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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
1章 召喚と生活基盤作り
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8. お金と相場の話

 ソフィアさんの説明を一通り聞いた頃には、依頼を受けても達成できる時間じゃないと思い、この際通貨価値や物価、平均的な収入を聞いてみる事にした、無一文の身だが何も知らずに突っ走るより情報が必要だと考えた。


「引っ張って申し訳ないですけど、通貨単位や物価を教えてもらって良いですか?」

「勿論いいですよ、お金は大事ですし、その為に働くんですから、ですがお茶を準備して良いですか?」


「そうね、ソフィアさんも常識知らずのアタシ達に懇切丁寧に喋りっ放しですもんね」

「お二人の分も準備しますよ、少し待って下さいね」


「ソフィアさんありがとうございます、すみません」

ふぅ〜っと溜め息のように息を吐きながら、ソファに深く座り全くゼロから生活基盤を作っていくって大変だなと思った。


「色々大変そうだけど、生きる為には頑張らないとね」

「ほんと、それ」


 とか言っていたらソフィアさんが紅茶を用意して部屋に入ってきて、お茶を差し出した、一口お茶を飲んで、あぁ〜って言いたい気分だった。


 ソフィアさんも一口お茶飲んで、テーブルに硬貨を並べ始めた、十進数らしく小銅貨10枚で銅貨1枚、以降10枚おきに白銅貨、銀貨、金貨となり、更に大金貨、白金貨らしいが大金貨と白金貨はまず市井では見ないという事だ。


 小銅貨と銅貨の単位はリギル、白銅貨からの単位はレラで、白銅貨1枚銅貨2枚小銅貨3枚なら1レラ23リギルだ。相場としては風呂屋2リギル、串焼き3リギル、黒パン4リギル、エール1杯5リギル、ニスニラ8リギル(食事処の黒パンと野菜スープのセットで、平民の安い定番飯らしい)木賃宿10リギル、ギルド周辺の宿一人部屋素泊り20リギル、朝食付き30リギル、二人部屋32リギル、朝食二人分付き52リギル、平民が働き始めた初任給は28レラくらいが相場になる。


 金額の表現は数字でレラを使うが、白銅貨何枚と銅貨何枚とか言う事もあるらしい事と、風呂屋の風呂上がりは平民の社交場なんだとか。


 さて、物価と金銭感覚の擦り合わせだが、単純に小銅貨1枚の1リギルを1円と考えると、串焼き3円は安すぎるし、市井に出回る金貨は1万円、最大硬貨の白金貨は100万円になる。日本の経済規模での最高額紙幣でも1万円だ。それはそれでこの国の物価から考えてハイパーインフレ国の桁になるだろう? と思えて物価と金額のバランスがどうもシックリこない。


 奈津希がふと言った「なんとなくだけどリギルは銭で、レラは円、と考えて物価は大正時代くらいじゃないの?」


 そうなのか? その時代警察官の初任給が27円くらいだったか? 物価は釣り合うか? そうすると金貨は100円で、27円だと27レラか。風呂屋は2銭、串焼きは3銭、リスニラは8銭か。


「相場は吊り合いそうだけど正直円と銭とか、大正時代の物価換算とか面倒臭いな」

「円換算するから面倒臭いのよ、この世界を日本と比較するだけ無駄よ、この国の単位と相場に慣れるしかないわよ、生きてるうちは」

「そうか? でも比較してもしょうがないと言われればそうか」


「ソフィアさん、F依頼で報酬ってどのくらいですか?」


「F依頼は20から80リギルくらいで、報酬は50リギルが多いです」


 1日一人分の最低必要な生活費は? 3食ニスニラで24リギル、木賃宿で10リギル、風呂に入って2リギルで合計36リギル、最低報酬の依頼じゃ話にならん、平均報酬の依頼をひとつこなせば食っては行けるけど、正直カツカツだ。


