ドキあせダーッシュ! アクアきらら……え? あ、あれ?
★前回のお話★
同じ孤独を抱えてきた、らんと健太。
誰もいない公園で、うっかり語彙の癖が出てしまったらんは、健太に嫌われるのを怖がるものの、
彼はそれを『鮮やかで綺麗』と受け止めてくれた。
さらに『その感性を大事にしてほしい』と伝える健太。
らんもまた、健太を「暗い」で片づける周囲に「もったいない」と返し、
健太は「無理して自分を作るのはやめようかな」とこぼす。
互いの本音が重なり、次の日も会う約束を交わした二人。
ピュアでキラピカ恋メモリー、前編。
始まります✿
挿絵つきだよぉ。
明日、なに着ていこうかな……
『もし……迷惑じゃなかったら、明日もここで……話せたらいいなって』
あれって……
私と話すの、イヤじゃなかったってことだよね。
『めんどくさい』って思われてない……んだよね。
(えへへ……)
なんか、にやけ止まんないや。
クローゼット、ガラリ。
(うーん……)
だれかと会う日の服なんて、考えたことなかったな。
オシャレ服、そもそも存在しないラインナップ……
くすんだニット、グレープリーツ。
花柄ワンピ……お母さんの『ぼーそー』コレクション……
さすがに着られないなぁ。
(うぅ……)
しくったなぁ……
ピンクパーカーとデニムスカート。
あれだけが、まともコンビだったのに。
今日じゃなくて明日に残しとくべきだったよ……
(うぅん……)
シロのブラウスにピンクカーデ合わせて……
下はプリーツ……
もう、これでいくしかない。
(……はあ)
にしても、矢沢くんの今日のあのオシャレさ……
ネイビーの長そでに、シロシャツかさねて、
クロのパンツもくつも、ぜんぶまとまってて。
さわやかきらん。
すごく似合ってたな……
時計も、さりげなくてかっこよかったぁ。
明日もあんな感じで来るのかな。
ぽやぁぁ……
って、なんで私、矢沢くんの服に合わせようとしてるのっ。
(もぉ……やだぁ……)
人なれレベル低いと、すぐこうやって浮かれるんだもんなぁ。
顔、ぽぽぽ。
(あつっ……)
目覚まし、ちらっ。
(わっ)
十一時!
十時集合だから……
八時起き、ごはん、身支度九時半まで……
よし、計画ばっちり。
歯みがきよし、トイレも行った。
さあ、寝よ……
ベッド、ぽふん。
ふとん、がばっ。
うとうと……
(……そうだ)
目覚まし……かけ……な……きゃ……すぅ……
――そよそよ……
(……風、やわん……)
ふわん……
(わ……)
しゃぼんの香り……
『藤井さん』
(あ……)
このやさしい声……矢沢くんだ。
(あれ……?)
昨日と同じ服……?
『無理して自分を作るのはやめたんだ』
(へ?)
どういうイミ?
いつも同じ服でいるってこと……?
自分の服ちらり。
(あわわ)
ピンクパーカーにデニムスカート……!
なんで昨日の服のままなの、私。
ブラウスとカーデの予定だったのに。
『そのままの感性を大事にしてほしいな』
どきっ。
え、えっと……矢沢くんがいいなら……はい。
ざぁぁぁ……
桜の花びら、ぶわっ。
ポプラ並木、ザザザ。
(か、風……つよ……)
えっと、これ、ふつうことば……だよね。
『無理に『普通』に合わせなくても……』
(……あ)
そ、そうだよね……
矢沢くんのアクアマリンきらきら……
『暗いって言われるほうが多いんだ』
そんなこと……
――はっ!
アオが……クロに……
『……藤井さんってさ』
ドクン……
なに……?
『めんどくさい』
あ、あ……やだ……やだやだやだ……!
――がばっ!
「はぁ……はぁ……」
きょろきょろ。
自分の部屋……
(はぁぁぁ……)
夢かぁ……よかったぁ……
矢沢くんにまで『めんどい』って思われたら、自信なくす……
『らんちゃん、めんどくさい』
これ、ほんとトラウマ認定だよね……
目覚まし、ちら。
十一時。
そんなに寝てたんだ……
ベッドに、どさっ。
目、ぱたん。
日曜でよかった……
学校なら完全アウト……
(ふぅ……)
公園でまたことばの練習でも――
(……公園?)
『明日もここで……話せたらいいなって』
がばっ。
「矢沢くん!」
十時の約束なのに、もう一時間もすぎてるよー!
(うわぁぁん)
矢沢くん、ごめぇぇん!
待っててくれてるかな……
帰ってないよね……
と、とにかく準備しなきゃ!
ベッドからジャンプ。
洗面台へダッシュ、顔バシャバシャ。
タオルでごしごし。
(ふぃぃ)
次は髪……!
