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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
1章 召喚と生活基盤作り
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13. 倫理のはざま

 昨日は魔法の練習もした、なら短剣や魔法を使って実際どれくらい対処が出来るのかを、依頼を受ける前に知ろうと決まり、街門が開くと二人は王都を出てアネリアの森に向かった、この北東の門は一晩お世話になったエノー橋を過ぎた所にある門だ、そこから身体強化で軽く走って王都を離れる。一旦昨日魔法を練習した場所に行き、思い付いた魔法を試してみる。


 練習を始める前に二人はステータスの確認をした。


名前 タテキ アリハラ 

年齢 12歳

職業 剣士

職業スキル

剣士 魔術士 治癒士 テイマー 商人


スキル

魔法(全属性)

無属性魔法

身体強化魔法

生活魔法


 表示はフォルダ式で、スキルの魔法をタップすると使える属性が表示され、無属性魔法と身体強化魔法と生活魔法って魔法ってつくのになんで別なんだと心中突っ込みながら、昨日光属性の相性が良さそうだったので、水属性のウォーターボールと光属性のレーザーの複合を無詠唱で試してみた。


 干城の狙いは、複数のウォーターボールでレーザーの軌道を跳弾させ、多角的に目標を狙えないか、だった。


(ウォーターボール)


 丸太の標的を置いて、6個のウォーターボールを発動しウォーターボールでレーザーを反射し軌道を変えられないか試してみる。


(レーザー)


 6個のウォーターボールを任意の位置で留めレーザーをウォーターボールで任意の方向に跳弾させられるか。


 ウォーターボールを貫通して、ウォーターボールは蒸発した。

 次はレーザーの魔力と魔法を制御して。


(レーザー)


 ダメだ、ウォーターボールの強度が足りない。

 ウォーターボールを圧縮して強度を上げて。


(レーザー)


 軌道を変える事はできたが的には当たらなかった。


 レーザーだけじゃなくてウォーターボールも魔力と魔法制御を上げないとダメみたいな気がする、両方の制御を上げて。


(レーザー)


 三つのウォーターボールを経由して的には当たったけど正直しんどい、息を止めるようなかなり集中した固定砲台状態で据物の的にしか当たる気がしない。つまり実戦としては使いものにならない、大分練習が必要なようだ、折を見て練習する事にしよう。


 そんな練習風景を見ながら奈津希が近づいてきた。

「アンタもスキね、アニメの浪漫攻撃?」

「だけど、これ使いこなせるようになったら強力と思うよ、遮蔽物に隠れてもどの方向からでも当てらるから」


「じゃあこれでも良いんじゃないの?」


 奈津希はリフレクトを使ってウインドカッターを反射させ的に当てた。


「リフレクトって自分を守る魔法じゃなった?」

「固定観念は魔法の敵よ」


 あとで知ったが魔法を自分から離れた任意の位置に展開するのはかなり難しいそうだ、苦もなくやってのける奈津希は魔法の天才か?


 取り敢えず魔法でやりたい事と課題は分かったので、今日はこのくらいにして、森の奥へ入る事にする。


 魔力探知を使ったら魔物の位置が分かった、奈津希も同じようにやって分かったらしい、まだ経験が浅い為魔物がいるのは分かるが、何なのかは分からないので近くによって確認する事にする。