「1か月は何日ですか?」

「1か月は30日です」


 それだと50リギルの30日で1500リギルは15レラか、これ再任用よりキツくないか? 平均初任給くらい稼ごうと思ったら1日二つは依頼をこなさないといけない、結構キツそうだな、労働基準法も労基もない世界じゃこんなもんか、日本の常識を持ち出しても無意味だ。


 窓の外を見ると陽の傾きは夕方くらいか? これ以上ソフィアさんを拘束するのも気が引ける、そろそろ御暇しょう。


 ソフィアさんにお礼を言ってギルドをあとにする。


 現状無一文な状態は変わらないので、選択肢はないに等しい。


「奈津希、今夜どうしようか、エノー橋の下で夜露を凌ぐしか思い付つかない」

「そうよねぇ、選択肢なんかないもんね。そうするしかないかぁ」


「さっきギルドで王都の地図を見たらルートは二つ、近いのは街の中を通るルート、近いし本来安全なルートだけど、屋台広場の前を歩くから、暴力的な匂いがある意味危険なルート」


「もうひとつは、街外れを遠回りするルート、こっちは破落戸が危険」

「そんなの選択肢がない様なものじゃないの。いい匂いにつられて、うっかり物欲しそうな顔して他人様に迷惑かけるくらいなら、破落戸投げていた方がマシよ」


「魔法で飲み水は出せるんだから、水があれば1日2日じゃ死なないわ、まだ極限状態じゃないんだから」

「だよね、物乞いするくらいなら街を出て森にでも行ってるか。そしたら遠回りルートで行こか」


 物陰などに破落戸を警戒しながら足早に歩き、暗くなる前にはエノー橋の下に到着できた、破落戸に合う事はなかったので、昼の破落戸を引き渡す時にロイドさんが、この付近の情報を伝えてたから、警備隊の巡回が強化されたんだろうか?


「あ〜、子供の足だからそこそこ歩いた気がするけど、肩も腰も全然疲れてないわ。転生して新しい身体になったのねって実感が湧くわ」

「分かる、串肉ご馳走になった時、味も良かったけど肉が少し硬いなって思ってたら、歯に触らないから歯と歯茎が健康になってるって気付いた」

「言われてみれば確かに!」


 干城は奈津希を促すように土手に座り、辺りを見回しながら今日ギルドで知った内容を思い出すように話を始める。


「それで、平均報酬をひとつこなせば食っては行けるけど、正直カツカツだったね」

「そうねぇ。平均報酬の仕事をひと月休みなく働いて、二つこなしてやっと平均初任給くらいだったものね」


「結構キツいね」

「ん〜、でも魔法も使えるし、達成ポイントそんなに高くないし、達成率は5割で良いんだから、案外早めに昇級できるんじゃないかしら? 昇級したら多少は実入りも良くなるだろうし、この身体ならなんとかなりそうな気がするのよね」


「あ〜、そう言われればそうか、F依頼固定で考えてた」


 二人は土手に座っていた姿勢から、寝転がって話をする。


「そう言えばさ、荒鷲の人達ってランクBパーティの冒険者って言ってたね」

「そうね、あの時は冒険者が普通と思ってたけど、フリーランサーの話を聞いた後だと凄い人達だったのねって分かったわ」


「無知って怖いね」

「しょうがないわ、今朝異国どころか異世界に拉致されたんだもの、これから勉強しましょう」


「そうだね、本来自分が生きる世界じゃなくても、この世界で何かを成し遂げようと思わなくても、生きてる以上食わなきゃならない、食う為には働かなきゃいけない」

「そうね、今日はもう寝ましょう」


「そうしよう、今は無駄に体力を消耗する必要もないし、おやすみ」

 奈津希は明るい声で言った。

「おやすみなさい、寒くなくて良かったわね」


 言われてみればそうだ、真冬じゃなくて良かった、先行きは不安だが、兎に角やるしかない、今は寒くなくて良かった、少しでも前向きな気分になろう。


 










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