パッキン悪魔、待ってろよ。もりもり食べてパワーチャージ
★前回のお話★
らんと健太のもとへ特別料理が次々と運ばれ、
慎司は「お二人の時間が続きますように」と言葉を添えて席を離れる。
特注料理が続く状況に疑問を抱いたらんは、思い切って値段を尋ねる。
慎司は、店としての対応と兄としての立場から、すべてサービスであると説明した。
その説明を受けたらんは、
健太が慎司を信頼していることを踏まえ、
「直とのことを話してほしい」と促す。
健太は戸惑いながらも、少しずつ過去を語り始めた。
直と健太。
幼いころに交わした願いが、少しずつ形を見せ始める。
幼なじみ編②、始まります☆彡
「でも……小四のとき。直は急にサッカーを辞めたんだ」
「……どうして?」
矢沢くん、首ふるふる。
(あぁぁ……)
アクアマリン、どよよん……
「僕にもわからない。聞いても『飽きたから』って……」
(あきたって……)
プロ目指してた人が?
そんな軽いノリでやめるかなぁ。
「オーナーさんは? なんか聞いてないの?」
家族なら、なんかヒントあるんじゃ……
「慎司さんは留学してて、そのまま海外で修行してたから……直のことは全然知らないままなんだ」
「そっか……」
ツインテしょぼぉ。
「ただ」
矢沢くん、ぽつ。
ツインテ、ぴょん。
「なぁに?」
「慎司さんが言ってたんだけど……直のお父さん、業界トップらしくてさ。その関係で、直はサッカー辞めて芸能界に入らざるを得なかったんじゃないかって。……ここだけの話ね」
『しー』ポーズ。
(ひょええええええ!)
目ん玉、ぼふぉぉぉぉん!
ツインテ、バキュゥゥゥン!
(……あ)
急に思い出した。
ミカエルさま、さっき
『動画につきましては、私の方から速やかな削除を依頼いたしますので』って。
もしかして、お父さんパワーを使うって意味だったのかな。
兄弟のお父さん……つよつよすぎじゃん……おそるべし。
(ってことはだよ?)
「モデルって……お父さんのゴリ押し案件……?」
声、こしょこしょ。
「うーん……そこまではわからないけど、直はほら、見た目いいから、そっちの道でも、きっと実力があったんだと思う」
矢沢くん、ぼそぼそ。
ちょいしょん。
あー……そう考えると、わかる気がする。
今やトレンドモデルで、俳優までやってるし……
お父さんからしたら、『売れる素材は囲っとけ』って思うよね。
でも……あの、やる気ゼロの目。
かんぜんに、ムリヤリ業界ぽいーんってされた子のそれだよ。
「シナリオができて、直に見せたいって思った頃には、もう手の届かない存在でさ……諦めかけてたときに、直がこの店に来たんだ」
「ロケ?」
「いや、一人だったから、内緒で来たんじゃないかな」
お忍びってやつか。
「矢沢くんと会ったなら……平日だったんだよね?」
「うん。そう。ちょっと驚いた」
仕事で限界きちゃって……
ミカエルチャージ、急ぎで必要だったのかな。
「久しぶりに会った直は……昔と雰囲気が全然違ってて。ちょっと声かけづらかったな」
にがっ、にこ。
そのころには、もう『井上直』としての顔になってたんだね。
「それまでは、どんな感じだったの?」
首、ちょここん。
「うーん。意地悪の度合いは、もう少しマシだったかな」
頭、ぽりぽり。
(へー)
あの底意地悪さ、デフォルト設定かぁ。
口、ひくひくんっ。
「でも……昔の直は、今よりずっと明るくて。よく笑ってて……強い意思と誇りを持ってた。みんなが僕に向ける冷たい視線も、『気にすんな』って笑い飛ばしてくれてたんだ」
ツインテ、ばびゅん!
あの直が……!
