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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
2章 フリーランサー
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47. 巣作り手伝い

 北方に広く横たわる標高七、八千メートル級の山々が連なるエルベシャ山脈の山頂付近は堆積した雪で白くなっている、山からの湧き水は何本もの川となりレワード川の源流もここにある、王都ログマイヤに生きる者に水の恵みを齎《もたら》し、標高千メートル以下の鬱蒼と百キロメートル以上広がる緑豊かな麓はログマイヤ支部を拠点とするランクCフリーランサーたちの主戦場だ。魔物由来の素材を狙う採取依頼があるため、彼らにとっては格好の稼ぎ場なのである。ログマイヤから山脈の背後にあるレクゼフロー領を目指す場合、道は1日北上したら着くネスロの宿場町を過ぎたのち、分岐点を右――つまり北東へと折れて山脈を大きく迂回することになる。

逆に、その分岐点を迷わず直進した先にあるのがエルベシャ山脈の麓だ。


 街道としては当然レクゼフロー領へ向かう道が石畳で整備された街道で。エルベシャ山脈の麓へは分岐から1日も進めば道は石畳ではなく土を慣らし、踏み固めた道になる。道幅は広く平らでタスカ村へ向かう道より遥かにマシだ、フリランサーギルドが整備したんだろうか? その道を進めば立派な野営地として開拓された場所エルベシャ拠点に辿り着く。並び立つ露店や屋台がフリーランサーを迎えてくれる。王都から馬車で6日ほどかかる距離だ。


 そんなエルベシャ拠点にやってきた、7時出発で着いても夜かなと思っていたら、夕方前くらいに着いた、今は日没が6時くらいだから4時頃か?案外近いのかも知れない。


「奈津希、馬車で6日って言ってたよね? 道も平坦ばかりじゃないし、舗装道でもないから190〜200キロメートルくらいかな? って予想してたんだけど、距離の見積もりを間違ってたかな、予想より早く着いたし案外近かったんだね」

「そりゃアタシ達は足下も坂も関係なしにマラソンランナーの20キロのペースを一定に保って、つづら道とかは直進で、崖は飛び降りたりでショートカットするんだから、早いに決まってるじゃない、馬車は自動車じゃないのよ、精々時速3〜5キロよ」


 奈津希の正論パンチに晒されたが、今回は依頼はまだ受けてない、ここの雰囲気やエルベシャ山脈の様子を見に来た、要するに物見遊山《ものみゆさん》だ。


 積極的に「狩り」をする気はないが、少し(当社比)奥に入って襲ってきたら反撃するというスタンスで行こうと奈津希と話し合いの末決まった、奈津希曰く『これと、これは素材を持ってるから、提出すれば依頼達成ね』という、ラノベの定番シチュエーションをやりたいらしい、特に反対する理由もないので乗った。俺は某ゲームのなんでもかんでも反対する『陸軍としては海軍の提案に反対である』とは違うのだ。


 屋台を見て回ると街の屋台広場に比べるとお値段倍か倍少々、観光地価格だろうか? だれも文句を言わず買っているので、ここではこれが標準なんだろう、串肉を奈津希の分と合わせて12リギル払い、食べてみると不味くはない、だが街の屋台広場のでも、フリーランス街の屋台広場の串肉と比べても劣る、焼き加減も塩の味付けのバランスも悪い、まるで素人の料理のようだ。


 なぜこの値段かは置いて、取り敢えず街と倍の金額を払ってまで食べる価値のあるものではないと分かった事が収穫だ。


 もう少しエルベシャ拠点を見て回っていたら騎士がいた、城で見たものに比べたら簡素な甲冑だが同じ紋章だから騎士には違いないだろう、どうやら小隊規模の駐留地もあるようだ。


 エルベシャ拠点はこんな感じかと分かったので、奈津希と二人森へ向かって歩き出す。


 時間は夕方。森へ向かう時間ではない、だが誰も二人を止めないし、声を掛けない。


 以前干城と奈津希が他のフリーランサーに喧嘩を売られる前にと、二人で模擬戦をやってみせた。二人にとって全力でも全開でもない程度の模擬戦だった。


 だが、周りは違った、常識外れの力だった。そして力を見せ付けているという意図は伝わっていた。二人の模擬戦の噂は瞬く間に広まった、そして噂には尾鰭や背鰭が付くものだ。曰くデバステーターには近付くな。とか、天使に喧嘩を売って、天罰以外に何がある。とか、今や腫れ物のように誰も近付かない、声もかけられない存在になっていた。


