直のココロへ、そろりぽとん。キモチとキモチ、ぴったりこ
★前回のお話★
夕日が沈む中、落ち着きを取り戻した三人。
らんがこぼした独特な表現を直が拾い、健太が丁寧に解釈していく。
らんの言葉を聞くたびに落ち込む健太を前に、らんはかつて健太へ「才能がない」と告げた直へ怒りをぶつける。
直が本音を返すと、健太もまた「迷惑」と言われたことが一番つらかったと告げ、
二人のすれ違いの理由が少しずつ明らかになっていく。
直は、父親の意向に逆らえずサッカーを辞めたこと、
兄を守るために自分の気持ちを押し殺してきたことを語り、健太は沈黙してしまう。
怒りが止まらない直に対し、らんは黙ったままの健太へ「声をかけてあげて」と背中を押す。
直の過去が明らかになっていく夕暮れ時。
それぞれのわだかまりは解けるのか。
幼なじみ編⑩、始まります ☂
「矢沢くん。なんでもいいんだよ? 直に聞きたいこと、ちょっとでもあるなら……今だよ」
肩、とん。
「う……ん……」
アクア、きり。
「直……」
ぽつ。
「あぁ?」
顔、ぐいん。
ぎりり、ギロン。
「う……えと……」
アクア、すとん。
(矢沢くぅん、ガンバ……)
「慎司さんのお店……その……土曜も、来てる……の?」
(おぉ!)
矢沢くん……ナイス切り替え。
グッ。
直は……?
ちら。
(あ……)
ほんのちょっと、やわん。
「いや、日曜だけだ」
「……そっか」
しーん。
(え! それだけ?)
「矢沢くん」
そで、くい。
「え? な、なに……?」
汗つつ。
「聞いた理由、言うとこだよ。続き続き」
「あ……」
アクア、ゆらん。
口、きゅ。
(だいじょぶ、行ってこい!)
矢沢くん、まゆキリリ。
直へ――
「い、一番忙しい日に手伝いに来て……そ、その……平気なのかな……」
おどおど、どん。
「は? 何がだよ」
直、ズバーーーーン!
まゆ、ぎゅぎゅん。
「う……」
(矢沢くんんん)
そこでヒルんじゃダメだってぇぇ。
ぼっち時代のクセ、顔出してるよぉ。
直、すくっ。
矢沢くんへ、ギンッ。
(あ、ちょっと!)
手ぇ出したらゆるさん。
盾かまえ、バッ。
直、ずいっ。
矢沢くん、ビクッ。
私、キッ。
「自信なさすぎ。ほんと変わんねぇよな……健太はよ」
ニッ。
「……直」
アクア、ゆら。
(いま……名前呼んだ……よね……?)
直、矢沢くんのとなりに、すとん。
(ふぅぅ……)
よかった……
ほんのちょっと、ほわん。
「日曜に来てんのは、親父が俺の休みを、そこにぶっ込みやがったからだ」
イラ声、どかん。
(ほぉ)
『ついでに兄の店で顔売ってこい』とでも、言われたのかなぁ。
ツインテ、くりん。
「休みの日まで……慎司さんのために動いてるんだね」
矢沢くん、ぽと。
「ケッ。別に好きでやってるわけじゃねぇよ」
腕組、ふんっ。
「そうなの?」
私、ぽい。
「ああ。兄貴に『来るなら働け』って言われてっからな。やってるだけだ」
(えぇぇぇっ!)
ミカエルさまぁ……
自分で直しょーかんしちゃってるんですかぁ……
『直がまた迷惑をかけてしまったようで……申し訳ない』
ぺこ。
『お客様……この度はスタッフの不手際でご迷惑を……深くお詫び申し上げます』
ぺこぺこ。
『お客様……スタッフの不手際で場を乱してしまい、心よりお詫び申し上げます』
ぺこーん。
(ぺこぺこぺこぺこ……)
弟のしりぬぐい、かわいそう……って思ってたけど。
ミカエルさまってば、自分で首しめてるんじゃん!
どーじょー返してっ。
(でも、なるほどねー)
きょーせー参加させられてんなら、
『次、入れ』
『呼びつけたんなら、さっさと注文しろよ』
『あ? カスハラ客かよ。さっさと出てけ』
フキゲンモードになるわけだ。
それはそれとして……
「なんで毎回、お兄さんの店なの?」
店、あんなにいっぱいならんでんのに。
ほか行けばいいじゃん。
てか、店の空気みだしてるし
ジャマになってるだけなんだよね。
「さぁな。気づいたら兄貴んとこ来ちまってんだよ、勝手に」
(ほーん……)
だから『来るなら働け』になるんだね。
『あーあ、やってらんね』
『あいつ、余計なこと言いやがって』
ぶーぶー言ってたけど……
なんだかんだで、お兄ちゃん子じゃん……
「僕と平日に会ったの、あれは……」
矢沢くんぽとん。
こっそり店に来て、シナリオ読んだってやつ。
「……親父にムカついて、仕事バックレたんだよ」
で、気づいたらミカエルさまのとこ行ってたってことだ。
なんかこの人。
『言いなり』って言うわりに、
家族のこと、ちゃんと気にしてるよね……
(にしても)
平日はお父さんにこき使われて、
日曜は、お兄さんにこき使われて。
「ばしゃ馬じゃん……」
ぽそそ。
どうせ店に立つんなら、もちっとわらえばいいのに。
ぶつぶつ。
「ああん? 聞こえてんぞ」
直、ギロロンちょ。
(ひえっ)
「直くんってば、は、はたらき者だよねぇ……ね? 矢沢くん」
あせあせ、ぽい。
「うん……頑張ってるね……仕事」
矢沢くん、ぽそ。
ナイスアシスト。
「おまえそれ、他人事じゃなくなんぜ?」
直、顔くりん。
「え?」
矢沢くん、目ぱち。
「なるんだろ? プロの脚本家」
ニマ。
「う……そ、だね」
アクア、つつつ。
「……追いかけて来いよ、絶対」
直、すくっ。
「健太の台本、読まねぇまま終わらすとか……すんなよ」
矢沢くんへ、ふっ。
「直……うん……うん……!」
アクア、ゆらゆら。
じんわり、じわわ。
『みんなが僕に向ける冷たい視線も、『気にすんな』って笑い飛ばしてくれてたんだ』
いまなら、矢沢くんが言ってた『やさしい直』の話に、
『そうだね』って言えるよ……
風、そよよ。
空気、やわん、ぽわん。
「ん」
直の手、矢沢くんへ、のび。
矢沢くん、目コシコシ。
手、すっ。
ふたりの手、がしっ。
矢沢くん、すく。
「色々……傷つけちまって悪かった」
(直……)
矢沢くん、ふるふるふる。
風、そよよ。
空気、やわん、ぽわん。
お月さま、ぽわりん、ほわん。
私たちへ、ぴっかんこ。
ふたりの顔、うっすらちらり。
イロまでわかんないけど……ぜったいポポポしてるよね。
だって、手ぇぎゅってしたまま、ぎゅぎゅぎゅなんだもん。
ふたりして、思い出アルバムめくるみたいに、にこにこしてる。
(えへへ……いいなぁ)
ちょびっと、うらやましい。
「……おかえり、直」
ふわり。
「ああ……ただいま」
ことん。
――ここは、直と矢沢くんの『心の隠れ家』。
またこの場所に帰ってこれて、ほんと……よかったね。
いまのふたり、世界でいちばんぴかりんこだよ。
読んでくれて、ありがとうございましたm(__)m
次回更新は、明日夜8時20分です。




