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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
2章 フリーランサー
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41. ペンは剣よりも?なんか違う

 暗殺者たちを撃退してから、しばらくの時間が経っていた。干城(たてき)と奈津希(なつき)は身体強化の魔力を身にまとい、夕暮れの大地を駆け抜ける。やがて日没が迫ると、二人は足を止め、安全な『バーチャルエリア』へと退避した。


 エリア内に広がるリビングは、そこらの宿屋よりも断然広い。


「干城、ここにヴァイスとユキを呼びましょう。名前を教えて、一緒に夕食を食べて、今夜はみんなで過ごさない?」

「ああ、それがいいな」


 話し合ってそう決めた二人は、さっそくそれぞれの影へと意識を向けた。二人の足元から伸びる影がぐにゃりと歪み、そこからヴァイスとユキが姿を現す。雪のような白い毛並みで、初めて見る不思議な空間を両肩から生えた2メートル程の鞭のような器官をフルフル動かし、二頭はキョロキョロと興味深そうに見回した。それから、安心したように干城と奈津希の足元へと体を伏せる。


「ヴァイス、お前の名前はヴァイスだぞ」

「ユキ、あなたの名前はユキよ」


 それぞれの主から名を与えられた二頭は、それが自分を呼ぶ言葉だと理解したのだろうか。あるいは、ただその響きを受け入れただけなのかもしれない。二頭は喉をグルグルと小さく鳴らし、甘えるように二人の足元へ顔を擦り付けてくる。


 その瞬間、何かが深く繋がった感覚が干城の内側に宿る。明確な言葉として理解できるわけではない。だが、胸の奥に温かい気持ちがダイレクトに流れ込んでくる。それは、ヴァイスから伝わってくる、純粋な『嬉しい』という感情だった。


 その気持が伝わってきた干城はヴァイスの頭を撫で回し、奈津希も同じなのだろうか? ユキの頬に自分の頬をグリグリしていた。


「じゃあ、アタシは夕飯作るわね」

「ヴァイスとユキは、料理大丈夫かな? 生肉が無難かな?」


「分からないわね、魔物や魔獣なんて地球にはいないし、両方用意してみるわ、鑑定で分からないかしら?」

「鑑定にそんな便利機能があればいいねぇ、ってそれもうウィキ◯ディアじゃないか」


 キッチンに居る奈津希はこちらに振り向き、右手の人差し指を立ててまくし立てた。


「取り敢えず、一緒にお風呂に入ってもシャンプーやリンスは駄目よ!」

「あ〜……そっか、犬や猫も専用だもんなぁ、人間とは肌質が違うし、見た目は肩に触角器官みたいなのを持った白い豹って感じだもんなぁ」


 干城はヴァイスを眺めていて今更気付いた、傷は奈津希のヒールで回復した、今は毛並みも元に戻っていた。干城は嬉しくなってヴァイスを撫で回し、一緒に風呂に入る事にする。


「ねぇ、奈津希。ヴァイスの傷はヒールで回復したけど、毛並みももう元に戻ってるよ」

「えっ! そう言えばそうね、さっき召喚したときから毛並みも荒れた感じはなかったわね」


「よし、ヴァイス、一緒に風呂行こう」

「アァ〜」


 少し甲高い鳴き声は、雪豹のように聞こえる。


「こんな声なんだな、よし、行こう」


 ヴァイスを連れて風呂に入り、何が喜んで、何を嫌がるか観察したが、シャワーのお湯を出しっぱなしで体に掛け湯状態にしていたら、ヴァイスじっとして気持ち良さそうにしている。


 風呂上がりに温風の風魔法で毛を乾かすと、これも気持ち良さそうにじっとして、毛艶がさっきより良く見えるのは贔屓目だろうか?


