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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
2章 フリーランサー
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35. 魔物肉に霜降りはない?

 ラエスタでの依頼を済ませ、ログマイヤに戻ってきた二人はいつもどおり少し遅めにギルドに到着し、Dランク依頼の薬草採取を受注して採取に向かった。


 薬草の生育地はアネリアの森の中にある、20メートルほどの崖を登った多少ひらけた場所だった。概ね同じ場所に群生しており、上級ポーションの素材の一部になるものだった。


 見つけた薬草の特徴を観察し、間違いなければ採取した。葉だけを採取するアゼミ草やメナトリの葉は、全ての葉を採らずに少し残す。根ごと採取するリューナグの花は、引っこ抜くのではなく周りの土ごと採取して根にある程度の土を残す。


 探す、観察する、採取する、を繰り返していると、昼頃には干城にも鑑定が発現した。すると、探す時間と観察する時間が大分省けるようになった。採取した薬草は種類毎に十本を一束にするよう湿った麻布で纏めていった、これは教わった事だ。


 鑑定が出来るようになり崖を下りたあと、森で茸類も採取した。食用のものもあれば、薬用のものもあった。採取した薬草は二人それぞれ三種類の薬草を十束づつで、採取したものを薬用の茸類も含めてそれぞれ納品用と買い取り用に用意した箱に入れて、その箱を空間収納に押し込んだ。


 帰りの森の中で魔樹の果物を見つけた、魔樹と言ってもラノベにありがちなトレントのように人を襲う訳ではなく。魔力を含んだ樹液を持つ木でこの木はアズラルという木で、鑑定によると実は甘くて美味しいらしいので、早速実をもいで食べてみたが甘味より酸味の方が強く。酸っぱ! という程ではないにしろ、鑑定の甘いと自分達の甘いに乖離があるのか? と思った。実の中には大きな種があった、腹も減ってたし二人とも二つずつ果実を食べてログマイヤに向かった。


 ギルドに到着した頃に段々と体調が悪くなってきた。採取品を鑑定して貰っている間に受付にソフィアさんが居たので依頼完了の手続きをして貰っている頃には立っているのも辛くなってきた、二人ともソフィアさんに仮眠室に連れられてベッドに寝かされた。


 頭がフワフワして平衡感覚がなく、今は寝てるのか立っているのかも分からない。胸がムカムカし腹も痛い。なんだこの症状と思うが考えが纏まらない、ソフィアさんが症状を聞いてくるので今の症状を話した。


「森で何か食べましたか?」


 そう言えばと思い出した。


「アズラルの木の果実を食べました」


「それが原因ですね、頭がふらつくのは魔力酔いです、胸の不快感と腹痛は実の魔力の影響です」

「実の魔力?」


「実は幾つ食べました?」

「二人とも二つです」


「そのまま寝ていて下さい、アズラルの果実でしたら1時間くらいで落ち着くでしょう、その後にお話しましょう」


 そう言ってソフィアさんは部屋を出ていった、ソフィアさんの話しぶりから常識的な事なんだろう。どうやら常識知らずが招いた事のようだ。


1時間ほど経った頃ソフィアさんが部屋にやって来た体調も大分回復したので、談話室に移った。紅茶が用意され今回の事の説明があった。


「今回魔力酔いになったのは魔樹の実を食べたからです」


「すみません、ピンときません」

「はい、ご説明します」


「魔樹や魔物は魔力を持っています」


「魔樹は幹や樹液に魔力を含んでいて、果実は種に魔力があります。それで果実から種を取って果肉に含まれる残留魔力が放出するのを待ってから食べないと魔力酔いになります」


「種を取って果肉から残留魔力が抜けている間に果肉が熟成し甘い実になります」


「先程経験されたでしょうが、魔力酔いの状態ではまともに戦う事も、魔法を発動する事もできない危険な状態になります」


 干城はなんだそりゃ? と思った、言われた事の意味は分かる。だがそんな事が必要なのかと思った。


「だから鑑定で実は甘いってなってるのに酸味があったのね」

「鑑定ですか?」


「そだったわ、ソフィアさん、薬草採取で薬草の観察を続けてたら鑑定を覚えたのよ」


 ソフィアさんは笑顔で祝福してくれる。


「そうなのですね、おめでとうございます」


 「それでは酸味を感じたのは残留魔力のせいという事ですか?」

「そうです」


「魔物もという話でしたね」

「はい。魔物も討伐して直ぐに肉は食べられません。果実より魔力も多いので、もっと症状は長く続きます」


「その辺りもお話をお願いします」

「勿論です。魔物の肉を食用にできるようにするには、討伐して直ぐに体内の魔石を抜き取り、併せて血抜きをする必要があります」


「人も魔物も魔力を持っている者は血にも魔力は含みます。死んで直ぐに血抜きをすれば大分血は抜けますが、時間が経つと血が凝固しますので血に含まれる魔力のため残留魔力の放出により時間が必要になります」


「魔石を抜くのも、魔石が残っていればいつまでも魔力が供給されるからです」


 つまり、残留魔力を早く抜く為には、魔石と血抜きを手早く済ませる必要があるって事か。あ! 手間だけで幾らにもならないゴブリンを埋める前に魔石を抜けって言うのはそういう事か。


「残留魔力が抜ける間は魔物の肉は、魔力の影響で腐敗が進み難く、逆に肉の熟成期間となります」


「但し、この時温度は24℃以下の環境である事と肉に虫などが付かないなどの必要があります。虫が卵を産み付ける事がありますので。あと凝固した血が残っていると、その量次第では血が含む魔力の影響で熟成しても食用に向かないか、血の影響がない部分の腐敗が進む事になります。その場合は血が凝固している部分を切離します」


「そうなんですね」


「はい。話では討伐して直ぐの肉は味が余りしないそうです」


「ソフィアさん、その残留魔力が抜けるのは、その魔物が保有する魔力量で変わるって事になるのかしら?」

「はい、そうです。一般に強い魔物ほど多くの魔力を保有しているので、熟成期間は長くなります」


「ええ〜っそしたら霜降りの肉はどうなるのよ?」

「霜降り? ですか?」


「ああ、こう身に脂肪を細かく沢山含んでいる肉の事なんですけど」

「そのような肉は聞きませんね、赤身で脂肪は多くありませんが」


「奈津希、そりゃそうだろう。霜降りの牛は特別に運動量と餌を計算して育てられた牛だし、野生の魔物が赤身なのが自然だよ」

「言われてみればそうだけど。霜降りの竜肉というラノベの定番と夢が……」


 奈津希は残念そうに項垂れてしまった。


「すると魔物の肉は赤身で身は硬めという事でしょうか?」

「そうですね。全般的に筋肉質ですし、畜産の動物に比べれば肉は硬めかと思いますが、畜産の肉はあまり平民は食べません。魔物肉に比べますとお高いですので」


 蓄養にコストが掛かるからなそりゃ高くなるだろうな。


「ホーンラビットの肉で何日くらい熟成が必要でしょうか?」


「ホーンラビットは余り魔力を持ちませんので、魔石と血抜きをすれば1時間から2時間くらいで食肉にできます」


「他に質問はございますか?」

「今は思いつきません」


「それでは体調も回復したようですね。本日の報酬をお受け取りになって、お帰り頂いても大丈夫ですよ」

「そうですね、ありがとうございました」


 奈津希はまだ霜降りの夢がと言っていた、相当ショックだったようだ。そう言えばラエスタの高級料理店で食べたアルガス牛って畜産牛だったんだろうか。



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