44. フリーランサーと傭兵の違い
最近常宿となったレマルグの月から、いつもの時間にギルドに着き、そう言えばEFランクに比べればDランク依頼ではだいぶ減るが、依頼の取り合いになる光景をCランク依頼ボードでは見たことないなと思い出した。
依頼ボードの依頼内容を見ると、活動範囲の広がりに伴って場所が遠かったり、依頼内容の条件(〇〇の鱗無傷で求むとか)が面倒だったりと色々ありそうだ。
単に討伐依頼もあるが、Dランク依頼の様な単純な討伐ではなく、どちらかと言えば魔物素材を求める依頼が多い。それに伴って依頼報酬も上がっているという事か。
Dランク依頼では討伐すれば達成だが、Cランク依頼では素材を求められる。つまり、倒し方が求められる。毛皮を求められているのに火魔法で燃やしたり、剣でボロボロにしてしまっては毛皮としての価値を失う。
結局ランクCからの依頼は慌てて飛び付くのは危険、魔物の何を求められているか、自分達の技量や得意な方法などを考えて、達成可能かも計算しないといけないし、解体技量が低ければ素材を台無しにしかねない。そう言えばソフィアさんのギルド説明で、安い素材で解体の腕を上げておかないと将来損するみたいな話があったな。
「奈津希、Cランク依頼からは慎重さが必要みたいだね、依頼ボードの前に人はそれなりに居るけど、直ぐに依頼票を取ろうとする人は居ない」
「そうね、みんな内容をよく吟味してから受けるって感じみたいね」
「報酬自体は今までより、全然良いけどね」
「その分遠いから、必要経費の計算が必要ね、報酬額と依頼達成に必要な日数分のコストと、報酬をパーティメンバーで分割したあとの利益計算とか。アタシらは収納魔法やインベントリ、それに身体強化魔法で移動時間も短縮できて有利だし、どう仕留めるかはどうとでもできるわ」
奈津希の意見は自分達に関してはそのとおりだと思う。だが、ギルドだって依頼主の要望を唯唯諾諾と受け入れてはいないだろう。
「有利な点はそうだね、でも依頼主との対応は街中の受付け事務所がフロント受付けとしての領分だし、余りに無茶な依頼はフロントで弾いてると思うよ。そうじゃないとアフター側のこちらは、怖くて依頼を受注できないし、リスクとリターンのバランスは考慮されてると思うよ」
「そっか、こちらのアフター受付だって依頼をボードに貼り出す前に、内容の確認をするだろうから、ダブルチェックされてるのよね」
なんて相談をしていたら、ソフィアさんがやってきた、何事だろう?
「盗賊討伐ですか?」
「そうなんです、傭兵ギルドの盗賊討伐に参加して下さい」
「傭兵ギルド? このフリーランスギルドとはどう違うんですか」
「はい、これから概要を説明します」
常識相談役というか、すっかり指南役ともいうべきソフィアさんの講義が始まるようだ。
ソフィアさんに案内されて、談話室で話をする事になった。少し時間がかかるようで、ソフィアさんはお茶を準備すると、部屋を出ていき、待つことしばしソフィアさんはチャイを準備して部屋に戻ってきた。
紅茶とミルクの香りが鼻腔をくすぐり、心が落ち着く。
「チャイですか」
「ええ、あれから評判なんですよ」
「それは良かった、淹れ方を提供した甲斐があります」
「紅茶とミルクそれに香辛料の香りが良く、甘さもあって落ち着けると」
チャイを一口飲み、二、三談笑した後に本題に入った。
傭兵ギルドとは、傭兵団と呼ばれる50人前後の集団が複数所属している組織で、主に戦争に参加して報酬を得ていて、他国へも遠征して陣借りをしたりもしている、他国陣営に雇われてからこの国に対する侵攻戦への戦争参加をしないのが不文律らしい。まあ、それはそうだろうとも思う。
国の軍とは良好な関係で、普段は街道の見回り警備や盗賊討伐、荷馬車10台前後かそれ以上の大規模護衛などを生業にしている組織のようだ、その為商業ギルドとも関係は良好のようだ。
その点フリーランスギルドは世界中にギルドがあるため、国と深く関わらず中立公正を通している、全く付き合いがないという事ではないが、礼を失さない程度の付き合いだそうだ、この辺りのスタンスの違いもあるのか。
「物資輸送の護衛はフリーランスギルドでは請け負わないんですか?」
「フリーランスギルドは少人数のパーティ単位ですから、商人規模の荷馬車2〜3台程が限度で、ルート次第では2パーティで依頼を受けたりします」
「ですので、商会や商業ギルドの大規模輸送にフリーランスギルド10パーティに依頼を出すより、人数が多い傭兵ギルドへ依頼を出した方が費用が安いですし合理的です。護衛の信頼度も複数パーティの連携よりも一つの傭兵団の組織力の方が信頼度は上がりますから」
なるほど、そのとおりだ自分が商人だったらそうするだろう、コストカットできるし、組織力の違いは大きい。
「そうなんですね、では、対魔物戦よりも対人戦が得意という事ですか」
「どちらかと言えばそうですね、街道付近の魔物や護衛対象に向かって来る魔物に対処はしますが、魔物討伐はフリーランスギルドの領分ですね」
「盗賊討伐が傭兵ギルドの領分でしたら、なぜフリーランサーが盗賊討伐に参加を?」
「フリーランサーもパーティ単位で護衛依頼は受けます、その道中に盗賊に襲われる事も少なくありませんし、盗賊への対処が出来たかや、盗賊討伐の実績がないと護衛依頼を受ける事はできません、ですので城で対人戦は経験してますが、それは表に出せない事で、実績としてまだ盗賊への対処をした事がないお二人にはこの討伐に参加して欲しいのです」
確かに、荷物も持たないマラソンで走る子供二人じゃ、盗賊も襲う旨味がないか、帰りはショートカットだし、それで今まで盗賊に遭遇しなかったんだな。
「経験値稼ぎという事ですね、分かりました参加します」
「では、本日は傭兵ギルドへ向かって下さい、傭兵ギルドは南西門近くにあります、こちらが傭兵ギルドへ提出する書類になります」
「南西門近く、ああ、あの建物か軍の駐屯場かと思ってた」
「分かったわ、ソフィアさん行ってくるわね」
二人はギルドを後にし南西門に向かう、比較的近い門なので街並みを眺めながら歩いく。街路樹の葉は黄色く色づき、落ち葉が道の端に溜まっていた。
「落ち葉が結構凄いね、おっ!あの屋台煮物料理かな? 冬限定の屋台かな?」
「そうみたいね。鳥を使ったスープなのかしら、いい匂いだわ」
傭兵ギルドに到着し、門番にフリーランスギルド員カードを見せて、用件を話すと暫く詰所で迎えを待つ事になった。




