20. 自分達のチート考察
干城と奈津希は送りの馬車を断り、歩いて城を出た、歩きながら道中考えた、確かに自分達の要求は通した、少なくとも今後この国が自分達に干渉してくる事はない。
だが、本来自分達が要求をするべき相手は自分達の手で斬殺してしまっている、自分達は国に対して要求した。たがシルヴァノ殿下とグレカーレ宰相は国の窓口としての関係者ではあるが当事者ではない。自分達は当事者でもない者に八つ当たりをしたのではないか? そう思っていた。
そう考えながら、無意識の内に足はギルドへ向いていた。
ギルドに到着した二人はソフィアに案内され、ギルドマスターの執務室へ通された、部屋にはギルドマスターともう一人短い茶髪の中年男がいて、グランドマスターのアウダーレ・ルヴィアスだと名乗り、二人は城での遣り取りの概略と結論を話した。
ルヴィアスは笑いが止まらないという感じだった。
「やるじゃねぇか、まだ若僧の殿下は兎も角、あの宰相をヘコますとはな」
干城は渋面になりながら話す、今日の自分の対応は正しかったのか? 何かを忘れていないか? それが頭に纏わりついた。
「あれで良かったのか考え直すと殿下と宰相は関係者ではあっても当事者ではありません、当事者はあの場で私が殺しましたから、私がやった事はただの見苦しい八つ当たりです」
「お前さんの言う事は、なるほどそのとおりだ、だがな異世界からこの国に呼び出されると言う理不尽をその身に受けたのも事実だ」
「召喚された事への怒りはあります、ですがあの場でどうするべきが正解だったのか、思い直す程分からなくなります」
「過ぎた事を悔やむより掴んだ結果をどう活かすか考える方が良いだろう」
「結果ですか、正直どうでも良くはあります貴族には何も期待はしてませんし、こちらに干渉して来なければ十分です。気になっているのは、八つ当たりした事ですから」
「はっはっはっ、随分達観してるな、子供とは思えん思考だな」
「こんなナリですが中味は57歳と55歳ですよ?」
「そうだったな、実際特権で腐った爺どもより余程理性的で合理的だ、小銭を毟り取るより遥かにいい。だがな、人はお前さん達の見た目で先ずは判断する、余り心配は要らんと思うが気をつけろよ」
二人は一礼して執務室を退出する。
ギルドを後にすると時間は昼食時だった。
「結果は出たんだし、今更グズグズ考えてもしょうがないか」
「そうね、気分を変えるために、財布に優しいヤケ食いで、串焼きの食べ歩きでもしましょうか」
「乗った、昼食は街の屋台広場に行こう」
「お腹いっぱい食べるわよ」
屋台の食べ歩きで本当に動きたくないくらい食べた、結局60リギル(銅貨6枚)くらい使った、一食としては結構使ったがヤケ食いだからしょうがない。
「食べ過ぎた、動きたくない」
「アタシも」
暫くテーブルに突っ伏していた。
「午後はどうするの?」
「そうさなぁ、あ!」
「何か思いついた?」
「あのさ、前に薬草採取の依頼を受けようとして、薬草の事を知らないから諦めたでしょ」
「あ〜、あったわねぇ」
「午後は薬草の勉強しない?」
「良いわね、出来る事も広がるわ」
「ギルドに行って資料がないか聞いてみよう」
それからギルドに行き、ソフィアさんに相談すると資料室に通された、植物や薬草の本や資料を出して貰い勉強を始めた。
資料を読み始めると不思議な感覚があった、資料の薬物を覚えるというより思い出す感覚だ、奈津希も同じなのか首を捻っている。
「ねぇ干城、なんだか薬草の事を知ってる様な感じがするんだけど」
「分かる、覚えるっていうよりも、あ〜そうそうって昔を思い出す感じ」
「そう、それ、そんな感じ」
「呼ばれた世界の事なんて知る筈ないのに、なんか気持ち悪いな」
「感覚的にはもの覚えがいいとかとは違うわよね。思い出すって感覚だから、頭に詰め込まれていた知識が封印されてて、今みたいに勉強したりするのがトリガーになって解放される、みたいな?」
「なんか筋は通ってる気がする」
「でも、それだったらこれまでの事が色々と辻褄が合うのよ」
「っていうと?」
奈津希は自分の考察を話始めた。それは干城に取って納得できるものだった。
「先ず、異世界言語は今もスキルとして持ってないし、習ってもいないけど会話はできるし、字も読み書きできる。字なんて地球のどの国にもない文字なのに理解してる。それに言語を理解してるんだったらスキルは不要になるわ」
「次に、なんで剣士のスキルがあったか。それこそ城で剣士として立ち回ったから。ただ、あの時は先にスキルが突然降って湧いたような感覚で理解したから、今とは条件が違うのよね」
「魔法もあり得ないくらい簡単にポンポン覚えた。あんな簡単に魔法が覚えられるんだったら、この世界魔術士だらけよ。あと何と言っても都市伝説級のインベントリ」
「あとこの身体もそうよね。12歳にしては力も体力もあり過ぎなのよ、身体強化魔法って言っても元の体力をマルっと無視するのは流石にないと思うわ」
「最初はチートのない転生だと思ったんだけど、もしかして転生する時に神様かなにかに与えられた成長チート系かもしれないわね」
「転生した理由は違う理由を考えてたけど、奈津希の考察が色々説明するのに筋が通ってるように思える」
「転生の理由? 干城はどう考えてたの?」
干城は自分が考える推論を話す、だがどうにも自分の推論には穴があり過ぎると思っていた。
「うん、この世界が地球と同じ環境とは限らないから転生したんじゃないかと考えてた」
「環境?」
「そう、生物って動物でも植物でも水中生物でも、適者生存が大原則でしょ? つまりこの世界の環境が地球と同じで、大気成分が概ね窒素4酸素1、重力が1G、気圧の平均が1013hpaとか、他にも、まぁ色々一致してないとこの世界で地球人の身体では生存できないからかもと考えてた。言い換えれば、同じ地球でもカンブリア紀は生命が存在する惑星で、俺達が生きてた地球は人類が居住できる惑星」
「なるほどねぇ、宇宙人が地球で生きられるとは限らない理論ね」
「それだと転生した理由だけにしか当てはまらないんだよ、でも奈津希の考察なら確かに色々と辻褄が合う」
「検証しようがないだけどね」
「それはそう、でもそこは問題じゃない。それを立証して発表会を開こうって事でもない。自分達が納得できればそれで良んじゃない?」
「あと分からないのは時々変わる倫理観か」
「あ〜、それがあったわねぇ。人を大量に斬殺しても平然としてるのに、ゴブリン相手に日本基準の倫理観持った時」
「そうなんだよな〜。でも考えても分かりそうにないから、頭のスミに置いて今できる事をやるか」
「それもそうね。じゃあ薬草本を読んでしまいましょうか、時間があったら魔物本も読む? もしかしたら魔物の事も色々思い出すかもしれないわよ?」
それから二人は薬草本、植物本、魔物本など資料室にあった本や資料を読み漁った。
そのあと二人はギルドの素材査定課を訪れて、薬草や植物を採取する際の注意点や採取方法などを質問した、それぞれの査定係はその熱心さに快く応じて、色々な知識を教えてくれた。