ブラシでささっ、左右をきゅっ。
ツインテールの高さは……耳の上、ここ。
ピンクの髪、今日ちょっといい感じかも。
前髪も、ちょいちょいっと……
よし、かわいくなった。
(えっとえっと)
歯みがき!
液体ケア、ぐちゅぐちゅ二十秒……ぺっ。
歯ブラシに歯みがき粉、にゅるっ。
シャカシャカ……シャカ。
あわあわ、もこもこ。
ぐちゅぐちゅ……ぺっ。
もう一回、ぐちゅぐちゅ……ぺっ。
トイレ!
ぬぎっ、すとん。
(ふぃぃ……)
ガラガラふきふき、すくっ。
はきはき、ジャー。
うん、すっきりした。
手、あわあわゴシゴシ。
水で流して、ふきふき。
ドアガチャ。キィ、ばたん。
ごはん……時間……ない……
(くぅ……)
服!
クローゼット、ごそごそ。
ブラウスどこー?
カーデ!
プリーツ!
出てこーい!
(わぁぁん)
昨日のうちに出しとけばよかったぁぁ。
シャッ、ちがう。
シャッ、ない。
シャッ……あった!
ベッドへぽーい!
カーデとプリーツも発見、ぽいぽい!
下着っ。
引き出しガラッ、そーちゃく! ぱちん。
ブラウス、プリーツ、カーデ、ぱっ、ぱっ、ぱっ。
鏡の前でポーズ。
――よし、整ったぁ。
(あとは……あとは……)
うさぎポシェット!
肩に、ぽんっ。
うさぎがま口、ぽいっ。
うさぎハンカチ、ぽふっ。
部屋のカギ……持った。
忘れ物……ない、と思う。
(よし……!)
急ごう。
スニーカー、はきはき。
ドア、がちゃ、きぃ、ばたん。
カギ、ガチャ。
(いそげ、いそげぇぇ)
タタタタタタ。
どうか……まだいて……
公園めがけてダッシュ。
ツインテ、ぶわわっ。
ポシェット、トトトトン。
公園、見えたぁ……!
ダダダダダ――とうちゃ……く。
「はあっ……はあっ……」
深呼吸、すーっ、はーっ。
(矢沢くん……)
昨日のベンチ、ちらり。
(……あ)
アオクロ髪……!
矢沢くん、いたぁ!
タタタタタタ。
「ご、ごめんなさ――」
はたり。
目、ぱちくり。
(えーっと)
髪色は矢沢くんのアオクロなんだけど……
ノートパソコン、ひざの上。カタカタカタ。
ぶあついメガネ、くいっ。
クロスウェット上下。
素足にスリッポン。
髪、ちょいぼさぁ。
や、矢沢くん……なのかなぁ……
声かけてちがったら……泣く……
(じぃぃぃ)
視線ぱちこん。
「ん……? やあ、藤井さん」
ぼへぇの私に、ぬぼぉぉなスウェット男子くん。
手、ひょい。
って、やっぱり矢沢くんだったー!
「お、おそくなって……あの、ご、ごめ……」
あわあわおどおど。
「あ……この格好……ひいた……?」
ぎくぅっ。
「ちちちちちがっ……!」
首ぶんぶん、手ぱたぱたぱた。
「あ、はは……いいんだ。これが、普段の僕だから……」
(えええええええ)
ツインテ、バキューン。
目、ぼふぅぅん。
(うそうそ!)
髪、さらさら。
前髪、さら。
服、きちっ。
パンツ、きゅ、くつ、すとっ。
昨日言ってた『無理して自分を作るのはやめようかな』ってあれ――
あの『王子さまスタイル』が、矢沢くんが言う『ムリ』だったんだ……
(はぇぇ……)
ギャップ……すご……じー。
「……ね……暗いって言われるのも……まあ、仕方ないんだ……」
矢沢くん、まゆしゅん。
(……あ)
私、いま……矢沢くんのアクア、どよんってさせてる……?
『表現が、すごく鮮やかだよね』
『綺麗だと思う』
矢沢くんは、私のことばを大事にしてくれたのに。
『その感性、すごく素敵だと思うんだ』
『そのままの感性を大事にしてほしいな』
あったかいことば、いっぱいくれたのに。
(ぐぐぐっ)
ビン底メガネ?
スウェット?
はだしスリッポン?
そんなの、どうでもいいよ。
その『らしさ』が、矢沢くんなんだもん。
「そんなことない! ふだんの矢沢くんが見られて、私。なんかうれしくなっちゃった」
『君の前だと……無理しなくていい気がするんだ』
あれってさ。
私には『そのままの自分でいていい』って、心をゆるしてくれたんだよね。
「……そう……よかった」
矢沢くん、ほっ。
うつむきテレテレ。
(ふふっ)
ほんと、こういうとこかわいいなぁ。
見た目変わったって、中身はちゃんと矢沢くんだもんね。
読んでくれて、ありがとうございました(´∀`○)゜
後編は、一時間後です✿




