26. 野営の練習は休暇になった 1
野営の練習に最近魔法の練習に使っている河原に来た、テントの位置は地面が削れた丸石の河原は増水の危険があるので、少し川から離れた地面が土の場所にしようとしたが、木々が生い茂っていてなかなか適当な場所がない。
暫く考えて、あれ? もしかして? と思って木をインベントリに格納してみたら、根ごと格納できた。
「干城、そこは普通木を切ってからじゃないの?」
「でも、固定観念は魔法の敵って教えてくれたの奈津希だよ?」
「そうだけどさ、そうなんだけどさ……なんかこう……」
何やら奈津希は頭を抱えて悶絶していた。
そこからサクサクと木を格納していき、20メートル四方ほどの場所を確保し、ついでに川までの木を格納して道を作って、土魔法で整地した、格納した木の枝打ちとかは後で考えよう。
「アンタやっぱり、無自覚に何かヤッちゃいました? 系よ、サラッととんでもない事するわよね」
「今はキャンプの練習を始められる事を喜ぼうよ」
その後はテントを展張して、一旦空間収納に収めて、空間収納から出した、容量を気にせずテントを展張したまま収納できるのは楽だ。
それから土魔法で煮炊き用の竈門と、作業用テーブルを作り、料理を始めた。
白ラデスを炊こうと、研いだ後に40分ほど浸水させて、20分ほど水を切り、20分ほどで炊けた。食味はボソボソしてふっくら感はなく、甘みも余り感じない。正直日本の二級米にも劣るな、それとも酒米か? と思い、このまま食べても美味しくなさそうだから焼き飯にする事にしたところで奈津希からツッコミが来た。
「アンタそれって粳米うるちまいの炊き方でしょ、異世界だから正解かは分からないけど、見た目インディカ米っぽいそのラデスも、サッと洗って湯取り法で炊いた方が良かったんじゃない? ジャポニカ種とインディカ種じゃ炊き方違うわよ。発想が自由なのか、固定観念が強いのか分からないわね」
「あっ! 言われてみれば、なんとか焼き飯にしてみる」
奈津希は干城がラデスを研ぎ始めから頃から、横で湯引きしたクコデュー(鶏)の骨、クスコ(玉葱)、ミューレ(人参)、グリエ(セロリ)など数々の野菜を使って、2時間ほどで大量のブイヨンを作っていた。
夕食は干城作の失敗焼き飯と肉野菜炒め、奈津希作ブイヨンを使ったロールキャベツとポトフのような具だくさんスープだった。
「この焼き飯パサパサすぎて口の中の水分を全部持っていかれる、シリカゲル食ったらこんな感じになるのかな?」
「シリカゲルは食べられないでしょ。野菜炒めはちゃんと出来てるから、腕が悪いわけじゃないのよね」
「ポトフおかわり、これがないと焼き飯が食えない」
「確かに男飯にしても酷いわね」
「ツラい」
「次は炊き方を変えてみたら?」
「そうします……」
食べ物を粗末にはできない、作った以上責任を持って干城はラデスと格闘していた。
「今回料理してみて思ったけど、調味料が足りないね」
「そうねぇ、料理酒が欲しいわね」
「ラデスで酒を……麹菌にアテはないな。香辛料はないのかな」
「食文化は豊かそうだし、あるとは思うけど見掛けないわね」
なんとかラデスを食い切った、苦行だった。
「折角インベントリがあるんだから、大量に料理を作っておいてストックしたいわね。そうしたら作る余裕のない時でも、サッと食事が出来るから」
「良い案と思うけど、家があるわけじゃないから、作る場所がなぁ……あ! いや、ここでやれば良いのか」
「そう言えばそうね。今料理を作ったんだし、食材はたっぷりあるし」
「じゃあ、ここで3〜4日キャンプしようか、料理作って、魔法の練習して過ごせば良くない、こっち来て日数以上に張り詰めてたし、休暇にしようか」
「休暇! 良いわね休暇、いい響きね」
それから、ラデスをインディカ種の湯取り法で炊いてみた。随分マシになったし、食えるようになったがこのまま食べるよりやはりチャーハンやピラフ、パエリアなどが向いていそうだ。そうだ、これは原種に近いんじゃないだろうか? 地球の品種改良された農作物に勝てるはずがない、科学ナメんな、はははははっ
顔がニヤけていたらしい、奈津希にドン引きされた、悲しい。
一旦ラデスを封印して、色々と料理を作ったが、調味料の種類が少ない事と、植物油がほぼ無い事で揚げ物他、作れない料理もあった。
「そう言えば奈津希、ラエスタで買ったギスタは煮干しにしたの?」
「煮干しにはしてたから、今出汁取りを試してるわ……うん、成功ね」
だいたい一緒に居るよね? いつの間にそんな事したの? と干城は考えたが、結果に気を良くした奈津希はブイヨン作りを始めた。だが、容器不足という壁に阻まれ諦めざるを得なかった、悔しそうだった。
土魔法で容器を作ったら? と言ったら、釉薬も塗ってない土器に食べ物を入れても食欲が失せる、食事が作りたいんであって、餌を作りたいんじゃないと言い返された。
今日はもう休む事にした。
辺りも暗くなりテントの中でランタンを試し、意外と明るく明るさの調整もできるようだ。
「明るくし過ぎると、外に出た時何も見えないから調整がいるね」
奈津希が外に目を向けながら疑問を口にした。
「外で焚き火はしないの? ラノベでは焚き火をするものよ」
「二人しか居ないしね、焚き火をすると火の番をしないといけないから、焚き火はなしで良いかなと思った」
「そう言われるとそうか、でも夜の警戒は?」
「魔力探知でどうかな?」
「寝ながらできるのからしら?」
「やってみないと分からないけど、今は近くに何も居ないみたいだけどね」
「まぁ…やってみるのも良いのかしら?」
「ちょっと外を見てみるか」
外は新月で真っ暗だった、目が慣れる慣れない以前の問題だった。照明弾でも打ち上げるかな? と思っていたら、何かが頭をよぎった、頭に浮かんだ言葉を無詠唱で行使した。
(テルモグラフ)
サーモグラフィーの様に熱の違いで、周囲の景色が見えた。
「奈津希、あのさ、テルモグラフって、多分光魔法でサーモグラフィーみたいに熱に反応して周りの景色が見えた」
「ええっ?」
「奈津希も試してみて」
「分かったわ」
(テルモグラフ)
奈津希にも干城と同じ様に景色が見えた
「ホントね、赤や青に薄く色がついて見えるわ」
「お! できたみたいだね」
干城はひとつ懸念がありテントに戻って検討して見る事にする。
「取り敢えず、暗闇でも見える事は見えるけど、雨の日に使えるかは分からないね」
「雨の日、どんな影響があるの? 雨で冷やされるから?」
「今なら、奈津希との間には何もないけど、雨っていう壁ができるイメージかな」
「ああ、雨で温度が下がるんじゃなくて、間の雨の温度に遮られて熱が捉えられないということね」
「そういう事なんだけど、なんせ科学と魔法のせめぎ合いがある世界だからなぁ、実際に試してみないと判らないね」
「雨の日に検証するしかないわね、今日はもう寝ましょう。」
テルモグラフは雨の日の効果が気になるが、それ以上に白ラデスの失敗が悔しかった。それでも生まれて初めてのキャンプは楽しめた、失敗もいつかは楽しい思い出になるんだろうか。明日に思いを馳せながら夜は更けてゆく。




