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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
3章 冒険者
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95. セーフティエリアでの交流

 干城と奈津希は11階層で転移魔法陣の登録を済ませた。時計も太陽も見えないダンジョン内では今の時刻すら分からない。「今日はここまで」と足を進めたセーフティエリアには、すでに5つのテントが張られ、3パーティ14人の先客がいた。


 ふたり組の天使のような可愛らしい子供が現れたことに、ぎょっとした顔を向けてくる者もいる。その中のひとり、魔術士らしい女性が声をかけてきた。


「あなたたち、ここにいるってことはランクCなんでしょうけど……二人パーティなの?」

「はい、そうです。ダンジョンがあると聞いたので来てみました」


「来てみましたって、テントも食料も持ってないじゃない」

「大丈夫ですよ、準備はしてありますから」


 そう言って干城が空間収納からあらかじめ展張したテント、テーブル、椅子を取り出すと、奈津希が手際よくテーブルへ紅茶とバタークッキーを並べた。


「……空間収納が使えるのね。それならどこかに雇われた方が、安全に稼げるんじゃないの?」

「あ〜、前にいましたね、そんな商人。月に金貨たった2枚で雇うとか言い出したので断りましたけど」


「月に金貨2枚を断ったの!? というか、たった金貨2枚!?」

「ええ。フリーランサーの方が稼げますし、何より自由ですからね」


 会話を聞いていた周囲の冒険者たちは絶句しているようだった。そんな中、20代半ばほどに見える男がひとり、声をかけてくる。


「なあ坊主、俺は『白銀の翼』のロドリエってんだが……坊主たちは何てパーティで、どこから来たんだ?」

「私たちは『デバステーター』というパーティで、ログマイヤから来ました。私は干城で、こちらは奈津希と言います。二人とも13歳です」


「……王都のデバステーター、タテキとナツキ……?」


 奥の方にいた男が、ぽつりと呟いた。最近よく噂を聞くふたり組——確か冒険者になったはずでは、という言葉が聞こえた瞬間、セーフティエリアにいたフリーランサーたちの視線が一斉にその男へ、そして自分たちへと注がれた。


 魔術士らしい女性は訳が分からないという風だった。


「貴方たち冒険者なの? 13歳? 二人パーティで?」


 先ほどのロドリエさんが手を大きく振りながら待ったを掛ける。


「待て待て待て。13歳ってことは1年で冒険者になったのか? あり得るのか? いや、目の前に居るんだよな」

「いえ、正確には1年ではないと思いますよ。起算日の会費を払ったらギルドマスターに冒険者を選ぶかって聞かれましたから、それで冒険者を選びました」

「大して変わんねーよ。その前に選考されたってことじゃねーか」


 それから新たにテーブルと椅子を空間収納から出して、奈津希は紅茶とバタークッキーやメレンゲクッキーを全員に行き渡るように用意し、それぞれ「白銀の翼」「月夜の雲」「聖なる一撃」というパーティ名に奈津希は「なんてラノベらしいパーティ名」と呟き目を輝かせていた。破壊者なんてパーティ名にしてすみませんでしたと心で奈津希に謝った。


 魔術士らしい女性はローゼリアさんという名で、何をどうやったらそんなに早く昇級できるのか聞かれたので、F依頼は一人で溝掃除を主に行い、E依頼は荷運びを捌き、DとC依頼は結構ソロで依頼を捌いたので達成ポイントが早く溜まったことと、身体強化を使って移動時間を短縮したことを話した。


 確かに理屈では達成ポイントは早く貯まるが失敗のリスクが大きすぎる、そもそも身体強化で何時間も移動できない。全員から参考にならないと言われた。


(正直に話したが参考にならないか、そりゃそうだよな俺だってチートがなきゃ土台無理な話だからな。なんか参考になりそうなネタないかな)


 干城はしばらく考えていると、奈津希が空間収納の修行の話をしたらどうかというので、使えるかなと思いながら羊皮紙にラッパのようなブラックホールの概念図を転写してみたら出来たので、全員に図を見せながら特異点に物を吸い込ませるイメージを説明しながら空間収納の練習をしたら、各パーティに容量は疎らだが空間収納を習得できた者が二人ずつは出た。体積は小さくても重量があるというものもある、空間収納が使えるようになったことにとても感謝された。


 干城自身この結果は意外だった、職業スキルがまるで関係ないのだ。この世界は大なり小なり誰でも魔力を持っている容量に関しては魔力量に左右されるのかもと推察できるが、ブラックホールの概念図を見せた説明でこんな結果になるものなのか? 


