28. 野営の練習は休暇になった 3
採取をしつつ4時間ほど進んだ距離を、帰りは2時間ほどで野営地に戻ってきた二人は採取品の見せ合いをし、この辺りは素材がそれなりに採れるんだなという事と、今後も息抜きのキャンプや練習に向いた場所なんでは? と思った。
奈津希は鑑定が発現した事で大はしゃぎし、まだ発現しない干城は「うごごっ」っと唸って悔しがったが、自分も何かの切っ掛けで発現するだろうと思い直した、奈津希は血抜きを済ませたボアの解体をすると河原に向かい始めた。
「解体の手伝い要る?」
「大丈夫よ一人でやるわ」
「そう? じゃあ昼飯作ってるわ」
「お願いね、解体終わったらアタシはスープ作るわ」
干城は昼食の準備を始めるが、何を作るか思案する。
「網があればキャンプの定番のグリルにするんだけどなぁ」
干城には何か拘りがあるのか、本場アメリカの朝から時間をかけて低温で蒸し焼きにするスタイルがバーベキュー。日本の網焼きはグリルと称していた。
「と言っても肉を焼くだけなのは芸がないよなぁ」
ラエスタで買った醤油似のラマオとラエの切り身を使おうと思い立ち、ラマオに砂糖を加えて少し煮詰め始めた。
奈津希が使っていいと置いていったブイヨンと煮干し出汁、魚の煮汁に魚の出汁は駄目だよなと、ブイヨンに煮詰めたラマオを加えて煮汁として、ラエの切り身の煮付けを作ろうとした、味見してみると、まだラマオの角が強そうなので、もう少し砂糖を加えて、弱火で熱を通し甘辛い味に仕上げた。
煮ている間に様子を見ながら、木を削って2膳の箸も作った、そうこうしている内にボアの解体を済ませた奈津希が戻ってきた。
「あらっ、いい匂いがするわね、何を作っているの?」
「ラエスタで買ったラエの切り身をラマオで煮付けにしてみた」
「ラマオで煮付けって辛くなりすぎないかしら?」
「そう思って、結構砂糖入れて甘辛くしてみた、煮汁にブイヨン使わせて貰ったよ」
「そうなのね、それじゃあ、アタシは何を作ろうかしら?魚の煮付けにあうスープねぇ」
奈津希は煮干しで出汁を取り、ナボ(カブ)の澄まし汁を作った。
「味はそれなりに出来たと思うけど、黒パンは違うかな」
「そうね、ここは米ね、箸もあるし、スープも合わせて澄まし汁にしたし」
「白ラデスの炊き方を勉強しないと今のままじゃ、主食というより、チャーハンやラザニア用の穀類だしなぁ」
味は悪くないと思ったが、和風の味を合わせるのは難しいなと思いつつ、昼食も終わり、午後は魔法の練習にした。
午後は水属性のウォーターボールと光属性のレーザーを同時発動する複合魔法、奈津希命名の「アニメの浪漫魔法」の練習をした、思ったよりもウォーターボールがレーザーを反射しない、ここをどう解決するか考える……
暫しの思考の後、水銀でウォーターボールが出来ないか? と思ったが、いやいやっ、水と水銀は別の物質だしと思いながら、水銀のイメージでウォーターボールを発動したら、表面が溶けたハンダの様になっていた。
「ええっ!嘘だろ、魔法デタラメ過ぎんか? 科学は死んだのか?」
科学死亡説は一旦置いておいて、アニメの浪漫魔法をやってみる、ウォーターボールはレーザーを反射した、今までの水球よりも遥かに効率が良く、命中精度も高まった、複数のウォーターボールを使う事で、多角的な攻撃ができる。
練習を繰り返す、速さも精度も発動速度も上がっていく、無言の無詠唱でこんな攻撃されたら相手は堪らんだろうな、全方位にシールドを張らないと何処からでも攻撃を受ける。
練習後にウォーターボールは水銀なのかと解除してみたら水だった、イメージが表面に反映されたんだろうか? 表面だけ密度が違った? 考えても分かりそうになかった。
「あら? 浪漫魔法成功したのね」
