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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
3章 冒険者
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88. 戦争参加 2 (内通者の炙り出し)

 干城はリムラート司令に援軍の到着はいつかを聞くと、少数だが近くの部隊は順次到着する。本隊3万人の到着は20日後の予定だと言われた。


 3万の人数を編成して動かすのだ、時間が掛かるだろうとは思った。移動速度もそれほど速くはないだろうとは予想したが20日は到着が遅過ぎる。

 

 やはり曲りくねった街道や、道幅をわざと細くしたりなどというものは、経済発展にも部隊展開にも百害あって一利なしだ。侵入した敵の足を阻害するための道ではなく、平時は速達性を高めて経済を活性化させ。戦時は敵に侵入させないための増援を迅速に部隊展開できる道の方が合理的だ。オースディタクルとラエスタ間はトンネルを掘ってショートカットしたという魔法ゴリ押しだが、4日の距離を1日に短縮した。


 干城も現実は分かっている。国中に国道網を整備するには何十年の歳月と莫大な予算が必要で、それを雇用創出に結び付けた公共工事として提案したのも自分だと。国境を接する領地だけでも自分が手を貸すべきか? いや、それは目的のひとつを潰す悪手だ。二つの思考がせめぎ合い堂々巡りの無限ループに陥いりそうになったところで、今優先するべきことは他にあると思考を振り切った。


 干城は斥候部隊に敵の食料がどこにあるかを探らせて、見つけた場所に自分が行き、食料を焼き払って敵が戦えない状態に追い込み撤退を強いる案を進言した。リムラート司令もこの案を受け入れて、斥候部隊長に敵の食料保管場所を探るよう指示を出した。


 その日敵が攻撃してくることはなかったが、敵の斥候らしい動きはあった、敵もこちらの状況を調べているようだ。3日後斥候部隊により敵の食料保管場所の情報が齎され、干城は夜の闇に紛れて情報があった場所に向かった。


 到着した場所で『テルモグラフ』で確認した敵の守備兵は30人ほど。思ったより数が少ないが、食料を保管しているであろう木箱の山を見つけた。だが、1万5千の兵を食わせるにはいささか規模が小さい。しかし、今は行動の時だった。火魔法ではなく足の速い光魔法なら短時間で片がつく。リフレクターを上空50メートルに展開し、レーザーで一気に焼き払った。


 一筋のレーザーが闇夜を切り裂く。木箱の上に配置したリフレクターで反射したレーザーが眩い光を放って拡散する。夜空に花火のような光のシャワーが空から振り注ぎ、次々と木箱を燃やす。中には粉砕した木箱もあり燃える木箱を干城は凝視した。木箱の中に食料は確かにあった。だが中身が少ない、空の木箱が殆どだ。偶然にしては出来過ぎている。


 干城は砦に戻りリムラート司令に、指定場所に30名ほどの守備兵と共に食料が保管されているだろう箱を見つけた。敵兵1万5千を賄うには木箱の数が少なかった。その場の箱は全て焼却した。だが、箱に入っている食料は少なく、空箱が多かったと客観的に事実のみを報告した。事実をどう判断するかは指揮官であって自分ではない、先ずは私見を交えず問われたことに答えればいい。


「タテキ。その報告に訂正の余地はないのか?」

「事実です」


 リムラート司令は口を真一文字に結び、口から漏れ出そうになる言葉を必死に押さえ込んでいるという風に見えた。立場のある人間だからこそ思ったこと軽々に口にできない、少なくともマトモな思考をする者は日本もここも変わらないなと干城は思った。


「タテキ。どう対策するべきか、何か意見はあるか」


 干城は考えてみた。隊長はほぼ確定としても斥候部隊の誰が怪しいかも分からない。誰と誰が繋がっているのか……


「リムラート司令。今回敵の食料を焼き払うことは大成功しました、その成功は斥候部隊が活躍した賜物です。是非、斥候部隊を表彰し祝宴を開きましょう。信賞必罰《・・・・》は武人の寄って立つところです。酒も入れば気のあったグループもできるでしょう。今回の活躍に、隊長の他にも現場では誰と誰が繋がり協力し合ったかも見えてこないでしょうか?」


 リムラートは黙考し、やがて静かに干城を見てフッと息を吐く。


「タテキ、君は13歳じゃなかったか? 引き抜いて直属の参謀に迎えたいくらいだよ。分かった、君の提案どおり表彰と祝宴を開こう。武人に信賞必罰は必要だ。その祝宴には君も参加してくれ。君も当事者だからな」

「委細承知しました。できましたら奈津希も参加させてくだい」


「良いだろう。ナツキの回復魔法で、死者も負傷者も居ない。祝宴に参加する理由は充分ある」


 敵が攻勢に出ることなく二日後に表彰と祝宴が開かれた。祝宴の場で干城は自分の成功は全て斥候部隊が正確な場所を突き止めたからと斥候部隊長に話していた。酒が入り宴もたけなわな頃、斥候部隊長と親しげに功績を喜びあうのは斥候一番隊と三番隊の斥候部隊長直卒の隊長たちだ。


