、仕方のない旦那様ですねぇ。よろしいわ、レン様のためですもの。他国や国内の面倒な貴族関係の綱引きは、この私が裏で完璧に抑え込んでおきますわ」
頼もしすぎる婚約者の言葉に、レンはホッと胸を撫で下ろした。
「よし! これで全ての配置は決まった。――それで、最後に。僕たちが西のオミラン王国へ遠征している間、このアレス王国王都の『留守預かり(最高防衛責任者)』は、ロバートとっつぁんに一任する!」
話を振られたロバートは、太い腕を組んで義足をトントンと鳴らした。
「おいおい、俺かい? だがレン、他の重臣から反論が出るんじゃねえか?」
「いや! もうこの『第119話』の文字数も残り少ないから、これ以上の反論も引き延ばしも一切許さない!」
「がはははは! よく分からんが『第119話』の制限とやらがあるなら仕方ねえな! 良いぞ、留守は任せろ。お前たちは心配せずに、西の国で存分に暴れてこい!」
義足の古強者の豪快な笑い声がホールに響き渡り、アレス王国の防衛布陣は完璧に定まった。こうして、全一話にわたる怒涛の「会議という名の人物紹介」は、迫り来るオミラン王国西征への期待を孕みながら、大団円で幕を閉じるのだった。




