なななななんなのコイツ! パッキン悪魔、シャー! ギロロン
★前回のお話★
健太と友達になったらんは、健太に案内されながら、知らない景色に大興奮する。
そんな折り、目にした本屋で欲しい新刊を手に大はしゃぎするものの、買えずに断念。
そんならんを気遣う健太の優しさに触れ、二人は翌日も一緒に来る約束をする。
その直後、嬉しさのあまり、“へん語”を口にしたらんに、健太は「羨ましい」と落ち込む。
過去にシナリオを読んでもらった際、「単調でつまらない」「才能がない」と酷評された経験を打ち明け
る健太。
らんはその傷に寄り添い、「力になる」と伝え、健太の笑顔を取り戻す。
オロオロしょぼぼな二人に、更なるはわわ展開が……
後編、始まりまぁぁす!
挿絵つき★
「あ、そろそろ見えてきたよ」
(おっ!)
矢沢くんの指先、つつつーっ。
「わああああっ! かわいぃぃぃぃ!」
トテテテテ、ぴたっ。
夢の中に迷いこんだみたいな、メルヘンカフェだよぉ。
ピンクの屋根、とろぉんって光ってるぅ。
ドアのうさぎさんが「おいで」って手まねきしてるみたい。
まど、にんじん!
(あ、ハートにも見える……!)
センスのカタマリだよぉ。
花壇のお花、もこもこ。
ピンクとシロ、すーはーすーはー。
あまぁい……くんくん。
(はわ?)
くんくんくんっ……
ケーキのにおい来たぁ。
おいしそぉ……ぐるるるる。
おなか、大アピール。
「矢沢くん! こんなかわいいお店教えてくれて、ありがとー」
目、きららららん。
「外観もだけど、中も……藤井さん、絶対好きだと思う」
(きゃはぁぁ)
そのセリフだけでセンスひゃくパーなのわかるよぉ。
すぐ入りたいぃぃ!
でも……
お客さん、大名行列ずららららららっ。
三十……いや四、五十人はならんでるかも……
「一応、名前は書いたけど……結構待ちそうだね」
えっ、名前もう!
仕事はやぁい。
「お腹、もつ?」
「が、がんばるっ……!」
だって、入りたいもん。
待ってる間、もっかいお店チェックぅ。テッテッテ。
(はふぅぅ)
なん回みても、夢カワバクハツだよぅ。
シロいくるくる、きらぁ。
うさぎさんのかんばん、ゆららぁ。
『おしゃべりうさぎ』って名前、天才すぎ。
あー、はやく中見たいぃ。
写真パシャりたいぃ。
でも、スマホ……ない……矢沢くん、持ってるかな。
もし持ってたら……お願い、してみよ。
列、ちら。
(はぁ……)
こんなにならぶって、きっと……おいしいにちがいない。
どんだけおいしいんだろぉ……じゅるん。
よだれ、つー……
(っとと)
ハンカチ、ふきふき。
っていうか……女性客だらけ。
井上直のうちわ、ちらほら。
イベント帰り?
トコトコ、ユーターン。
「あ、おかえり」
矢沢くん、にこ。
(わふん……)
ひとり暮らしのココロ、『おかえり』がしみるぅ。
「ただいまぁ」
えへへ。
しあわせ、ぽよぉん。
「ねえ、近くにイベント会場あるの?」
「隣町にあるよ。どうして?」
「あれ……ちょっと気になって」
ちいさく指、ちょん。
「あー……井上くんか……」
まゆ、きゅる。
(ありゃ?)
風、ぴゅーん。
しゃぼんの香り、急にひやん。
下向いちゃった。
「もしかして井上直、だめだった?」
私、ぽつ。
矢沢くん、しょぼぼ。
(はうぅ)
これ……聞いちゃダメだったやつ……だったかな。
「あの……ごめん、ね?」
ツインテ、しゅるん。
「え! いや、あの。そ、そうじゃなくて――」
(え? なに?)
「ど――」
キャーーーーーーーーー!
キイロ声、どわぁぁっ。
キャーキャー、バキューン。
矢沢くんの話、ぷつーん。
(な、なんなのぉ?)
「ちょっと見てくる!」
「あ、藤井さん……!」
タタタタタ――キッ。
(……うそ)
ちょろハネ髪。
バターな髪色、キラン。
色気だだもれ、あんにゅいフェイス。
(あああああ)
い、い、い……
「次、中入れ」
井上直ぉぉぉぉ!
制服みたいなの着てる……
いや、制服か?
メルヘンカフェに似合わなすぎ問題。
さつえー?
きょろきょろ。
カメラない。
どゆこと?
「おい、てめぇ!」
びくぅぅっ!
わ、私?