「もうそろそろ見えると思うけど」

「あれじゃない?」


「あれだね、ゴブリンだね」

「魔力探知と見えてる数は一致してるわね」


「考えが纏まらない、見つかる前に一旦引こう」

「そう? 分かったわ、そうしましょ」


 魔力探知でゴブリンから距離をとった事を確認して干城は、俯き加減な姿勢でポツポツ話始めた。


「色々考え過ぎて迷った、ここまで来た目的は魔物に対処できるかだった」


 奈津希は黙って聞いていた、干城は思い出すように言葉少なく話始める。


「ゴブリンが襲ってきたんだったら、反撃してたと思う」


「ゴブリンが街道付近とかの人のテリトリーに居たんだったら……それか依頼を受けた仕事だったら攻撃してたと思う」


「でも、さっきのはどれにも当て嵌まらない」


「こっちからゴブリンのテリトリーに行って」


「こっちから襲い掛かろうとしてた」


「それって無駄な殺生じゃないかと思った」


「城で王の命令で襲い掛ってきた騎士と同じ事をしようとしてるんじゃないか? と思った」


「ホーンラビットだったら、まだ肉にして食う事ができるって目的が作れる」


「だけどゴブリンは魔石を抜いて埋めるだけだ」


「その魔石だって大して値が付くわけじゃない」


「魔石目的にわざわざ殺す理由にはならない」


「殺す為に殺しているだけだと思った」


 干城はその場に座り込んで項垂れ、考え込むような姿になり悩んでいるように、どうすればいいのか分からないといった風になった。


「これから先を考えたら、ここで経験を積んでおく必要があるって理屈は分かる」


「城で大勢殺した、それは自分達の身を守る為だったって言える」


「だけど、さっきのは?」


「どうしたら良いのか分からなくなった」


「ひとつだけ分かってるのは、狩と称して殺しを愉しみたい訳じゃない」


「俺はどうしたら良いと思う?」


「それはアタシも答えを持ってないわ、だって干城が言った事も間違いじゃないって分かるから」

「間違いじゃないけど、正解でもないって事?」


 奈津希は両手を胸の前で振りながら、諭すように話始めた。


「そうじゃなくて、干城が言った事って倫理観の問題でしょ? 倫理じゃなくて倫理観よ、数学みたいに一つの正解はないけど、答えは人それぞれで、人の数だけ答えがあるって事じゃないの?」


「ああ、そういう事か、確かに、この世界にはこの世界の倫理や価値観がある、日本の倫理や価値観と同じじゃないし、通じる訳もない」


「そうね、しかも日本とは国が違うどころか、世界そのものが違う、道徳も倫理も社会通念も何もかも根本から違う」


「だからと言ってアタシ達がその日本の道徳や倫理を捨てる理由も必要もない、アタシ達が自ら進んで亡命者としてこの世界に来といて、日本の倫理や習慣をこの世界に押し付けるんだったら、アタシ達はこの世界に異物を押し付ける迷惑な侵略者よ」


「けどアタシ達はこの世界にアポなしの召喚という方法で拉致られたのよ。それでもアタシ達は自身自分の価値観を大事にしようとは思っても、それをこの世界に押し付けようとは思もっていない」


「そうか、そのとおりだね、少し気が楽になったよ」

「そう? でもこれはアタシの主観で正解とは言えないわよ?」


「意地悪い事聞くけど、さっき攻撃を仕掛けたら奈津希も攻撃してた?」

「してたわよ」

 あっけらかんとそう言った。


「そこで躊躇らったりしない?」

「しないわね」


「割り切ってるね」

「ん〜……そうとも言えるけど、そこはアタシと干城の倫理観っていう主観の違いじゃないかしら?」

「って言うと?」


奈津希は手をおとがいに当て少し考え込むようにして、自分の考え方を話始めた。


「つまり、自分達の倫理をこの世界のどこまで適用させるかの違い? アタシは魔物にまで適用しようとは思わないのよ、といって干城の主観を否定するつもりもないのよ」

「分かるような、分からんような」


「つまり、ゴブリンってラノベ的に繁殖力が強いでしょ、その繁殖力が強いのを放っていたら大繁殖するかも知れない、けど乱獲するとゴブリンを餌にしてる他の魔物が餌不足で人里に来るかも知れない、未来がどっちかは分からない、なら分かってる繁殖を抑える方をアタシは選ぶかな、放っておいても良くはならないって事は分かってるんだからね」




 干城は以外と現実主義なんだなと思った、それと同時に奈津希の言ったとおり、どこまで自分達の倫理を当てはめるか、その線引きは明確に基準を作るべきだろうとも考えた。





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