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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
1章 召喚と生活基盤作り
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11. ライフワークとライセンス

 この話から三人称一元視点で書いていくよう頑張ります。これまで漫画本的なイメージで、人称という認識もありませんでした。


 どうも私は主人公の目になれそうもありませんでした。私になれるのは主人公の専属カメラマンみたいです。


 朝六時頃に木賃宿を出て、食事処で朝食を摂る。人が減り始めた6時半頃にギルドで依頼を受け、昼食を挟んで、午後は溝掃除の依頼を2件こなした。夕食を食べて風呂屋に行き、木賃宿で眠る。


 報酬は割り増しで貰えたため、当初懸念していたよりも稼げた。貯金も10レラ(銀貨1枚)少々はできただろうか。そんな5日目の仕事終わり、ソフィアさんに呼び止められた。


「お二人とも昇級条件を満たしましたので、ランクEにギルドカードを更新しますね」

「そうか、1日6ポイントなら5日で30ポイントか」

「意外とあっさりランクFが終わったわね」


「そうですね。普通はひと月前後かかるのですが……」

「ああ、昇級条件の30ポイントってそういう意味合いだったのか。毎日依頼を一つこなして、ひと月で昇級できれば普通。自分たちは前世の知識と魔法が使えた分だけ有利だったとはいえ、これは少し異常だったらしい」


 その言葉になぜかソフィアさんは苦笑していた。


「ソフィアさん、お願いします。カードです」

「ソフィアさん、お願いします」

「はい、お預かりします」


 更新手続きはすぐに終わった。


「はい、更新手続きが終わりました。……お二人とも、職業を設定されていませんね。職業を設定されますか?」

「職業?」

「そう言えば、ステータスに『職業 剣士』で職業スキルってあったわね」

「そう言えば……」


 ソフィアはニッコリと微笑んだ。

「あちらの談話室で、職業についてお話ししましょうか」

 どうやら、常識相談役による講義が始まるようだ。


 談話室へ移動し、ソフィアが説明を始める。

「ステータスとギルドカードの職業についてですが、これらは混同しないよう、ステータスの職業を『ライフワーク』、ギルドカードの職業を『ライセンス』と呼び分けます」


「ステータスの職業スキルは、本人の資質や努力で発現するものです。たとえば、農家に生まれた子供の仮職業が『村人』だとして、家の手伝いをしているうちに農作業を覚え、やがて『農夫』の職業を得る、といった感じですね。この仮職業は、新しい職業スキルが発現すると自動で更新されます」


(じゃあ、俺と奈津希に『剣士』の職業スキルがあるのは、あの城で暴れたからか?……いや、でもあの時は、暴れる前に急に剣の使い方が分かった。むしろ、剣士の職業スキルがどこからか降って湧いたような感覚だったぞ)


 疑問を解消するべく、干城は尋ねた。

「その、職業スキルが発現する時って、何か自覚症状のようなものはあるんでしょうか? 急に理屈を理解する、といったような……」

「そういったことはありませんね。学び、体験して理解を深めることで発現すると言われています。ですから、どちらかというとタテキさんの言ったこととは逆になりますね」


「逆?」

「ええ。スキルが発現したから理解できるのではなく、理解できたからスキルが発現する、というのが一般的な通説です」


(確かに、筋としてはそちらが正しそうだ。なら、あの時のあれは何だったんだ? なぜあの場で、都合よく職業スキルが発現した?……だが、もし発現していなければ、あの場で死んでいたか、隷属させられていた。何者かの意思でも介在しているのか? 分からん、判断できる材料が少なすぎる) 


「そういう事なら、家で農夫の職業スキルを得た後に街に出て大工の見習いをして、大工の職業スキルを得たりするのかしら?」

「職業スキルは簡単に発現するものではありませんが、理屈としてはそうです。職業スキルは複数得る事ができます、ただライフワークとして設定できるのはひとつです」


(ライフワークとして設定? ステータスに設定することで、その職業の特性が能力値に反映される仕組みだろうか?)