 夕食をみんなで一緒に食べて、結局生肉も料理も普通に食べた、ただ料理のソースなどで口のまわりが汚れるのが難点か、白い毛並みだからとても目立つ。奈津希は「も〜」とか言いながら、楽しそうにヴァイスとユキの口のまわりを拭いてあげていた。


 奈津希にヴァイスと風呂に入ったときの話をしたら、同じようにしてみる。とユキを連れて風呂に行く奈津希を見送った。


 奈津希は風呂上がりにユキも同じだったと話した、ただユキは妊娠中だから、何処まで良しとするか観察が必要だ。それと運動をどうするかも考えないといけないし、生まれた子供をどうするかも考えないといけない。ユキが妊娠してるのはテイム前から分かっていたことなのに、改めて結構考えないといけない事があるなと思いながら、今日はベッドに並んで寝る事にする。


 ヴァイスとユキもフカフカのダブルベッドは気に入ったようだ、満足そうな顔してるなぁ。


 翌朝早めに朝食をみんなで取ったあと、ヴァイスとユキを影に送還して、奈津希と共に身体強化をし、いつもより少し余計にスピードを出して今日中にログマイヤ到着を目指す。そんな意気込みで昼食の時間も惜しんで、日没前にはログマイヤに着いた。途中追い抜いた人には大分驚かれたようだが気にしない事にする。


 ギルドに到着し、ソフィアさんにお願いしてギルドマスターにいつ面会できるか確認して貰ったら、今すぐいいという事だったので、早速面会しギルドマスターにお願い事をすることにした。


「タテキにナツキ、急に面会という事だが、何かあったのか?」

「はい、実はお願いがありまして」

「お願い? どんな事だ?」


 干城は、テイムした白いレグラータを巡る領主の襲撃について順を追って説明した。討伐直後にもかかわらずテイムの事実が漏れていたこと、襲撃が一度きりだったこと。それらから、ギルド内に情報を探れる者がいるのではないかという推測を伝えた。


 これらから考察して、恐らくギルドで自分達の事をある程度は調べようがあるんじゃないかと考えている事などを話した。もし貴族かその手足が私達の事を調べに来たら、召喚者という来歴を話していい事をお願いした。


「秘匿じゃなく開示して良いのか?」

「はい、秘匿しても漏れます。今回も恐らくそうでしょう、でしたら統制すれば良いんです。ただ、情報の出口は絞って貰えると助かります、そうすれば逆に誰が私達を調べているか分かりやすくなるでしょうから」


「完全に、とはいかないが、確かに分かりやすくはある。だが、それに干城は何の得があるんだ?」

「『ペンは剣よりも強し』って事です」


「ペンは剣よりも強し?」


 奈津希が引き継ぎ諺の意味を説明する。

「アタシ達の世界の格言なんです。今回は、どんな武力も命令を書く権力者のペンには無力って事ですね。他に剣は一瞬の力、ペンは記録として残る永劫の力。みたいな解釈もありますね」


 干城は頷きながら説明を続けた。

「はい、私達の事はギルドマスターに聞けば分かるという形で。私達に手を出せば反撃されて死ぬか、家ごと潰しても、国は私達に対して一切の不干渉を貫く勅令がある。それが分かるようにして貰いたいんです。今回のように貴族が私達に「剣」を向けてきて、それに一々自分達の力で対処するより、私達が持っている勅令という「ペン」の力で手を引かせた方が楽ですから」


「そうか、君達の反撃に対する国から一切の不干渉とする勅令か、確かに効果的だ。分かった、このギルドで君達を調べるなら、私に聞けば話すというように職員に周知するよう手配しよう。グランドマスターにも話しておいた方が良いな、それでこの国の全てのギルドマスターも同様に使える」


(そう言えば、グランドマスターって役職的にはゼネラルマネージャーだったな)

「グランドマスターって普段どこにいらっしゃるんでしょう?」

「ここは王都ログマイヤ支部だが、この建物にはユグリダ王国フリーランサーギルド本部もある。だから本部の執務室に居るぞ。恐らく今干城が言った案は面白がるだろうな、我々とは逆の発想だ」


干城はひとまずこれで落ち着くかと思った。


……尤もこれでもチョッカイをかけてくる馬鹿は一定数いるだろうけど、そのときは実力で叩き潰すまでだ。無駄な争いは好まないが、出来ないわけではない、売られた喧嘩は買うそれが干城の結論だった。














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