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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
2章 フリーランサー
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59. 冬の王都、冬のギルド

 ポーションを作ったは良いが、現在の売り先は商業ギルドしかない。これではせっかく商業ギルドカードを持っている意味が薄いと感じてしまう。かと言って、俺たちの活動の軸はあくまでフリーランサーであって、商人になりたいわけではなかった。


「奈津希、ログマイヤのセージ協会に行こうか。ミレアの実も買っておかないといけないし」

「そうだったわね。忘れないうちに行きましょうか」


 今まで存在すら知らなかったが、セージ協会は王都の北西に位置しており、ここからは結構な距離がある。場所の確認を兼ねて、干城たちは足を運ぶことにした。


 雪こそ降らないものの、ログマイヤはすっかり冬の寒さに包まれている。通りを歩けばすれ違う人達は結構重ね着していて、通りには温かいコーヒーやスープを売る屋台が点々と店を構えていた。屋台に近付くと鼻腔をくすぐる香りが魅力的だが、それ以上に冷たい風にさらされた身体を温めようと、多くの人々が買い求めている。


「魚のあら汁かコンソメスープの屋台でもやれば売れそうだな」


 そんな考えが頭をよぎるが、すぐに思い直す。街の中に拠点を置いて販売するのは「1種」商人の領分だ。自分たちのような「2種」の行商人は料理の即売には向かない。空間収納があるため不可能なわけではないが、制度や効率の面から見ても、進んでやるべき商売ではなかった。奈津希とそんな世間話をしながら歩を進めると、やがてセージ協会に辿り着いた。


 ディノーラの街のそれよりも、はるかに広い敷地を誇っている。建物の中に入り、通りかかった職員に協会カードを提示して「ミレアの実」の販売場所を尋ねる。案内のおかげで、無事に奈津希と俺の分、それぞれ50個ずつを手に入れることができた。ミレアの実は見た目はグミみたいな実で薬草と魔力だけではポーションにならない、ミレアの実が媒介として、薬効成分と魔力を融和させて初めてポーションとなる。


 セージ協会をあとにし、周辺を散策してみる。この一帯には商人ギルドをはじめ、職人ギルド、大工ギルド、調理師ギルドといった、多種多様な職業ギルドの建物が集まっていた。ふと「商業ギルド」と「商人ギルド」は何が違うのだろうという疑問が湧き、干城たちは商人ギルドの門を叩いて話を聞いてみることにした。


 窓口の説明によると、商売をする資格を得るには、「商業ギルド」に登録する必要がある。「商人ギルド」の所属者は全員がその商売資格を持っている。


 しかし、大工や調理師といった他の職人ギルドの場合、親方に雇われている身の者も多いため、個人で商売をする資格まで持っているとは限らないのだという。つまり商人ギルドや職人ギルドとは、フリーランスギルドや商業ギルド、セージ協会のようにギルドを名乗ってはいても「公的な身分証」として通用するほどの影響力を持たない、同業者による純粋な「互助会」のような組織であるらしかった。


 ひととおり話を聞き終わって、お礼を言って商人ギルドをあとにし、奈津希と話をしながらフリーランスギルドへ向かう。


「ギルドって言っても、色々あるもんだね、ゲーム的なイメージだとフリーランスギルドの方が近いんだけど」

「そうね、アタシも今まで気づかなかったわ、ギルドというか中世の徒弟制度みたいなイメージね」


 通りの角を曲がった所で、一陣の風が吹き首筋に寒さを感じた。


「スープを1杯飲んでみない?」

「良いわね、実は少し気になってたのよ」


 屋台で買った、カップに入った1杯5リギルのスープはクコデュー(鶏)の肉と刻んだ茸や野菜が入ったものだった、チーズと具材から出た味を少量の醤油に似たラマオで纏めていた。冷たい風で冷えた身体に暖かい1杯のスープはなによりのご馳走だった。


「寒さも味を引き立てているね、食事には足らないけど、軽く腹に何か入れる程度なら良いかもね」

「そうね、もう少し茸の味を出した方がよさそうね、アタシだったらワンタンを具材に使いたいわね」


「良いねワンタン、寒くなるとおでんや鍋の締に雑炊といきたいたいね」

「鍋か…こっちだと土鍋はないから、本当に鍋で作るしかないわね。魔道具で卓上コンロってあるのかしら?」


 スープを飲み終えて、カップを店に返して歩みを進める、冬はコートが欲しいという話になるが、平民でもコートを着ているのは富裕層くらいで、庶民は重ね着をしている。


「羊毛は結構ストックしてたし、糸にできればコート作れないかしら?」

「それ、手作業でできること?」


「あら? アタシ裁縫師の職業持ってるじゃない?」

「ああ! 錬金術のときにそんな事いってたね」


「そのせいか、アタシの作業部屋糸紡ぎとか織り機とか色々あるのよ」

「マジ?それもう神様がヤレって準備してるって事?」


「ヤレかどうかは分からないけど、できる事はやらせてくれるみたいね」

「チートだ」


 ギルドとバーチャルエリアのどちらに行くかで、一旦ギルドに行く事にした、途中商店街経由で行こうとなり、辿り着いた商店街は冬の寒さも商機という活気に満ちていた。店の呼び声に冬の寒さは関係ない。魔道具を扱っている店を見たが卓上コンロはなく、干城はないなら作ると寧ろ楽しみに感じた。色々な店を見て回った、鍋料理に良さそうな鍋、食器類やカトラリーを買い、ソレル油という名の、ひまわり油を見つけたので結構買った、金物屋に戻って揚げ物に良さそうな鍋を買い足した。


 大分回り道と道草をしてギルドに到着した、ギルドの中は弛緩した雰囲気と緊張した雰囲気が同居していた。依頼ボード前はピリピリした雰囲気で、飲食コーナーで談笑しながら寛ぐ人数がいつもより多い。分からない事は常識相談役受付嬢のソフィアさんに聞こう。


 ソフィアさんの話によると、ランクEFは一年中依頼に変化はないが、今感じている雰囲気作りをしているのはランクCDで、ここまでの蓄えで冬を休養に充てるか、稼ぎを得ないといけないかの格差というか、違いがあるらしい。冬に依頼を受けると野営時の寒さも大敵で、達成しても経費が嵩んで利益が少なかったり、何より魔物だけでなく寒さという敵が増える、だから充分な蓄えができたパーティは無理に仕事をしないそうだ。


 奈津希と相談して、そういう事なら依頼を受けるよりバーチャルエリアでやりたい事を優先しようという事に決まった、奈津希もコートや服作り、揚げ物料理や鍋料理、やりたい事は色々あるようだ。たてもさっきの卓上コンロや薪ストーブ、給湯ポットや携帯マグなども作ってみたい。楽しみな冬休みになりそうだ。







 

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