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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
2章 フリーランサー
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43. ランクCに昇級

 模擬戦以降は嫌な視線は鳴りを潜めた。Dランク依頼の掲示板の前にいると、たまに物珍しそうな視線はあるが、多分他所からログマイヤ支部に立ち寄った者だろう。特に対処する気もないので放置することにしている。


 召喚されて8ヶ月くらいが過ぎた、季節は秋が過ぎ涼しかった風は、徐々に冬の訪れを感じさせる肌寒さになり始めた、そんなときにソフィアさんに声をかけられた。


「「昇級?」」

「はい、そうです」


 自分達は他のフリーランサーより昇級は早い。それでも干城は疑問しかなかった、以前ソフィアさんに聞いた話と違いすぎる。


「ソフィアさん、いくらなんでも早すぎませんか? ランクDになって、まだ半年を過ぎたくらいですよ?」

「そうそう、そりゃ依頼はこなしてるわよ。でもランクDって1年から2年くらいで昇級するものって、前にソフィアさん言ってたじゃない?」


「通常はそうなんです。ですがお二人はソロで依頼を受けたり、パーティでもお二人なので通常の4、5人パーティより達成ポイントの取得が多いんです」

「加えて、達成評価が高く、他の方より依頼処理の期間も短いので、達成件数も多めなのです」


「「あ!」」


 この反応にニッコリとした笑顔のソフィアさんは畳み掛けるように話を進めた、最近徐々に押しが強くなってきている気がするが、転生してこの方、常識相談役としてお世話になっているソフィアさんには逆らえないし、足を向けて寝れない人なのだ。


「ご納得されたようですね。ギルドカードの更新を行いますので、カウンターへお越しください」


 移動に関してはあれだ、元々身体強化で時間短縮しているところに、依頼地から帰って来る時はバーチャルエリア経由で帰ってくるから、実質的に片道分しか時間がかかってないからだ。以前エノーラから帰ってくるときに途中で殺し屋に遭遇したためか? ログマイヤまで馬鹿みたいに走ったのは、あとで本当に何やってんだ? と頭を抱えた。奈津希には刺客対策で見えるようにわざと走ってるんだと思ってたと言われた。


「「ギルドカードです、お願いします」」

「はい、お預かりします」


 ソフィアさんは相変わらず、素早く淡々と更新手続きを済ませていき、更新したギルドカードは直ぐに受け取れた。


「はい、更新手続き終わりました、ギルドカードをお返しします、ランクCおめでとうございます」

「ありがとうございます」

「ソフィアさん、ありがとう」


 ランクC、フリーランサーとしては実質的に上限だ、ランクBからは500レラ(金貨5枚)をギルドに収めれば、冒険者の資格を得て、どの国にも出入りでき、この国に縛られず野垂れ死にする自由を得られる。


「あの、お二人の年齢が13歳になってますね、出来ましたら、年齢が変わりましたらギルドカードの更新をお願いします」

「「えっ!」」


 ステータスを確認すると、確かに年齢が13歳になっていた、もしかして前世の誕生日のままなんだろうか?


「俺誕生日8月22日なんだけど、奈津希は?」

「アタシも同じ日よ、夏生まれだから奈津希になったのよ、例の夏姫の黒歴史もそれ絡みね」


 歳は違えど同じ日が誕生日?偶然なんだろうか?奈津希も同じく疑問に思っているようだが、考えても分からないと割り切った。


 実は、二人は勇者の資質もあったが、誕生日は地球で惑星直列の日であった、こちらの世界も偶然惑星直列の日で、誕生した日に生まれる力と惑星がそれぞれ持つ力が召喚魔法を増幅させ本来あり得ない、別宇宙からの召喚を成立させていた。増幅された力が膨大だった影響で二人は肉体を失い魂の記憶の一部に欠損が起きていた。


「ところでソフィアさん、今更ですがギルドカードになんで年齢の表記があるんでしょう? というかなぜ年齢がわかるんでしょう?」

「この国では見ませんが、エルフやドワーフ、それに獣人の方などの年齢が分かりにくい方の為ですよ。年齢はこの端末を通さないといけませんが、登録器に落とした血を読み取っているからですよ」


 干城が異世界の魔法技術ってスゲェDNAで読み取っているのか? と感心している横で奈津希に激震が走る。


「エルフ、獣人! この世界にエルフにドワーフや獣人の人っているんですか?」

「はい、いらっしゃいます、この大陸の西の海の向こうにある大陸にはエルフやドワーフ、獣人の国もあります」


 奈津希はテンションが振り切れそうな雰囲気でワナワナしていた、ワクワクというか遂に見つけたというか、表情がキラキラしていた、まぁ、ラノベが好きだし、定番で前世の亡霊になりそうな心を護っているので気持ちは分かる。


「干城、西よ!」

「はいはい、その為には冒険者にならないとね」

「そっ、そうね、でもモチベーションを得たわ〜」


 踊りだしそうな雰囲気で、奈津希はとても楽しそうだ東の中華鍋はどうするの? と思ったが水を差す訳にはいかないだろう。


「奈津希、今日はどうする?」

「そうね、今日はお休みにして、お祝いしましょう」


「わかったよ、それじゃあ夜空の兎亭にリザングを食べに行こう」

「スパゲッティ! 良いわね!」


 ソフィアさんにお礼を言いギルドを後にする、夜空の兎亭までは少し歩くが、道中ランクCになったので活動範囲が国内全域に広がるので、依頼以外でもあちこちに行ってみようと話した。


 途中すれ違う人達の服装は、コート類を着るというより重ね着していることに気が付いた、そう言えば今まで街を覚えるのは、仕事の為に倉庫や通りを覚えるだけで、街並み自体や人のこと自体はあまり目を向けてこなかったなと思った。


 石畳の道路、街路樹に藁を巻く人、薪を売る嗄《しわが》れた声。肉屋の店先には精肉に加えて干し肉や燻製肉が並び。周辺の村から運んできたのか荷台一杯に野菜を積んだ、荷馬車を引く馬の息遣いや蹄と車輪の音。晴れた空の澄んだ少し冷たい空気と柔らかな陽《ひかり》が降り注ぐ街は冬支度が始まっていた。


「ねぇ奈津希、菰巻きをやってるね、街は冬支度が始まってるみたいだね」

「そうみたいね、あそこのお店は保存用の野菜の酢漬けを作ってるのかしら、酢の香りが漂ってくるわ」


「食事が終わったら、冬用の服を買いに行こうか」

「そうね、アタシ達も冬支度の準備を始めないといけないわね」


 到着した夜空の兎亭でリザングとホワイトシチュー、黒パンを頼み、メニューにあるスルベニがグラタンでラデスリーグがドリアのような冬の料理だと知った。


 もう少し寒くなったら、是非食べにこよう、今は目の前のスパゲッティだ。少し冷えた身体にホワイトシチューの温かさが染みる。やはり美味しい食事は胃だけでなく心も満たす活力だ、向いに座る多分奈津希も同じように考えているだろう。とても幸せそうな顔をしている。そして多分……鏡がないから自分の顔は見えないが自分も奈津希と同じような顔をしているのだろう。








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