↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
2章 フリーランサー
86/90

81. 新しい街の形を見てもらおう

 ラエスタでは領主の居城であるラグレア城で歓待があった。シルヴァノ王、フレデリーケ姫、グレカーレ宰相の三人が揃っているのだ当然と言えば当然か。夜は晩餐会が行われたりしたが、一晩行事を終えて翌朝は一番の大型渡し船を抑えてあり早めの出発だった。


 レワード川を渡河したあとは街道を道なりに進み、途中レモラント山脈の峠道へ向かって右にカーブしている所を直進してもらう。ここは地面を整地しているだけだが、10分ほど進めば日本の高速道路規格の片側三車線の道に到着した。一旦進みを止め、シルヴァノ王、グレカーレ宰相は馬車を降りて道路を眺めている。


「なんと広い道だ、タテキこれが新しい道の規格なのか? そして道が二本あるのは、これが上下線ということか」

「はい、シルヴァノ王。向かって左側が下り線になります、そして上下線の両端のこの部分が歩道です。この道こそが「国道」で「本線道」と呼称しています。この道が街の近くを通り、次の街さらに次の街へと向かいます。この本線道から分かれて街へ繋がる道を「幹線道」と呼称し、幹線道はこの道から車線がひとつ減った二車線となります」


 すると幹線道路の説明で顎に手を当て首を傾げるグレカーレ宰相から質問がきた。


「タテキ殿、なぜこの道が直接街に向かわず、分かれた道が街に向かうのだ?」

「はい、グレカーレ様。移動の効率化の為です。用があるのは次の街の場合、その街に立ち寄る必要はありません。街に道が繋がった場合は用のない街を通り抜けるのに移動速度が落ちます。輸送でも軍の移動であっても、それは速達化を阻害する要素になります」


 シルヴァノ王とグレカーレ宰相は、説明した理屈に納得した様子で頷く。


 移動を再開し、新道を走ってしばらくのこと。馭者やシルヴァノ王とグレカーレ宰相も道の違いに気付いたようでしきりに窓の外にや足元を気にしている。


「グレカーレ、移動の速度が少し上がったか?」

「そのようです陛下。道路の表面が滑らかですから、馬の負担が減って進みやすいのでしょう」


「それに馬車が揺れない、街道は石畳であっても多少は凹凸もあるが、この道はそれがない。タテキ。タテキの言っていた道の直線化と速達化とはこういうことだったのだな」

「はい、シルヴァノ王。そのとおりです。この道はトンネルを掘っているので極端な例ではありますが、この道と同等の道が延びれば、輸送の速達化や軍の移動速度の上昇が見込めます」


 実際に新道を体験してもらう事で、今までの街道との違い、新しい規格の道路の有用性を理解してもらえたようだった。


 途中トンネルに入り、ライトの魔法を付与しているので真っ暗にはならず、トンネルを抜けると昼過ぎだったので、一旦停止して昼食をとり再び移動を開始して夕方頃には新しい街が見えてきた。今まで峠を越えて四、五日かかっていた距離がラエスタから本当に一日で到着したことにシルヴァノ王とグレカーレ宰相は新しい街の街壁を見ながら信じられないといった感じになっていた。ここはトンネルで距離を大幅にショートカットしてるので、他はここまで極端ではないだろう。


 街が近づくにつれ街壁の様子が分かるようになる。この街壁と門周辺の防御設備こそ、干城の男の浪漫が詰まった設計だった。街壁全てが銃眼を備えたトーチカになっていて、内部の通路や部屋を含めた厚さは30メートル。門の手前300メートルは道から20メートル離れた位置の両側に街壁が平行にある。接近した敵は逃げ場のない高架道路上で左右から挟撃され、水堀の上5メートルの高さの橋は跳ね橋になっている。5メートルの高さに位置する門を突破しても先には30メートルのトンネル状通路が待ち構え、そこには「真空」の魔法が付与してある。そこを越えると四方を壁に囲まれた場所で集中攻撃を浴びせられる。干城の男の浪漫が詰まった、「僕のかんがえるさいきょうの縦深防御施設」を具体的な形にした。

 

