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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
2章 フリーランサー
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31. えっ!なんだこれ?

 翌日、レワード川の渡し船は荷馬車が何台も乗る大型の船もあるが、奈津希と二人で向こう岸に渡るには小型で充分なので、そちらで向こう岸に渡りレモラレント連峰の麓まで身体強化で走る。麓からは地図を確認しながらベリリュートの生息地があるローデラ山を目指した。


 身体強化で平地を走るのは問題ないが、不整地や木などの障害物が多い場所は加減やバランスが必要で、枯れ草で踏ん張れずに足を滑らせ。二人とも感覚的に使えるようになるまで大きめの石に足をぶつけたり、岩や木にぶつかったりと。途中ヒールで怪我の回復をしたり色々いい練習になった。


 陽の高さから昼頃かと日陰で一休みし昼食にした。


「これ身体強化がなかったら生息地に向かうのかなりキツくない? 地図も概略的な場所や目安だけで等高線や尺度がある訳じゃないし」

「ちょっと考えれば判る事だけど。依頼が残ってるのは、残る理由があるって事よね。アタシ達ってだいたい残り物の依頼ばっかりだけど」


「え〜とっ、地図の目安はアレだから、今日は野営して、討伐は早くても明日だね」


 干城は指標二つで方位を取って概略現在位置を出そうとしたが、手書きの尺度もない地図を見て無駄な事だなと諦めた。


「干城はもう少し気楽に考えれば良いのよ、初めての討伐なんだし、何も焦らなくて良いでしょう慎重にいきましょう」


「それもそうかな。ってこのスープ美味い」

「そうでしょう、このあいだキャンプ地で採った茸を干して、それに魚の頭と骨で出汁取ったのよ」


 昼食を食べ一休みして、目的地に向けて走り出した、不整地での身体強化を使った移動に段々と慣れていった。


 夕方になり野営の準備を始める、干城は空間収納から展張したテントを出し、土魔法で即席の竈門を作る。奈津希はインベントリから食材を出し料理を作り始めた。


 干城は野営準備のあと、野営地周辺を見回り魔物の痕跡などの確認をおこなう。見回りしつつ、身体強化を使った今日の自分達の移動ペースを振り返り、他のパーティから共同で依頼対処を持ち掛けられても、協力するのは無理かなと思った。できるか、できないかで言えばできるが、わざわざ持てる力を必要以上に秘匿することにメリットを見いだせない。


 夕食はボア肉のステーキとポトフ、温野菜サラダと黒パンというメニューで、ボア肉は筋切りがしてあり柔らかく、具だくさんのポトフとポトフに浸けた黒パンは美味しく、これが野営で食べるメニューかなと考えると、これも他のパーティと共同できない理由になるか。


 夕食を食べ片付けも済ませて、テントの中にライトを薄暗い赤い光で灯し常夜灯とした、起きたときに真っ暗は流石にマズいだろう。


 夜中に熊の魔物の襲撃はあったが、気配が強く起きたあとはテルモグラフを発動し待ち構えて撃退した。


 干城は昭和の電柱に付けられた裸電球の街灯をイメージして、土魔法で石柱と懸垂用鉄棒のような魔物吊るし台を作り。石柱に赤く光るライトで光源を作って集光の傘の効果で周りからは見えにくく、作業をする手元は見やすくし、鉄棒に熊の魔物を吊るし魔石を取りだした後に、血抜き用の穴を掘り血抜きを済ませて一旦インベントリに格納する。


 翌朝再度穴を作って、熊の魔物を浮遊魔法で浮かせ切ったワタをその穴に捨て、腹の中を水洗浄まで終わらせて魔物は空間収納にしまい残留魔力が抜けるのを待つ。最後にワタを捨てた穴を塞いでしまう。魔法は何かと便利だなと思いながら作業を進めた。


 後始末も終わり、目的地へ出発する、途中昼食を取りそれから1時間程進んで、目安の目標的にこの辺かとベリリュートを探す、飛んでいるベリリュートを見つけたので、後を追ったら巣を見つける事ができた。


 番(つがい)が4組の8頭だ、嘴から尾の先まで2メートルを超えるくらいか? 両翼を広げた長さはもっと長いんだろう、また脚も大きい。


 巣は岩場のような場所にあり、巣に居るところを仕留めると後で回収が面倒だ、飛び立たせて撃墜するのが無難か。


「奈津希、時間は夕方だし、討伐は明日にする?」

「う〜ん……さっき飛んでる姿を見ても、魔力じゃなくて揚力で飛んでるみたいなのよね」


「つまり、どゆこと?」

「案外簡単に討伐できるかもって事よ、干城巣に魔法でチョッカイかけて」


 干城は巣に加減した光属性のレーザーを撃ち、巣に火を着けた


 番のベリリュートが巣を飛び出し、干城と奈津希を見つけて報復の攻撃のための風魔法を発動させようとしている……


(真空)