(ほへぇ)
そうだったんだ……
矢沢くんの味方だった人が、
どうしていまは、あんなふうに矢沢くんを刺すんだろ。
「ねえ、直にシナリオを読んでもらったのって、再会のとき?」
矢沢くん、しっとりこくん。
「完成したら読んでほしいって、ずっと言ってたからね。でも、店で会っても声が出なくて。そしたら……慎司さんが間に入ってくれてさ」
(わおぉ)
さすがミカエルさま。
神レベルの救世主。
「笑ってはくれなかったけど……黙って、ちゃんと読んでくれたんだ」
そしたら返ってきたのが、
『単調でつまんない』
『才能ないから止めたほうがいい』
だったと。
「……やっぱり僕には才能がないんだって思った。すごく落ち込んだけど……演技のプロが言うなら、きっとそうなんだろうなって。書くのは好きだから……趣味で続ければいいって思うようにしたんだ」
ほっぺぽりぽり、へにゃ。
(はぅぅ……)
私が読んで、めちゃくちゃほめちぎってあげたいっ。
でも、同情ほめは逆効果だし……
矢沢くんは、そんなの望んでないだろうし。
(うーん……)
「シナリオを酷評されたのは、仕方がないって思ってる。でも……」
「でも?」
「いや……」
(ええええ)
そこまで言って、またごっくん。
矢沢くんのわるいクセだよぉ……
「『でも』なあに?」
私、ずいっ。
「う……愚痴っぽくなるし……」
(むぅぅ)
「グチでもいいよ。聞くって言ったでしょ!」
それに、話してくれなきゃ、ふたりのことわかんないもん。
「……うん」
さあさあ、おねーさんにぜんぶはいちゃいな。
じーっ。
「……『友達みたいな顔されると迷惑』って……」
(……あ?)
「それで……『もう声、かけんな』って……笑って流せると思ったのに……無理だったよ」
(な、な、な)
なんてヤローなのぉぉぉぉぉ!
夢、語り合った仲でしょーっ。
矢沢くんの味方だったんでしょーっ。
それをなに?
有名になったら天狗モード突入かよぉぉぉっ!
(ちっ……なるほどね)
矢沢くんの『井上くん』呼びも、
キョリ置いてるのも、ぜーーんぶパッキン命令じゃん!
なのにあいつ、矢沢くん見て鼻で笑って、
『だっせ』とか言い放ちやがった。
自分は『声かけんな』つっといて、
からんでくるとか、なに様?
性格ダークマターのカタマリかよ!
ぴっこーん。
さてはあいつ……
「ただの八つ当たりなんじゃない?」
「……え?」
「ほらだってさ!」
親のチカラで芸能界に押し込まれて、夢うばわれたって話なら、
イライラマックスボルテージ発射! ビビビ。
「夢追ってる矢沢くんにジェラってるだけだよ」
ミカエルさまに対しても、おんなじなんだ。
自分は親のあやつり人形なのに、お兄さんは夢叶えてキラキラ。
反抗モード、バクハツどっかーん。
私にちょー失礼ぶっ放したときだってそう。
あのパッキン悪魔め。
ミカエルさまが『直。お詫びを』って言ったら、
『はっ。じょーだん』
『あーあ、やってらんね』って、
エプロンばっしーん!
投げ捨てて仕事バックレて消えたんだよ!
(ムッキィィィィ!)
矢沢くんにだって、まだ土下座もしてないんだよ、あいつ。
ぜったいに、にがさん。
「矢沢くん! ごはん食べたらパッキン悪魔ついせきだよ!」
ガッツポーズ、むんっ!
「パ、パッキン悪魔……?」
矢沢くん、汗つーっ。
あ、そっか。
心の中ネームだった。
プンスコすぎて、ぽろん。
でへへ、ぺろっ。
うさぎベル、リリリン。
ミカエルさま、しょーかんっ。
まゆ、きゅぴーん。
待機姿勢、ぴしっ。
「お待たせいたしました」
すいっとご降臨。
キランキラン。
「お料理、じゃんじゃかお願いします!」
けーれー、びしぃっ。
出陣前のもぐもぐチャージ、イエッサー!
「ふ、藤井さんっ」
矢沢くん、オロオロオロ、汗だばっ。
ミカエルさまへ、ぺこぺこぺこ。
ミカエルさま、くすくすにこり。
「はい……承りました」
しとり、ぺこんぬ。
くるりん、しゃなりん。すっすっす。
(よぉぉっし!)
「もりもり食べてパワー満タンにしてさ! 直にガツーン! って言ってやろ! ねっ!」
ナイフとフォーク、カチカチカチーン!
ツインテぶんぶん。にっかにか。
「藤井さん……うん」
矢沢くん、すっきりハレやか、ほわっとにっこり。
直、首洗って待ってなさい。
こんどはこっちから、バシュバシュ切り込んでやるからっ。
読んでくれて、ありがとうございました!
次回更新は、明日朝6時40分です(*^ワ^*)