 そして別グループの斥候部隊副隊長と二番隊と三番隊の斥候部隊副隊長直卒の隊長たちには奈津希が情報収集する。奈津希は前の戦闘で重傷者たちを快癒させているので顔も知られていて、自然な感じで皆さんのお陰で怪我人が減るかも知れないと賛辞を送り、取りつけているようだ。


 干城と奈津希は『ステータスレブリート』を使い脳裏に浮かべた魔導チャットで情報を送り合う。奈津希情報では、より広く情報を集める名目で斥候部隊副隊長グループはここまで斥候部隊長グループとは別行動のようだ。干城が斥候部隊長グループを探って分かってきたことは、敵の食料保管地を突き止めたのは三番隊で一番隊が捜索したエリアは敵の斥候がこちらを探っていたと目される場所に近いこと。二番隊は敵本隊の動きを見ていたこと、四番隊は砦周辺に近づく敵斥候を警戒していたということだった。


 干城は奈津希とやり取りした情報や状況から導き出される推定は、斥候部隊長が内通者で手足となって動くのは、一番隊が敵とコンタクトを取り、その情報を元に三番隊が場所を突き止めた形を取った。副隊長、二番隊と四番隊は邪魔にならない位置に誘導されたというところかと仮定した。


 祝宴終了後に干城と奈津希はリムラート司令の部屋に行き斥候部隊長を利用する方法を献策した。


「リムラート司令。明後日砦の半数の戦力で東の森を回り込むように敵の側面を奇襲攻撃をするように部隊を動かしてください」

「半数を砦から出す? 自殺行為だ」


「実際に敵本隊を攻撃する必要はありません、部隊はしばらく森で待機します。砦の戦力が半減すれば敵は攻勢に出るでしょう。敵が砦に来たらその部隊を動けなくします。そうなったら敵を攻撃してください。そしてその作戦を斥候部隊長にだけ、それとなく流してください」

「タテキどういうことだ?」


「斥候部隊長をハメて吊るすだけでは勿体ないです。この際こちらが斥候部隊長を利用して、敵に打撃を与えましょう」


 干城は砦周辺のジオラマを作り始めた。ここ最近はグローブスフィアで砦周辺の地理は散々見た、ジオラマ作りも慣れた。リムラートは目の前で魔法で作られていくジオラマに目を見開いていた。


 干城はジオラマを使い作戦の概要を説明し始めた。斥候部隊長が流した情報で、敵がこちらが戦力を分散して奇襲を行うと知れば各個撃破の好機と考える。敵の行動で考えられるのは敵全軍で砦を攻略する。若しくは1万を砦攻略に振り向け、5千で奇襲部隊を迎え撃つ。

 

 リムラートは無言で頷き、力強い目で続きを促す。


 だが、実際には奇襲部隊は森に身を潜めていて、敵部隊が砦に取り付いたら奈津希の魔法で身動き出来なくする。


「そんなことが可能なのか?」

「可能です。明かしますが、奈津希は聖女の職業スキルを持っていて、戦場で敵の体力を奪う魔法があります」


「そんな魔法があるのか?」

「事実です。ただ、奈津希のスキルとこの魔法は内密にお願いします。宗教勢力が涎を垂らして奈津希を追うでしょうから」


 リムラートは一瞬考えて、分かったと了承した。


 奈津希の魔法で敵の抵抗力を奪ったら、森に潜んだ部隊と砦の部隊が呼応して敵を捕虜にする。干城は西側から単独で東に注意を向けている敵本隊の背後から襲い掛かる。敵が全軍砦に来ていたら、砦、東に森に身を潜める部隊、南には自分で半包囲の形を作る。


 斥候部隊長は味方からも敵からも裏切り者として進退窮まる。


 話を聞いたリムラートは考えているとも、悩んでいるともといった感じで長考し。やがて結論をだした。


「タテキがそれほど自信に満ちて、立て板に水を流すように説明するからには、実際に実現可能ということなんだろう。分かった、奇襲部隊の指揮は私が執る。奈津希には私の直属として、臨時で砦の指揮権を委ねる」


 奈津希は畏まってリムラート司令に答えた。


「承知しました。砦の誰も犠牲にせずリムラート司令にお返ししてみせます」


 その後、術が完成したら砦から狼煙を上げるので、それを合図にリムラート司令の部隊は森を出て敵を捕縛する、砦からも人を出すと決めた。


 干城は斥候部隊長が内通者なのは十中八九間違いない、ただし確証がない。だが、今回敵の動きで確証が得られる。捕虜になった敵の指揮官は斥候部隊長にハメられたと盛大にぶち撒けるだろう。自分でもエグい追い込みだと思う。だが、やるからには徹底的にやる。自分は自選自決する自由人の冒険者だ、文句があるなら自分たちをこの世界に召喚した先王にあの世で言ってくれ。



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