「魔法って、ちょーっと出鱈目すぎない、科学がお亡くなりになったよ?」
「言ったじゃない、固定観念は魔法の敵よ、考えるんじゃない、感じるのよ」
「……左様ですか」
苦笑するしかなかった。
この際浪漫魔法を一歩進めてTOT(多方向同時弾着)攻撃が出来ないか? と試してみる。
ひとつのレーザーにウォーターボールを3個、射線を8線として2線づつの発射角度を外から内に向かって4回発動、水銀表面ウォーターボールを的付近と中間点に24個出現させてやってみる。
どうやるかイメージを固める。
(TOTレーザー)
二つずつの発動には成功した、概ねイメージどおりだが弾着にバラつきがある、光魔法は弾速が他より速いし発動タイミングより反射位置で調整した方がいいか? まだまだ練習が必要なようだ。
「今度は何してるの?」
「うん、多方向から包み込むように同時弾着できないか試してみた」
「一方向防御しても無駄だよね、正面でも横でも後ろでも上からでも同時に弾着するから、防御はしにくいと思う、全方位でシールドを展開すれば、魔力消費を強いられるし、シールドが薄くなって貫通するだろうから、なんせ8発同時に受けるからね」
「アンタ……エグい事考えるわね。ねえ干城、空想と魔法の融合と、理屈と魔法の融合はどちらが質が悪いのかしら? って考えてしまったわ」
光魔法属性と特に相性がいい干城に対して、奈津希は聖属性と特に相性がよく、ラノベで聖女と呼ばれる様な回復魔法の使い手になっていた、それで聖属性のリフレクトを使った反射魔法も干城より奈津希が上手く使いこなしている。
練習では自分に向けて回復魔法を使っているので、実際に効果が見える発動をさせてないが、ラノベのイメージが強い奈津希は四肢欠損を回復させる事ができ、聖属性の防御やバフ魔法を使えるが、チーター二人のパーティでランクDなので、そこまで切迫した事態に陥った事がなかった、ただ、空想翼を広げたイメージに従い練習はしている。
今日の魔法の練習を止め、二人で夕食の準備を始める。
メニューはハンバーグとホワイトシチューに決まり、干城はディア、ボア、クコデューの肉を木っ端微塵斬りにして、合挽き肉にした。薄めたラマオに柑橘類で作ったポン酢風ソースとナボ(カブ)で降ろしソースにした。
奈津希がハンバーグとシチューを作り、調味料の種類も塩と砂糖と醤油似のラマオと少なく、香辛料もないので、あとひと味かなぁと言い合って夕食を終えた。
マットを敷いて毛布を掛け寝床を作る。
「野営って周りを気にせず寝れるのがいいわね」
「あ〜、木賃宿は部屋自体は男女別でも雑魚寝だからね」
「そうね、周りは誰も居ないし、ヤッちゃう?」
「……いや、ヤッちゃわないけど?」
「えっ! なんで?……据え膳に食い付かないって、まさか……アンタ独身って言ってたけど、その歳までチェリーの国のベテラン妖精だったんじゃ?」
「どどどど童貞ちゃうわ! ってか、なんだよベテラン妖精って、なんてイヤなベテランなんだ」
「そうなの? それでヤッちゃう?」
「いやいやいや、この体じゃまだ無理でしょ」
「そうかな?」
「なんでそんなにヤっちゃいたいの?」
「早いか遅いかの違いだけでしょ? ならさっさと済ませた方がよくない?」
「合理的というかドライというかアケスケすぎというか」
「間違ってはないでょ、ムッツリよりは良くない?」
「間違いかムッツリかどうかより、取り敢えず15歳くらいまでは待とうね」
「そうかな……そう? そしたら寝ましょうか」
取り敢えず今日の夜は大人しく寝る事になった、科学はお亡くなりになったが、アニメの浪漫魔法は上手くいった、色々と苦労して出た最良の結果は歳が幾つになっても嬉しいものだ、明日は何があるんだろう。