 空間収納使い自体はそれなりの数がいて、軍や商人に囲われて市井で見かけないってだけだ。もしかして闇属性って誰でも親和性があって、イメージを構築できるか否かの話なのか?


 図は転写数を増やして各パーティに配り、今日は習得できなかった人も引き続き練習してみるということになった。多分誰もパーティメンバー以外には共有しないだろう、優位性を失うことは誰もしない。


 普段魔力を余り消費しない近接職の人も空間収納の練習で魔力を消費してるので、奈津希が全員にカレーとカボチャスープ、それにミルクを振る舞った。大好評で女性も含め全員お代わりした、辛さは最初標準と決めた辛さで、お代わりで辛さのリクエストを聞いてカレーの辛さを変えていた。干城も辛口とカボチャスープのお代わりをしていた。


 好評さに奈津希はニコニコと満足しカレーは南のトレクエニグ地方で食べられていて、そこで手に入る香辛料の組み合わせであることや、空間収納から香辛料を取り出してカレー粉の基本となる香辛料は、ターメリック(色づけ)、コリアンダー(土台・香り)、クミン(香り)、レッドペッパー(辛味)の4種類が基本であること、その他にも香辛料を加えて味を変えることなどを説明していた。普段あまり他のフリーランサーと関わることがないので、干城は嬉しそうな奈津希にほっこりしていた。


 他に白ラデスと赤ラデスも産地でこちらより安く手にはいるが、トレクエニグ地方が遠いの少し高めでもこちらで手に入れた方が良さそうな事。ついでに干城が赤ラデスなしで白ラデスを炊き、パサパサの白ラデスにした失敗談まで暴露した。シリカゲルのように口の中の水分を持っていく白ラデスを思い出し干城の肩はプルプル震えていた。腹もくちくなり今日はお開きになった。


 翌朝かどうかはダンジョンなので分からないが、全員目を覚ましたところで、奈津希が朝食を準備していた。空間収納にしまっていた竈門を使って、焼いたアジの開きのような干物、ハムエッグ、酢漬けの野菜、白ラデスとアラの潮汁だった。干城は美味そうだと思いながら、潜った翌朝なら時間経過する空間収納でも誤魔化せる絶妙なライナップだ、流石奈津希と思った。


 他のパーティにも好評だったが、ダンジョンでこんな美味いものを食べると、あとの落差が怖いと漏らしていた。奈津希は「ダンジョン飯テロはラノベの定番よ」と言っていた。干城は他のパーティのメンバーに対して、奈津希に餌付けされた気の毒さと申し訳なさをひしひしと感じ始めていた。


 セーフティエリアを全員一緒に出発する、途中までは一緒だ、途中までなのはマッピングするからだ。ギルドでマップを買えば済むことをわざわざ自分の足でやることに呆れられたり、面白がられたりした。


「またセーフティエリアでご一緒したらよろしくお願いします」


 そう言って正解ルートから外れてマッピングするために外れルートに向かって歩みを進めた。外れルートに入って小走り(当社比)で進み出す。1階層あたり30分程のペースで攻略していく。頭の中に描いていくマップがどんどん更新されるのは、なかなか楽しいものだ。


 この階層からはオークが出現するんだった。筋肉質と言うべきか、太った人間の身体と言うべきか、二足歩行で浅黒い肌に短く茶色い体毛が生え頭は豚。これがオークか。豚の蹄ではなく足も手も四本の指があり手には棍棒を持っている。


「奈津希、ラノベではあれは食うと美味い部類なんだよね」

「ラノベではそれが鉄板ね。でも初めて食べる時はオークと知らずに食べたいわね」


 禿しく同意するところだ、二足歩行の上にあの見た目では自分で解体して食おうという気になれない。日本人が蛸、烏賊、海鼠を刺身で美味そうに食うのを、信じられない目で見る外国人はこんな気持ちなんだろか? あれはあれで、最初に食った人は大した度胸なのかも知れないが、今はともかく討伐しよう。


『(フォルティアミグオン)』


 オークのすぐ横に出現した魔法陣からマイクロ波が放出されて、解体して食肉にする気がない干城はオークを3体を体内発火するように焼き払った。



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