嫌われちゃったらどうしよう……うっかりぽつん、らんゴイぽろん。
★前回のお話★
新しい街で友だち作りに挑戦中の藤井らん。
“へん語”を“ふつう語”に変えながらがんばる彼女の前に、
アクアマリンの瞳を持つ少年・矢沢健太が、やさしく声を掛けてくれた。
へん語少女とアクアきらら王子、ここからどうなる?
後編スタートです♥
「友だち……いっぱいいそう」
ぽしょり。
こんなきらきら王子さまだよ?
ほっとくほうが、逆にムズん……
「友達……残念ながらいないんだ……ひ、一人も」
ぽしょ返し。
「うそうそうそ!」
ツインテびゅびゅびゅびゅん。
目ん玉、ぼーん! だよぉぉぉ!
「これも、本当……」
矢沢くん、にがにがにっこん。
「……私といっしょだ」
「え……藤井さんも?」
「えへへ……うん。ゼロ人……」
頭かきかき、舌ぺろん。
「そう……なんだ」
あ、びっくりしてる。
矢沢くんも私のこと「友だちいっぱいっぽい」って見えたんだ。
なかよしのメ、ぴょこん……わくわく。
もっと、おしゃべりしたいな。
「あ、あのっ……このあと予定とか……ある?」
おずおず、そわそわ。
「ううん、特に……かな」
(……わっ)
「じゃ、じゃあっ……あそこのベンチで……話そっ」
公園指さし、ぴっ。ドキドキ。
「……うん」
(わはぁっ)
やったぁぁ。
ぱぁぁぁぁ。
「じゃあ、行こ!」
るんるんてくてく。
矢沢くん、少しうしろをてくてくてく。
だれかとおしゃべりできるっ。
うれしすぎて、テンションぴゅぅん!
ベンチへタッタッタ。
座るとこ、いじょーなーしっ。
「ここでいい?」
指、ピッ。
「どこでも」
にこっ。
(はわわぁ)
矢沢くんのにこり、ハンソク級にきれいだよぉ。
「じゃあ、ここで」
ふたりでちょこん。
(わわわ)
男の子の横っ……すごくきんちょうするぅぅ。
「誰もいないね」
矢沢くんぽつり。
「……うん」
しーん。
公園の時計ちらっ。
十時。
土曜の朝なのに、ふしぎなくらいしずか。
「ひみつのかくれんぼ、ぴゃるん」
ぽろっ。
「え……」
(……え?)
――はっ。
また、ことばのクセでちゃった。
『らんちゃんって、へんなの』
ドク……ン。
(うぅ……)
ひかれてたら、どうしよう。
私のバカーーーーーーー!
ひとりぼっちがイヤで、遠くの高校に来たのに。
友だち作り、失敗したくなくて、ふつうのことば、いっぱい練習してるのに。
たった数日でおわっちゃうなんて、ヤダ――
「……藤井さんってさ」
びくっ。
スカートぎゅっ。
「表現が、すごく鮮やかだよね」
(……へ?)
顔ぱっ。
矢沢くん、ふんわりにこ。
ドキッ。
「へ、へんな言い方って……思わない……の?」
ドクン、ドクン。
「思わないよ。むしろ……綺麗だと思う」
ドキン。
(……うれしい)
『きれい』なんて、初めて言われたよ。
「自己紹介のときから、そう思ってるよ」
「じ、じこしょうかい……?」
え?
私、なんか……言った?
血の気、さー……
「あの……私、なんて言ったの……?」
汗たらたら、ガクブル。
「……覚えてないの?」
矢沢くん、ぽかん。
(なははぁ……)
「私、どうもみんなの「ふつう」とズレてるみたいで……気づくと、ヘンテコことば言っちゃってるんだよね。む、無意識で。だからね、なにしゃべったか覚えてないんだ……」
おでこぽりぽり。
まいったなぁ……
これ、ハジの上ぬりどころじゃないよね。
ハジ、ペンキでべったーん。
ぬりたてほやほや。
「だからその……みんなに『めんどー』って思われて……ずっとスルーされてたの」
目線、地面にストーン。
ついでにココロもずどん。
(ううう……)
風、さわさわ。
はっぱさん、シャカシャカ。
矢沢くん、なんにも言わない。
もしかして、困らせちゃったかな……
こわくて、顔……あげらんないよ。
「そ、それでね……知り合いゼロの高校なら、いちから友だち作れるかなぁって……またよけーなこと言ってる? えへへー……」
なんか、矢沢くん相手だと安心バリアがはずれて、
言わなくていいことまでベラベラ。
ことば、勝手にダッシュ……いいかげん止まってぇぇ。
「ご、ごめんねっ……こんな話、されても困るよね」
スカートぎゅぎゅっ。
目、合わせられないぃぃ。
「それは……本当に、つらかったね」
矢沢くんのぽそり、耳にじわん。
(はあ……)
やっぱり……気、つかわせてる。
困らせちゃった――
「藤井さんの言葉の深みを理解できないなんて……損してるよ」
(……え)
頭、そろっ。
トクン……
わらってる……
「君の自己紹介、すごく印象に残ってる」
矢沢くん、ふわり、にこ。
空へ顔くいっ、まばたきひとつ。
「名前のあとにね……『たくさんの「おはよう」を交わせる友だちを見つけたい』とか、『卒業アルバムのどのページにも笑顔がある毎日がいい』って言ってたよ」
(ひえっ! あわわわわ)
私、そんなポエムみたいなこと言ってたの?