わたわた。
「撮んなっ」
あ、ちがう人だった……
心臓もげるかと思った。
にしても……
口わるっ。
キャラならいいけど、素だったらちょっと……
テレビでもやる気ゼロだし……
イメージどぉりすぎて逆にヤだぁ。
矢沢くんで、気持ちリセットしよ。
トココココ。
「ただいまぁ」
「おかえり……いた?」
「うん、いたぁ……」
(……ん?)
え?
な……!
「井上直が店にいるって、知ってたの?」
ツインテ、空にびょびょん。
「いや……列の感じで、なんとなく……」
「それだけで?」
「いや……」
(んん?)
なんか、そわそわ。
しかも、汗ぽつ。
じー。
「……ここ、井上くんのお兄さんの店なんだ」
矢沢くん、気まずさ百パー。
告白ぽろん。
(えええええええ!)
「前に店で……会って……」
(ぎょへぇぇぇぇ!)
「シナリオ読んだの、彼」
「でぇぇぇぇぇ!」
(あわわ)
声もれちゃった。
(はっ……!)
「シナリオ、ボロクソ言われたって……」
うなずき、こくん。
(あぁぁ……)
モデルで役者で、読む目バキバキの人に酷評されるとか……
そりゃ刺さるよぉ。
矢沢くん……泣きそう。
心臓チクン。
列、ちらっ。
まだまだ、だいぶならびそうだなぁ。
「ほかのとこ、行こっか」
にこり。
「でも……藤井さん。うさぎ楽しみにしてるのに……」
矢沢くん、ぽつ。
私、首ふるふる。
「いいんだ」
だって、いつでも会いに来れるもん。
「おなかすいちゃった。やっぱ待てないや」
舌、ぺろ。
「名前、消してくるね」
タッタッタ。
(記名台、記名台っと)
しゅたっ。
記名帳そろり。
名前、ぎっしり……
(えーっと)
矢沢、矢沢……ぺら。
あれ?
どこだ?
ぺらっ、ぺらっ。
名前いっぱいすぎて、迷子ぉぉぉ!
「邪魔だ。どけ」
低音、ずどん。
(ひょっ!)
ちょろり顔上げ……
ひっ!
美顔、どごーん!
(ひぇぇっ)
ベルガモットの香り、ふわん……
(はふとろ……)
キャーーーーーーーッ!
ゲフン!
ファンズの悲鳴、背中にジュクシッ。
「どけっつってんだろ」
井上直、ぎろろんちょ。
「な、名前、け、消したくて……ですね」
汗、ナイアガラ。
どばぁ。
「あぁ?」
(ひぃ……!)
イカクしないでぇ。
「藤井さん、僕がやるよ」
(矢沢くぅん)
井上直ガンムシ、すん。
記名帳ぺらりぺらり。
「……はっ」
え、なに……いまの?
矢沢くん見て、わらった……?
「……だっせ」
井上直、ぽつっ。
(んな……!)
ちょ、な、なに急に!
矢沢くん……!
思わず、くるっ。
(あぁ……)
記名帳に目、ぴたり。
「や……ざわく……」
「くっ……」
まゆ、キッ。
手、シャシャシャ。
ペン、ぱたん。
ゆっくり、くる。
「藤井さん、行こう」
声、ぽとん。
てくてく……
(……行っちゃう)
どうしよ……
(……うぅ)
ココロ……チクン。
「はん。次、中入れ」
低音どん。
(ムカムカムカ)
『だっせ』
うぐぐぐぐっ。
『単調でつまんない』
『才能ないから止めたほうがいい』
ぐぎぎぎぎっ。
なんなの?
なんのうらみがあって、矢沢くんに……!
自分に才能があるからって……
ちやほやされてるからって……
――キッ!
「悪口、言っていい理由にならないんだからね……!」
「次、入れ」
スルーかよ。
「じょーとーじゃん……」
こっち向かせたる!
記名帳バシーンッ!
音、パーン!
周り、しーん……
「名前、消さないよ!」
指、ビシィィ!
「矢沢くんにあやまって!」
「……あ? あんだテメ」
ギロギロ、ずいっ。
「あんたに名乗るギムない」
ギロギロギロ。
バチバチバチ。
「あやまれ!」
「……おまえに命令される義務ねえ」
ムキーッ!
こっの……性格地底悪魔!
「ふ、藤井さん……!」
矢沢くんのオロロ声も、周りのひそひそも、
いまはぜんぶミュート!
「ちゃんと頭下げるまで……ぜったい、引かないから」
「はん。やってみろよ」
バチバチバチ!
(ギリギリギリ)
ぜったいぜったいぜったい、あやまらせてやるんだからぁぁ!
読んでくれて、ありがとうございました✿
次回更新は、明日朝7時20分です。




