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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
1章 召喚と生活基盤作り
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(閑話)ギルドマスター面談 

 ドアを開いたソフィアに続いてギルドマスターが応接室に入室した、干城と奈津希はスッとソファから立ち上がり、ギルドマスターに向き直って一礼した。


 ギルドマスターは驚愕した、高位貴族の教育を受けていれば平民のギルドマスターに立ち上がって礼などしない、ならばどこでこれ程の礼儀作法が身に付いた? 貴族が関わっていれば逃がす筈もない。


「私はギルドマスターのアズレスト・リシーデルだ、二人とも楽にしてくれ、話は食事が終わってからにしよう」


 干城が失礼しますと言って二人はソファに腰を下ろし食事を再開した、その姿をギルドマスターは直視しないようそっと観察した。


 ソファに浅めに腰を掛け、背筋を伸ばしクッキーは一口大に割って口に運び、音を立てない様にお茶を飲む姿は、躾の行き届いた高位貴族の子の様に見えた、だが入室時に加え更に一点気になる所があった。(なるほどソフィアが訳が解らないなと言う筈だ)


 食事も済み、ソフィアが食器を片付けて、一拍空いた後にギルドマスターは静かに二人に言った。


「君達二人は何者だい?」


 干城は咄嗟に答える事が出来なかった、どこまで話して良いのか分からない、なので少し探りを入れる答えを選んだ。


「ギルドマスターの質問は含意が広く、どうお答えすれば良いか分かりません」


 本当に何者なんだ、これが12歳の子供の答えか? 貴族と腹の探りあいをしているようだ、内心を顔に出さないように気を引き締める必要がありそうだ。


「質問の意図か、そうだね、君達は教育と躾の行き届いた高位貴族の子の様にも見える、だが私には二つ君達に疑問が湧いた」


「先ずは、高位貴族の教育を受けた子なら、ギルドマスターとはいえ、平民の私に立ち上がって礼などしない」


「次に、君達はお茶を飲む時にカップのハンドルに指を通していた、それは平民のカップの持ち方だ、どちらも貴族の教育係が矯正しない理由がない」


 ギルドマスターは他にも受付時にソフィアが違和感を覚えた数々の事や二人の奇異さを語っていった。


 それを聞いた干城と奈津希は、これがこの世界との常識の違いか、当たり前に行動したつもりが実はボロだらけだった。城での遣り取りもお互いの常識や認識の相互理解をしない相手との話し合いは無理だな考えた。


「君達が何か事情を抱えている事は察して余りある、腹を割って話そうじゃないか、君達が何者か分からなければ、手の打ち様もない」


「お察しの通り事情はあります、ですが、事情を知ればギルドマスターの身にも危険が及ぶかもしれません」


「私もフリーランスギルドのギルドマスターだ、面倒事の対処法や身の守り方の心得はある、相手が非合法組織だろうと、貴族や国でもね」


 干城と奈津希は顔を見合った、ギルドマスターが本気で手を差し伸べようとしている事が分かった、五里霧中を手探りで進む、知らない世界で味方になってくれるかもしれない。


「ではお話しします、大筋で言いますと、今朝勇者召喚により異世界から召喚されました、転生した様で、こう見えて前世私は57歳で奈津希は55歳です」


 「元の世界に戻せと要求しましたが、宰相の返答は国の自己都合を押し付けるのみで、王は私達を隷属の首環で傀儡にせよと命じました。それで奈津希と二人で反撃してその場に居た王、王妃、王子、宰相、騎士と、こちらに殺意や害意を向けていた貴族を殺しました」


「その後、生き残った貴族で一番身なりの良い、濃茶髪で白いモミアゲの意志が強そうな貴族に、今後も関われば殺すと警告して城を出て、食い扶持の仕事を得る為にここへ来ました」


 リシーデルの脳裏にある点と点の情報が繋がった。


 そうか、そういう事か、それならあの常軌を逸したステータスも常識を知らない事も、57歳と55歳という年齢からくる落ち着きと高い教養がある事も辻褄が合う。勇者召喚の噂はあったが、余りにも愚かで実行されないだろうと思っていたが、勇者の逆鱗に触れた愚か者の、こんな結末になるとは。


「王の治世は限界だった、その目先を逸らす為にカペリノ王国との戦争を再開しようとしていた、その為に君達は召喚されたんだろう。生き残った貴族は特徴から、反王派の前宰相エルナート侯爵と第二王子派だろう、体勢の立て直しとして彼が第二王子を次期国王とするよう宮廷工作や情報統制するだろうから、追手の心配はない」


「タテキ、ナツキ、その教養の高さなら君達は貴族だったのか?」


 リシーデルの問いかけに奈津希はやや微笑みを浮かべて答えた。


「私達の元の国、元の世界にも皇族や王族は居ました、ですが君臨すれども統治せずで、政治は国民が選んだ代表者が行います。私達は元の国では国民この世界でいう平民でした、私達が貴族に見えるのでしたら、社会に出た者の殆どが性別に関係なく私達と同程度の教養があり所作ができます」


 これまで言葉を発しなかった奈津希の回答は、リシーデルにとって奈津希が女性だからこそ衝撃だった、平民が政治を行い性別に関係なく誰もが貴族並みかそれ以上の教養を持つ世界、どれだけ高度な世界なのだと。


「ソフィア、二人にギルドカードを渡して問題ない、それと君は受付嬢として二人の常識相談役になってくれ。彼らは来たばかりで常識が分からない、逆に私達も彼らの常識を知らない、先ずお互いを知る必要がある」


 そう言ってギルドマスターは応接室を後にした。


 フリーランスギルドは世界中に支部を置く、だからこそ国に対して公平中立で政治問題には関わらない。


 ギルドマスターの執務室に戻ったリシーデルは黙考した、第二王子とエルナート侯爵は二人に罪を問わないだろう。失敗はしたが、第二王子とエルナート侯爵はこの国と民の為に失政を続ける国王と王太子を幽閉するクーデターを企図していた、寧ろこの状況は窮地にある彼らにとって望ましいものだろう。あるとすれば、エルナート侯爵が強力な力を持ったタテキとナツキにどう鎖を付けて、この国の為にどう利用するかではないか? そうリシーデルは結論づけた。なにより、第二王子シルヴァノ殿下の人柄なら、タテキとナツキこそが今回の被害者なのだと気付くだろうから。



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