「ハ、ハズ……」
顔、ボッ。
「ぜ、ぜんぜん恥ずかしいことなんて……! それで、藤井さんのことを覚えたっていうか……うん」
矢沢くん、かぁぁぁ。
「え、あ、そ」
ぽぽぽぽぽ。
(あうあうあう)
いま、春だよ?
ふたりの顔だけ真夏だよぉ。
(ボーボー……あ)
なんか……ちょっとだけ思い出したかも……
『ふ、藤井らん……ですっ』
あのとき、きんちょーで顔バクハツしてて。
『ふつう』を意識してことば探したのに、
頭ん中まっしろで。
気づいたら口が勝手にしゃべってて、
そのあとキオクがバチッと飛んで……
再起動ギギギ、寮のベッドで天井ぽかん、じー。
(そっか)
『たくさんの「おはよう」を交わせる友だちを見つけたい』
『卒業アルバムのどのページにも笑顔がある毎日がいい』
そんなこと言ってたんだ、私。
って……入学初日からクラスメイトに『へんな人』って思われてたらどうしよう。
汗、だばだば。
「僕も藤井さんみたいに、カッコよく自己紹介しようと思ったんだけどさ。結局『よろしくお願いします』が限界だったよ」
ほっぺ、ぽりり。
(はうぅ……)
矢沢くん、にがぁくわらってるけどさぁ。
それがせーかいだって思うよぉ……
目立たないあいさつ、いちばん……!
うう……なんで私、
あんなポエムバクハツしちゃったんだろ。
「……さっきのあれ」
矢沢くんがぽそっ。
「な、に……?」
また私、やらかした?
ハラハラハラ。
「ほら、僕が声をかける前にさ。『しゃぼんのあまみ』って……」
(えーっと……)
言ったの……かな?
「うん」
「……それとさ」
(うひっ)
ま、まだあるの……?
「僕を見て、『アクアマリン』って言ってたよね」
(あわわわわ)
はい、言いました……ぷしゅぅぅ。
「ごごごごめん! へんなこと言って」
あたふたあたふた。
「変なんて、ぜんぜん」
矢沢くん、ふるふる。
「……そうじゃなくてさ。藤井さんの言葉って……僕にはその……ま、眩しいくらいで。無理に『普通』に合わせなくても……その感性、すごく素敵だと思うんだって、言いたかっただけ」
にこっと、へにゃん。
トクン……きゅっ。
(うれしいなぁ……)
私のへんことば。
この街で、はじめて「ステキ」って言ってもらっちゃった。
「僕も藤井さんと同じように、卒業アルバムのどのページにも笑顔がある毎日がいいから、無理して自分を作るのはやめようかな」
(え?)
「……ムリ、してるの……?」
「……うん」
ちょっとだけ、すー……アクアぱたん。
「……嫌われるのが怖いからね」
(そんな……)
つくりものなんて思えないくらい、
横顔、すごくきれいだよ……
あと、姿勢だってシュッだし、
きらわれポイント、見当たんないよ。
「アクアマリン……か」
矢沢くん、ぽつり。
ふた閉じまぶた、すっ、ぱちん。
アオい目、きらり。
吸いこまれそう……
私へ、にこっ。
またまたどっきん。
「僕を褒めてもらえて、本当に嬉しかった。藤井さんの言葉って……僕だけじゃなくて、きっと誰かの救いにもなると思うんだ。だから……『普通』に惑わされず、そのままの感性を大事にしてほしいな」
(……矢沢くん……)
そんなふうに言ってくれるなんて……
ちょっとくすぐったうれしいよぉ。
さっきのことば。
『暗いって言われるほうが多いんだ』
あんなふうに言ってたけど。
こんなにあったかいことばが言える人なのに、
どうして、だれも気づかないんだろ。
「……矢沢くんのよさ、見えてないなんて……もったいないよ。ほんとに」
「藤井さん……」
まっすぐで、人をよく見てて。
こんなにキモチのきれいな人に気づかなかった周りの人たちに、言ってあげたい。
「矢沢くんを『暗い』でまとめちゃうの、もったいなすぎるよ」
それに――
『表現が、すごく鮮やかだよね』
そんなふうに私を見てくれた人は、どこにもいなかった。
「……ありがとう」
矢沢くんのやさしいにこり、ふわり。
風……しゃぼんの香り、ぽんぽんふわん。
「私も……私を見つけてくれて、ありがとう」
ずっと「へん」って言われてきたことば。
矢沢くんのほわほわひとつで、むねがぽわん。
(……泣きそう)
友だちになりたい……けど……
『らんちゃん、めんどくさい』――ズバン。
(うぐっ……)
最初はやさしくしてくれても、
そのうち『めんどくさ』ってなってくるかな。
はぅぅ……
『めんどくさい』すっかりトラウマ。
でもでも!
せっかくおしゃべりできたのに、このままバイバイしちゃったら、
ただのクラスメイトでおわっちゃうよぉ。
(どうしよ……)
『友だちになってください』って言っちゃう……?
ああああ、でも……!
スカートぎゅぎゅぎゅ。
「ふ、藤井さん」
びくくっ!
ツインテ、びょぉぉん。
「はははははいっ!」
背すじぴーん。
「もし……迷惑じゃなかったら、明日もここで……話せたらいいなって」
「……へ?」
(あわわわわ)
へんな声出ちゃった……!
「君の前だと……無理しなくていい気がするんだ」
「う、うん……」
ぽぽぽ。
高校生活のはじまりに、ちいさな声がころん。
私の世界に、花びらひらり。
桜がふわり、ぽぽぽんぱぁ――
読んでくれて、ありがとうございましたm(__)m
次回更新は、明日朝7時です☀




