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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
1章 召喚と生活基盤作り
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3. 俺達は何者になったんだろう?

 召喚された謁見室を後にした干城と奈津希は、周囲に怪しまれぬよう、あえて堂々とした態度で城内を歩いた。途中にあった姿見の前に差し掛かったとき、二人は思わず足を止めて愕然とする。鏡に映っていたのは、プラチナブロンドの髪にヘイゼルの瞳を持つ、中学生になるかならないかといった瑞々しい子供の姿――紛れもない自分たちの姿だった。激しい動揺を覚えながらもどうにか理性を保ち、二人は無事に城の外へと抜け出すことに成功する。


 賑わう街中を避け、二人は寂れた街外れへと向かった。やがて川に架かる一本の橋を見つける。欄干には『エノー橋』と刻まれていた。その下の土手に腰を下ろした二人は、ようやく一息つくと、改めてお互いの自己紹介を始めた。


「私は有原干城(ありはら たてき)、57歳の日本人です」

「私は雄賀奈津希(ゆうが なつき)、55歳の日本人です」


「日本でお会いした事はなさそうですね」

「ええ、私もそう思います」


 干城は張り詰めていた疑問を口にした。


「雄賀さん。さっき、どうしてあんなに平然と人が殺せたのか……剣道もやったことがないのに、あんな動きができたのか、自分でも分からないんですよ」

「この世界に日本人はアタシ達だけみたいだし、普通に話しましょう。アタシのことは奈津希って呼んで。アタシも干城って呼ばせてもらうわ」


「分かりました、そうしましょう」

「それで、さっきの事だけど……アタシにも理由なんて分からないわ。日本の倫理観からすればあり得ない。でも、急に剣の使い方や戦い方が脳裏に降って湧いたように理解できて、人を斬っても心がこれっぽっちも痛まなかったのよ」


 干城は思考を巡らせる。日本人としての倫理観を置き去りにした行動。自分自身のものとは思えない冷徹な心。そして、鏡に映った見知らぬ子供の姿。干城の常識では、どれ一つとして説明がつかない。だが、見て、感じた現実は誤魔化せなかった。人を斬ったときの独特の感触が、まだ手のひらに生々しく残っている。


「まるで、今まで見たアニメかライトノベルの世界だ」


 奈津希は呟くように言った。

「ラノベの世界? 」

 

「もしかしたらアタシたち、異世界転生して、何か中身が変わっちゃったのかしら?」

「そうだ、異世界転生……ですが、勇者『召喚』のはずなのに、なぜ肉体そのものの転移ではなく、子供への『転生』になっているんでしょうか?」


「言われてみればそうね、なぜかしら。ラノベだとお決まりの神様に会ってチートを貰ったりするんだけど……あのありがちな白い世界で神様に会った記憶はないわ。気づいたら、あの場所にいたもの」

「そういえば、声も変わっていますね。何でさっきまで気付かなかったんだろう」


 奈津希は両手を広げ、最後は苦笑交じりに答えた。


「さっきは最初から修羅場だったし、落ち着いて考える余裕なんてなかったわよ。あのいけ好かないオッサンとの押し問答で苛ついてもいたしね。仕方ないわよ」


 干城はさらに考えを深めようとしたが、すぐに思考を止めた。考えても、手がかりになる「とっかかり」が何一つないのだ。


「何か考えようにも、考える根拠が何も思い浮かばない」

「ノーヒントでいくら悩んでも解けないわね。アタシ達が異世界転生なら、お約束の『チート』があるかもしれないから、とりあえず今調べられることを調べましょう」


「調べられそうなこと、ですか?」


「さっきの城の様子だと、魔法がある世界みたいじゃない? あのローブの人達も魔法使いっぽかったし。ねえ、試しに『ステータス』を見てみましょうよ。何か分かるかもしれないわ」


「ステータスオープン」


 奈津希は呆然といった体で呟いた。


「嘘でしょ?」

 

 多分何の変化もなかったようだ。


 干城は言葉を短くして、もう一度言ってみることにした。

「ステータス」


 干城の目の前に、半透明なヘッドアップディスプレイのような画面が現れた。


「ステータス、だけで表示されるみたいですね」

「えっ? 本当! ステータス!」


 干城のステータスは見えるが。奈津希のステータスは見えない。おそらく奈津希からも同じ状況だろう。では、他人に開示するにはどうすればいいのか。


「これ、他の人には見せられないのかしら? さっきの『ステータスオープン』じゃ駄目だったし」


「開示……オープンじゃ駄目……『ステータスディスクローズ』」

「あ! 干城のステータスが見えるわ!」


 お互いにようやく落ち着きを取り戻し、二人のステータスを見比べることができた。


名前 タテキ・アリハラ(ナツキ・ユウガ)

年齢 12歳

職業 剣士

職業スキル

剣士


スキル

身体強化魔法


「えっ? 何この大雑把なステータス、レベルもパラメータもなし? 職業剣士? 職業スキル? スキルは身体強化だけ? 転生者三種の神器の『異世界言語』と『鑑定』と『インベントリ』もないの? っていうか12歳って何よ! アタシは55歳よ!?」


 干城と奈津希はこのとき初めて自分の年齢を知った、名前も記憶も自分だ、だが若返った自分は自分だと言えるんだろうか? 自分は何者になってしまったのか考えずにはいられなかった、たとえ、答えはわからなくても……

























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