 無詠唱なので何かは分からないが、奈津希が何か魔法を発動したようだ。ベリリュートの風魔法が消失し、ベリリュートは翼を羽ばたかせているのに揚力を得られず墜落した。なんの攻撃を受けたようにも見えないのに、嘴を大きく開けて絶命している。干城は奈津希がベリリュートが揚力で飛んでいると言ったことと、一連の状況からベリリュートの周りを真空状態にしたのか? と推定した。干城は空中目標への攻撃として浪漫魔法を考えていた。


 魔法を推定した干城はエグい方法を思い付くなと感心していたが、他のベリリュートが次々と二人に報復と仲間の復讐に襲いかかってきた。


 もう一度奈津希の魔法を真空状態と意識して見て、理屈と要領が分かった干城も真空状態を意識してベリリュートに追従させる同じ方法で討伐してゆき、10分掛からずに全ての討伐は終了する。


 雑学程度の科学知識はある干城は、見た目の変化もなく、羽ばたいるのに揚力が得られず、鳴き声も音もなく墜落して、最後は恐らく窒息した事から。奈津希の魔法の理屈が推定できたが。科学的知識が乏しいこの世界の人には、無詠唱で魔法はいつ発動したかも分からない上に、何の攻撃もされてないベリリュートが絶命して墜落する様子を見ても、二人が何をやっているか分からないだろう。


 理屈が分からなければ対処しようがなく、目に見えているのに何が起きてるのか訳の分からない事を人は恐れる。干城は身体強化による移動方法や食事情で他のフリーランサーとの共同は無理と判断したが、二人が使った魔法は地味だが、だからこそこの世界の人達にとっては異常で、共同などすれば間違いなく恐れられるだろう。


「なんか戦闘という山も谷もなかったな」

「贅沢言ったら駄目よ、それより魔石と血抜きで傷つけ過ぎないように気をつけてよね、折角無傷で討伐したんだから」


 なるべく羽毛に沿って体を開くようにする、解体も元々知識もなしに、なんでか気持ち悪がらずに出来て、しかもやるほど上達が早い。以前の奈津希が言っていた考察に真実味が増える気がする。


 魔石、血抜きとワタ抜きも終わり、ベリリュートを観察するとどの個体も、尾羽根の中に金色に光る尾羽根が4本だけあった。暫く眺めて空間収納に仕舞い野営場所への移動を考える。


「今日はここで野営しましょうか」

「えっ! ここ? ベリリュートの巣があるトコに?」


「だからこそでしょう、ここはベリリュートの縄張りで巣があるトコよ、寧ろ安全じゃないの? 血抜きとワタ抜きはちゃんと処理したんでしょう?」

「言われてみればそうかも」


「じゃ、野営準備をしましょうか、干城は寝床を準備して、アタシは夕食を作るわ」


 それぞれ野営の準備を始め、テントの設置が終わった干城は、周辺の見回りに行くことにした。


 夕食を済ませ、片付けも終わって二人は寝る準備をしながら案外依頼が早く終わり。明日の朝はインベントリの作り置きで食事を済ませて、出発時間を早めようと決めた。


 折角料理が作り立てで保存できるインベントリがあり、それを活用して出来立て料理を野営で食べるのはラノベの定番とキャンプ地で料理のストックを作ろうと張り切った奈津希だったが、皿や鍋がなく料理ストック作りを断念したのが悔しかったのか、先日これでもかという量の鍋や食器を買っていたので、次はどこで料理を作るかという話になるが、これからはランクDとして遠征もあるなら宿暮らしの方が身軽かなとも思うし、なにより王都に執着があるわけでもない。


「かと言って料理ストック目的に借家もなんかなぁって気がするし」


 干城の頭の中に何かがよぎり、頭の中に浮かんだ言葉を無詠唱で行使した。


(バーチャルエリア)


 空間収納の黒っぽいワームホールと違い、白っぽい薄く光るワームホール、見た感じは中心が強く光る銀河のような形のワームホールが出現した。


 奈津希も、魔法を行使した干城も、宇宙の真理に触れた猫のような顔をしていた。


 空間収納のワームホールは手を突き出してもワームホールに手が入る事はないが、この白いワームホールは手が入っていった。


「えっ、なにこれ?」

「魔法を使ったのは干城でしょう」


「バーチャルエリアって魔法なんだけど。なんか通れそうだから、いっちょ見てくるね」

「アタシも一緒に行くわよ」


 二人がおずおずと白いワームホールを通り抜けた先には日本の分譲住宅のような家の玄関に似た構造物とその構造物にはドアがあった。





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