52. 死が身近な世界
ディノーラ3日目朝食を済ませ街を歩いていると、気が付くとギルドに来ていた、どの街でもギルドは街門付近に立地しているため、意識せずに歩いていると身体がギルドに向かっていた。
ギルドに入って漸く干城は気付いた、もしかして職業病かパブロフの犬状態? 考えなくてもいい事を考えて理由付けをしようとドツボにハマってさぁ大変♪な干城の悪い癖だった。
奈津希は依頼ボードを見ようと動き出した時、ギルドに一人の男が駆け込んできた。受付嬢と話しているがどうやら緊急依頼らしい。
焦っているのか声が大きい。依頼の内容はラクレ茸とクレタカと言う薬草が自生しているエリアにガイナイースと言う蛇が出没しポーション研究員が一人食われたという話だった。問題はガイナイースは人を食える程大きくないのだ、緊急依頼を持ち込んだ男、聞こえてきた話ではアルベア・ノギエルという男は、青い鱗と黄色い目、頭に赤い二本の線がある事から、特徴は間違いなくガイナイースだと言った。
思い出してみると、ガイナイースの特徴はノギエルの言ったとおりだが、体長は3m胴回りは30cm程の蛇だ、毒は持っているが致死量には結構量が必要で噛まれて数日高熱になるが死ぬ事はない魔物だ、この辺りだとEランク依頼になる、それが人を食うほど異常な成長をしているとどう対処するかから考えないといけないが、現場の近くの小屋に三人取り残されているらしく、討伐するか、早く三人を救出して欲しいというのが依頼の内容だ。
ギルドも咄嗟には適正ランクを決められない、見た所ランクDやCからも名乗り出る者は居ないようなのでデバステーターが引き受けると名乗り出る、一斉に向いた視線は物語っていた「誰だ? お前??」ここでは余所者だった。
問答の時間が惜しかったので、概略場所を聞いて頭の中の地図で整合する、場所のあたりをつけて、奈津希と二人でギルドを飛び出した、街門を緊急で通り抜け身体強化で現場にダッシュした。
「ノギエルさん、場所はどの辺りか教えて下さい」
「えっ? でも」
「急いでるんでしょう、早くして下さい」
「ああ、門をでて右に3キロ程進んだ先の、林を抜けた先に薬草が自生している所がある、小屋は近くに小川が流れているところだ」
「分かりました、奈津希行こう」
雑草と薬草が生い茂る目的地近くに着いて、魔力探知でガイナイースを見つけた。
「見つけた、ガイナイースの魔力だと思う」
「アタシも見つけたわ、こいつのようね」
「奈津希バインドで頭を地面に拘束してれ。暴れた腹を切って呑まれた人を救出する」
「分かったわ」
『――(シャドーバインド)』
ガイナイース初見だったのでウインドカッターなどの魔法で斬りすぎる訳にはいかないと、干城は短剣でガイナイースに斬りかかる
「腹の膨らみが見えた。今」
干城は短剣でガイナイースの膨れた腹の部分を素速く引き裂いた。
「人が見えた」
干城はガイナイースの腹から溢れた人を掴み、強引に引き摺り出して、距離を取る。
「奈津希この人を連れて離れて、とどめを刺す」
ガイナイースの首をウインドカッターで切断して絶命させた。
「干城、この人もう亡くなってるわ」
「そう……奈津希は小屋を探して逃げ遅れの三人にガイナイースは討伐したって知らせて。俺はこの人に付いてるガイナイースの体液を洗い流すよ、このままじゃ気の毒だからね」
犠牲者を水魔法で遺体の表面だけだが綺麗に洗い流して、その後空間収納に収容した。ガイナイースから魔石を取り出し血抜きを行い、ガイナイースを空間収納してた頃、奈津希が三人の逃げ遅れた人を伴って戻ってきた。
「奈津希逃げ遅れてたのはその三人の方?」
「そうよ。小屋で見つけた人でノギエルさんの事も知ってたわ」
「あの、ダレスの奴は」
「ガイナイースに呑まれた方でしたらお亡くなりになっています、遺体は空間収納に収容しました」
「そうか……」
「間に合わずに申し訳ありません」
「そんな事はないさ、その子から聞いたよ。ダレスを腹から出すのを先にやってくれたんだろう」
「生存の可能性がある内は、そちらが優先です」
「取り敢えずギルドに向かいましょう、皆さんの無事も知らせないといけません」
「ああ、そうだな。そうしよう」
「そう言えば名乗ってなかったな、フェルグ・タロスだ」
「タテキ・アリハラと申します、こちらはナツキ・ユウガです」
ギルドに到着しダレス氏を空間収納から出し、解体場にガイナイースを出した。
ギルドマスターに呼び出されたので、執務室に案内され、ギルドマスターに報告する事になった。
「君達がログマイヤ支部所属のタテキ・アリハラとナツキ・ユウガだね」
「はい、そうです」
「そうです」
「私はここディノーラ支部のギルドマスターでカルロ・ベルゼクティだ、今回は素早い対応をありがとう、お陰で短時間で事態が終息できた」
「済まないね、ここは余り高ランクの者が居ない地でね咄嗟の対応ができなかった」
「いえ。ガイナイースも変異種のようでしたし、仕方がありません。既存の高ランク魔物と言われた方が対応できていたと思います」
「ありがとう、今回の報酬は算定中だしばらく待って欲しい」
「承知しました。報酬はギルド間で遣り取りして頂いても構いません」
「分かった、王都のギルドでも受け取れるようにしよう。何分過去に例がないので適切な報酬が今のところ分かっていない」
「はい。承知しました」
「話は以上だ。今回は本当にありがとう」
「はい。失礼します」
干城と奈津希はギルドマスターに一礼して退出する。
ダレス氏の研究員仲間が、ダレス氏の遺体の引き取りに来ていた。
「君達」
声を掛けてきたのはタロスさんだった。
「はい、如何なさいましたか」
「タテキとナツキだったね。君達は王都所属と聞いた、いつまでこの街に滞在するんだろう?」
「一応、明々後日まで予定しています、必要なら延長します」
「では、明日錬金薬師の研究室に来てくれないだろうか? 俺やダレスの仲間にも君達を紹介したい」
「構いませんが、ダレス氏の葬儀は?」
「ダレスの葬儀は3日後に決まった、諸々の手続きはセージ協会が行う」
「セージ協会ですか」
「ああ、魔法職が寄り集まった協会だ」
「分かりました、是非お伺いさせて下さい。何時にどこへお伺いすれば良いでしょう?」
「君達はどこの宿屋を使ってる?」
「はい、湖畔の止まり木です」
「なかなか良い宿だな、そこへ朝8時に迎えの馬車を向かわせよう」
「分かりましたお待ちしております」
「では明日」
タロスさんはダレス氏の遺体を収めた棺とともにギルドをあとにした。
「アタシらどうする?」
「そうだね。街を回って、服屋で買い物して、屋台広場で摘み食いはどう?」
「良いわね、それでいきましょう」
人の死があっりと受け入れられる、魔物が居る死が身近な世界。干城は日本でも交通事故など突然の訃報の可能性がありはするが、それとは感覚的に違うものがあるな。そう思いながら奈津希とともにギルドをあとにする。