「ライフワークとして設定した職業は、何か能力的な反映がされるんでしょうか?」

「特にそういう事はありません。多少手際が良くなるとか、素材の目利きが良くなるとも言われていますが、それは職業スキルを発現させるだけの理解をした結果と言われています」


(そうか! この世界のステータスボードには『筋力』や『敏捷』といったパラメータがない。だから住人たちもパラメータという概念自体がなく、スキルによるシステム的な底上げに気づいていないんだ。ゲーム的な認識がないからこそ、本人の努力や慣れの範疇だと思われているわけか)


「そう言えば、アタシ達魔法が使えるわ、ライフワークは剣士なのに、関係ないのかしら?」

「魔法が? そうなのですか、でしたら魔術士の職業をお持ちじゃないですか? ライフワークに設定しなくても、職業スキルがあれば、その職業のスキルは使えますから」


(つまり、こういうことか。ライフワークに設定した職業は本人のパラメータを底上げする恩恵がある。けれど、職業をそれ一本に固定するわけじゃない。ライフワークに設定していない職業はパラメータの底上げこそないものの、所持している職業スキル自体は問題なく使える、と)


「他に何か質問はございますか?」

「今は思いつきません」


「それでは次に、ギルドカードの職業についてお話しします。ギルドカードに記載される職業は、ステータスの職業を参照して、フリーランサーとして何ができるかを示すものです」


「それって何か意味があるんですか?」

「パーティを組む時や、臨時で共同戦線を張る際などの確認に使います。ライフワークと一致している必要はありませんが、受付の者がステータスを確認してカードに入力しますので、実力の裏付けとして高い信用になるのです」


(ああ、そういう使い方か。確かに職業の証明にはなるけれど、実際の戦闘力がどれほどかは未知数ってことだな。そもそも、奈津希以外とパーティを組んでも面倒なことになりそうだし、俺たちにとってはそこまで重要じゃない情報かもしれないな)


「分かりました、ステータスを確認します」


名前 タテキ・アリハラ

年齢 12歳

職業 剣士

職業スキル

剣士 魔術士 治癒士 テイマー 商人


スキル

魔術(全属性)

身体強化魔法

生活魔法


「なんか色々増えてる……」

「本当ね。ステータスはたまに確認した方が良いのかしら?」

「お二人とも多才ですね。剣士と魔術士の職業をお持ちでしたら、魔法剣士を設定する事もできますよ」


 ソフィアさんの一言に、奈津希がパッと表情を輝かせた。

「魔法剣士ですって! 良いわね、まさにラノベの夢ね!」


 干城は苦笑を浮かべながら、ソフィアに向き直った。


「ソフィアさん、そういうことらしいので、カードの職業設定は『魔法剣士』でお願いします」

「承知しました。後から変更(コンバート)する際もお気軽にお申し付けくださいね」


 新しく発行されたEランクのギルドカード。そこには確かに『魔法剣士』と刻まれている。隣を見れば、奈津希がカードを両手で大事そうに持ち、「んふふ〜……」と、だらしなく口元を緩めていた。


 それほど嬉しいのだろう。俺たちはそのままギルドの飲食コーナーへ移動し、木製の丸椅子に腰を下ろす。


 これからの活動方針について、現実的な話し合いを始める。


「外に出るとなると武器や防具が必要になるね。多少貯金は出来たけど、物入りになりそうだ」

「そうね」


 奈津希はカードをようやく懐に収めると、小さく息を吐いた。


「武器も防具もメンテナンスが必要だろうから、暫くは報酬が増えても、差し引きしたらランクFの収入と変わらないかもしれないわね」


「まあ、俺たちは魔法が使えるだけ恵まれてるかも知れない。初期投資が少なくて済むしね」

「そうね。贅沢言い出したらキリがないわね」


「ひとまず、短剣と解体用のナイフだけは買っておこうか。防具まではさすがに無理だね」

「そうね、今買えるのはそんなものでしょうね。ないものはないんだからね」


 フリーランス街の武器屋[ログナー武具工房店]で、実用本位の短剣と解体用ナイフを選んだ。支払いは5レラ(白銅貨5枚)これで貯金の半分ほどの出費になるが、命に関わる必要な投資だ。


 仕方のない出費だと自分に言い聞かせ、俺たちは夕食をたべに食事処へと向かった。湯気の立ちのぼるニスニラのスープに黒パンを浸していたら、奈津希が不意にこちらを覗き込んできた。


「ねえ干城。明日は仕事を休みにして、外の森へ行かない?」

「なんでまた?」


 急な提案に、俺は食事の手を止める。


「だってアタシ達、こっちに拉致られて王都の外に出た事ないじゃない。先ずは外がどんな所か見てみましょうよ」

「うーん。それだけだと理由としてちょっと弱くないか? 危険を冒すわけだし」


 奈津希はいたずらっぽく笑って声を潜めた。


「外で、魔法の練習をするのよ。街の中や訓練所じゃ、ちょっとやり難いでしょ?」

「……なるほど、そういう目的か。分かった、そうしようか」


 その後、1日の汗と汚れを風呂屋でさっぱりと流す。夜はいつも通り、木賃宿の床に毛布を引いて身を横たえた。漸く王都の外に出られるようになった、少しづつだが自由に動けるようになっていっている、そう考えながら眠りに落ちた。














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