 森に入って暫く歩き、拠点からも離れて人の気配もないので、奈津希に目で合図して身体強化して一気に森の奥に進んだ、30キロメートルくらい進んだだろうか?少し開けた水場を見つけた。


「水場か、一休みしよう、ヴァイスも呼ぶか」

「良いわね、アタシもユキを呼ぶわ」


 二人の影から二頭のレグラータが姿を現す。だが、ユキはいよいよ出産しそうだった。


「干城大変よ、ずっと影で眠っていから、直ぐに出産しそうよ」

「えっと、どうすりゃいいの」

「分からないわ、アタシも」


 干城と奈津希がオタオタしている間にユキは雄雌二頭の子を出産した。親と同じで二頭とも白毛の子だった、無事に生まれて良かったと喜びあった。二頭の子はユキにしがみついて鳴いている、ヴァイスはユキに寄り添っていた。


「さてどうしたもんかなぁ」

「どうかしたの?」


「ヴァィスとユキには子育てして貰わないといけないから、当分送還はできないんだよね」

「そうね、ヴァィスとユキを送還したらこの子たちだけが残るわね」


「そう、そして子供たちが独り立ちできるのに2年は掛かるかなと思う。」


 結局懸念は、ここがレグラータにとって子育てしやすい場所か、フリーランサーに狙われないかの二つだった、自然環境のことなので自分達にはどすれば良いのか分からなかった。


 干城はヴァィスとユキが廃坑に居たこと思い出した、もし洞窟や岩場の隙間で生活する生態だったら、ここはひと工夫しないと不向きだ。かといって向いた場所に移動するのも難しい。


 干城は自分の考えを話し、近くに岩場がないか探すことにする。


「地球では豹って巣を作らないんだけど、出産の時は洞窟とか岩場の隙間とかで子育てするんだよ」

「あ! ヴァィスとユキは豹に似てるし、じゃあ廃坑に居たのって、出産と子育ての為だったのね」


「多分そうじゃないかと思う、そう仮定して近くに岩場がないか探してくる、奈津希はここでみんなを見てて」

「分かったわ、でも都合よく洞窟や隙間があるかしら?」


 干城はそれから、走り回って岩場を探した、時に木に登って見渡し、グルグルと走り回って良さげな岩場を見付けた。魔法で縦に裂けたようなヴァィスとユキが通れるくらいの穴をあけ、通り抜けた先は広い空間にした。


 近くで猿系やディア系の魔物も見かけたので餌には困らないだろう。


 戻ってくると奈津希は木を背もたれに地面に座り、奈津希を挟むように、左にヴァィスが右に子供を内側にユキが位置して奈津希は寝ていたが、戻った気配で目を覚ました。


「至福の時間だったわ、モフモフは癒しね」

「そりゃあ良かった、場所は見つけたよ、子供たちは?」


「さっきユキのミルクを飲んでスヤスヤ寝てるわ」

「じゃあ、ヴァィスとユキは送還して、子供たちは毛布で包んで住処候補地に行こう」


 分かったわ。そう言って奈津希は子供たちを起こさないように毛布を大事そうに持った。ヴァィスとユキを送還し、干城の案内で住処候補へ向かう。


 候補地に到着しヴァィスとユキを召喚する、先程作った隙間にヴァィスとユキを促し、その間奈津希は毛布を地面に降ろして、寝ている子供たちを見ていた。


 穴から出てきたヴァィスとユキは子供たちを咥えて、再び隙間に戻った、少ししてヴァィスが隙間から出てきた。


「ヴァィス、岩の隙間はヴァィスより大きいのは通れない程度にした。この近くで猿やディアも居るみたいだ、餌はあると思うからユキと一緒にしっかり子育てしてくれな、たまに様子見にくるよ」


 そう言うとヴァィスは頭を干城に擦り付けてきた、奈津希はヴァイスを撫でて頑張ってねと言った。来ようと思えばバーチャルエリアでいつでも来れる、そう思いながら、森の奥へ向かった。
















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