7. フリーランスギルド 2
「あと、ギルドの昇級の仕組みとして、フリーランサーはランクBになりますと、ギルドに500レラ(金貨5枚)を納めて冒険者の資格を得られます」
「冒険者になりますと、国ではなくフリーランスギルド所属の自由人として、フリーランスギルドの支部がある国はどこでも移動でき、引退する際は、希望する国の国籍を得られます」
(そうなのか!異世界だから冒険者が当たり前と思ってたけど、荒鷲のパーティって凄い人達だったんだな、何か失礼な事を言ってしないかな?)
「他にご質問はございませんか?」
「ギルドって、なんでこんな街の端っこ、正門のすぐ横なんて不便な場所にあるんですか? 中央広場とかにドーンと構えるもんじゃないんです」
「タテキさん、もし自分の家の前を、血まみれの魔物の生首を担いだ男たちが毎日ぞろぞろ歩いてたら如何に思います?」
「それは嫌ですね。臭そうですし」
「そうですね、臭いし見栄えも良くありません、昔は、ギルドも街の中心にあったそうです。当時は『街の何でも屋』でしたから。ですが、魔物討伐がメイン業務になっていき苦情が来るようになったそうです、街中に腐臭と獣臭を撒き散らすなと。結果として、街門のそばに立地するようになりました。素材を運び込む効率的な場所として」
「あ、なるほど……」
「それに、訓練場の騒音もあります、昼だけでなく夜になっても鍛錬する人はいます、それから、解体場からの臓物や洗浄水の排水なども臭いの原因になりますし、素材や肉を保管する倉庫も必要になります、そういった施設も含めますと、用地は広い場所を確保する必要があり、街の中より街の外側がの方が用地確保に都合が良いとなります、そういった理由ですね」
(なるほどな、工場地帯に隣接して住宅地を分譲する訳もないし、住宅地の真ん中に火葬場がある訳もない)
「ギルドは依頼者からの依頼で成り立ってますので、依頼受付け業務は事務所を街の中の警備隊の駐屯所のすぐ隣にあります」
「依頼者の利便性を考えて、街の中に事務所を置いてるんですね」
「依頼者の利便性もそうですが、粗野なフリーランサーと依頼者がトラブルにならない為の対策でもあります、駐屯所の隣なのも、依頼者保護の観点があります」
(なるほどね盗賊半歩手前な脳筋で野蛮人のフリーランサーもゴマンと居るって事なのね)
「貴族用の窓口はさらに別になっていて、ギルドの教育を受け、試験に合格した者しか受付けには配置されません、これはマナーや言葉遣いだけではありません」
「貴族には無理難題な依頼をする人もいますので、依頼と報酬のバランスや妥当性を判断し、無茶な依頼は断る話術も必要になります」
(フロントオフィスとアフターオフィスの役割分担か、確かにその方が現場は混乱しないな、混乱しないだけで、それぞれの面倒が無くなる訳じゃないが)
「受付け事務所で18時までに集まった依頼書を、18時半に『護衛付き』の馬車でこのギルドまで運んで来ます。それからランク仕分けをして、翌朝ボードに貼り出します。即日の緊急依頼はギルドで直接受領します」
(急ぎならフリーランサーにビビってたり、臭いの五月蝿いの文句言うなって事ね、世の中決まった通りをショートカットするなら、リスクなりペナルティなり無理を通すなら覚悟しないといけないわよね)
「この王都だけではないですが、ギルド周辺はフリーランサーを顧客に絞った『フリーランサー街』ともいう形になっています、宿も、治療院も、鍛冶屋も、酒場も、客層をフリーランサーだけに絞ってるから、街の人とは棲み分けができてます。店で働いてるのも、引退した元フリーランサーとかで。フリーランサー街の屋台広場などは、現役時代に身体壊したフリーランサーなどです」
「棲み分けができてるって言っても、街の中の店を使うなという強制力はありません、街の店だって、フリーランサーが落とすお金は欲しいでしょう。ですので高ランクフリーランサーは積極的に街の中にある、店や宿などを使っています」
(なんだか色々と柵がありそうな感じだな)
「一番棲み分けられているのは冒険者かフリーランサーですね、冒険者も出世した自分達を見せ付けているように感じて、このフリーランサー街の店は遠慮して余り利用しません。フリーランサー街はフリーランサーを支える街なんですよ」
(それはセーフティネットなのか、それとも冒険者になれなかった平凡なフリーランサーの末路というべきなのか)
「最後に、フリーランサー街とは正式に区画されているわけではありませんが、ギルドとしては概ねフリーランサー街と認識されている範囲から街へ出る際は、武器は鞘に収めるか、ギルドに預けて行くよう指導しています」
そりゃそうだ、抜き身のバスターソードや斧を持ち歩いていたら、住民もたまったもんじゃないだろうし、妥当な判断じゃないだろうか? というかそんな当たり前の事を指導しないといけないのか、自分達との常識の違いを噛み締めていた。