 街門を通り、内門を抜けると5メートル下る道を通って街の道路に入る、道は完成しているが建物は城しかない。この街での滞在場所だ。


 何もなく見晴らしのいい街の予定地にシルヴァノ王が見えるものの質問をしてきた。


「タテキ、あそこに見えるのはなんだ?」


 シルヴァノ王が指差した先は公園だった。


「あそこは公園予定地です。街の中心に位置し真ん中に池があります、まだ数本しかありませんが、木を植樹して、住む人が寛げる管理された森の予定地です」

「管理された森」


「そうです。無造作に木が生い茂った自然の森と違い、木と木の間隔を広くし休息日に家族で過ごしたりする場所であったり、催し物を行ったりする場所です」

「街はただ住む場所ではなく、休息する場所か」


 馬車の窓から外を見ていたグレカーレ宰相からも質問がくる。


「タテキ殿、あそこは地面の色が違うようだが?」

「はい、あの一帯は農業用地で全て畑にできます。今後は区画を整理して畑と農道を決めていくことになるでしょう」

「あの広さが畑なのか!」

「はい、この街の立地は王都へ向かうレモラント山脈付近で敵が侵攻する際は蓋の役割の位置ですが、カルスト台地の麓で水がなく食料生産にも向かない場所で籠城が不可能でした。ですが今では水の確保ができ、土壌改良により食料の生産もできるとなれば、この街は簡単には落ちない持久戦が可能になりました」


 そんな説明をしていると城が近づいてきた、城門を抜け城を見たシルヴァノ王とグレカーレ宰相は唖然とし白亜の城を凝視している。


「なんと荘厳で美しい城か、王都のウィルベル城以上だな」


 ここは前世の世界、ドイツ、ハンガリー、イギリスなどの名城を参考に奈津希のラノベの夢を詰め込んだ白亜の城だ。街壁同様やり過ぎていることは承知している。なにしろあのときはイケイケのノリで作業に没頭しているのだから。


 城を見たグレカーレ宰相から質問があった。


「タテキ殿、城が二つあるのか?」


 干城に代わって奈津希が説明を始める。


「グレカーレ様、城は私が担当しましたので私がお答えします。崖の上に見える城は防御などの戦闘指揮をする場所になります。下の城は宮殿としてそれ以外、茶会や夜会などのパーティを行う社交の場として、それと招待者の宿泊施設としてしても利用できるよう、施設の役割分担をするように設計しました」


 奈津希の説明にシルヴァノ王、グレカーレ宰相、他国の王家から嫁入りに来ているフレデリーケ姫まで唖然としていた。巨大な城郭を二つ使って役割分担。そんな贅沢な設計の城など世界中を探してもないんじゃないだろうか、干城は他人事のように考えていた魔法って反則便利だなと。

 

 まだ街の名前も城の名前も決まってないので「宮殿」と呼び、その宮殿に到着した。案内は作った奈津希に任せる。宮殿に入ったエントランスは三階まで吹き抜けになっていて広い天井には、神や天使なのか宗教画のような絵が天井一面に描かれていたペネディエルトランサーでイメージを天井に転写したんだろう、さらにいくつもの巨大なシャンデリアも瞬いている。


 部屋は沢山ある、部屋決めをして護衛騎士50人に至るまで作っておいたベッドと寝具を空間収納から取り出して置いていく。その間奈津希には夕食の準備を任せた。打ち合わせどおりインベントリから作り置きの料理を、先に護衛騎士の食事を食堂に並べ、一角にお代わりを置いたバイキング形式にし、護衛騎士にお代わり自由と伝言して食堂をあとにしこちらに来ている。


 夕食のメニューはハンバーグ。付け合わせにはニンジンのグラッセとほうれん草、さらに鳥の唐揚げと温野菜のサラダ、チキンライスにポトフ、デザートのプリンまでついていた。……いや、これ食器は王族や貴族に相応しいけど、メニューは完全に大人向けのお子様ランチじゃないか? もちろんこの国にお子様ランチなんて概念はない。だが、懐かしい味の詰まった一皿はシルヴァノ王とグレカーレ宰相に大好評だった。フレデリーケ姫にいたっては、プリンを食べて目を輝かせている。城で食べるお子様ランチはなんだかテーマパークのレストランで食事してる気になった。護衛騎士も同じメニューだし喜んでくれていればいいが。


 夕食も終わり、少し離れたテーブルで奈津希はフレデリーケ姫とお茶を楽しみながら話をしていて、聞こえてくることは、この街を作るときにどんなことがあったか、公園はどんな完成を目指すかなどの話で盛り上がっている。干城はふと窓に視線を移した、窓の外に月が見えた。窓は魔導錬成で作り浮遊魔法ではめ込んでいった。ポーション瓶用にと大量のガラス素材があって良かった、なかったら窓が板だったと奈津希と胸を撫で下ろしたことを不意に思い出し干城は笑いそうな声を噛み殺して物思いに耽っていた。 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。