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50代召喚(前世の記憶の亡霊が生きた道)  作者: くまじ
3章 冒険者
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94. ベステノーアの街からダンジョンへ

 ギルドでの情報収集も終わり……いや、終わってなかった。フィロメナさんに宿屋情報を聞き、冒険者が利用するならと勧められたのが[泉の妖精]という宿屋だった二人部屋で夕、朝食付き一泊1レラ50リギル(白銅貨1枚銅貨5枚)だった。確かにフリーランサーが使うには少し高めかなと思ったが、観光地価格でもない絶妙な塩梅だ。ともかくチェックインして部屋を確保する。


 街に居るときは宿を利用するようにしている。バーチャルエリアを利用すると、何か連絡があるときに行方不明になるので、跡づけの意味でもある。


 明日は早速ダンジョンに潜ってみようと奈津希と話すが、奈津希は今すぐにでもダンジョンに行きたそうにしている。料理は奈津希が二人で三食ふた月は保つくらいストックをインベントリに格納しているというから、じっくりダンジョン攻略ができそうだ。取り敢えず11階層まではマッピングが主目的になりそうだ、なるべく早く済まそう。


 時間はまだ昼過ぎだ、街を見て回ろうと宿を出て街に向かった、フリーランス区画は後回しで良いだろう。街のハイペリオン湖寄りの東側へ向かうと砦のような小城があった、領主の居城なのだろう。そこから湖側に進むと小さめの街門があり、街の外に出ると市場があった、市場には屋台広場も隣接していて市場で買った食材を有料で調理してくれる屋台もあった。湖には水揚げする船着き場もあり、サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフを思い出した、確かアメリカイチョウガニが名物で、酸味のあるパンをくり抜いて容器にしたクラムチャウダーが美味しかった。あとはアルカトラズ刑務所とアシカだったかな。


「奈津希、ここで何か食べていこうか」

「ええ、そうね。市場で買った食材を調理してくれる屋台にチャレンジしたいわ。なんだかフィッシャーマンズワーフみたいなところね」

「同じことを考えてたよ、雰囲気っていうかロケーションが似てるっていうか」


 市場に戻り奈津希はロブスターのような海老を買い干城は桜エビのような小エビを小さなザルひとつ分買って屋台に持ち込んだ。奈津希の海老は半身に切ってチーズとソースで味付けして焼いたロブスターの料理のイメージと同じもので、干城の小エビは素揚げして塩を振ったものだった。他にスープや黒パンを買って食事を始めた。干城はこれビールが欲しくなる塩気と味だ、と喉と胃袋を刺激された。小エビだけでは足りずに串肉を買って更にビールが欲しくなるという悪循環になってチョイスを失敗したと後悔していた。


 食事を済ませ二人は街歩きを再開し商店街を通りがかった。賑やかな喧騒と活気がある街には警備兵が四人一組で巡回しているのをぼちぼち見かけた、治安が悪そうな街には見えないが、もしかしたらフリーランサー対策なのか? と思った。奈津希は布屋を見つけ結構な量の布を買っていた。街を見て回り買い物をして夕方頃宿に戻った。


 夕食は魚介にローストビーフのように薄く切った肉料理、サラダと貝のスープなど、料理は美味しかった。奈津希と二人で再現できないか味付けについて話し合ったり、知らない味の酢が使われてる? などと食事を楽しんだ。部屋に浴室もあるが風呂はバーチャルエリアの風呂を使い、ダンジョンについて話し合った後就寝した。翌日朝食を済ませてチェックアウトして宿をあとにし足取りも軽やかにダンジョンに向かう。


 西門からダンジョンへは一本道というわけではないが、グローブスフィアで道順は確認してるので間違うことはなく無事にダンジョンに辿り着けた、街から乗合馬車で一日半、60キロメートルほどの距離だ、飛行魔法のスピードを落として、人に見られない場所で離着陸するために多少歩いても20分ほどで到着した。


 ダンジョン付近は小さめの屋台広場のような場所があった。出たなモグリ商人と思いながら一応一通り見て回った、飲み食い以外に武器防具の手入れや再付与など色々な屋台があるが、どこも一様に値段は高めだ。用はなさそうだと屋台広場に見切りを付け、ダンジョンへ入るためにギルドが作っている出張所のような建物でギルドカードを提示し手続きを行う。


 干城と奈津希のことを周りのフリーランサーはダンジョンを見に来たランクEの子供とでも思っていた。この見立ても間違ってはいない、13歳ならだいたいランクEかDだ。ギルドカードを提示したあと職員が止めないことでダンジョンへ入れるランクCだということに驚いた顔をしている者が数人いた。だがもっと驚いたのはギルドカードを見て手続きをしたギルド職員だろう、13歳のランクCフリーランサーでも驚愕だろうが、ランクB冒険者など誰も見たことがないだろうから。


 いよいよダンジョンに入る、干城もダンジョンというゲーム世界観に年甲斐もなくわくわくしたが、隣で奈津希は早く行けと言わんばかりの雰囲気だ、ラノベ好きならさもあらんと干城も思う。スライムは極力無視して2階層へ降りた。さあ、マッピングの始まりだ、羊皮紙に書くべきかと思っていたが頭の中でマップを構築できた。


(本当にこの脳と身体はどうなってるんだろう、便利なんだが本当に人間かと思ってもしまうな。この身体がこの世界の標準だったら文明や文化、科学なんかももっと発展してるだろうし、俺たちだけのチートで間違いないんだろうが。それならそれで俺たちは人間という枠内なんだろうか?)


 早歩きくらいのペースでダンジョンを練り歩く、途中下層に降りる階段を見つけたが、ダンジョンでマッピングを完了させるのはラノベの常識と奈津希の弁で下層に降りる気はない。干城もそれを了承しているので、この際効率よりダンジョンをアトラクションとして楽しもうとしていた。道中遭遇するゴブリンは干城が対処した。


「あっ、干城。また来たわ」

「はいはい」

『(フォルティアミグオン)』


 6体のゴブリンは発火して骨と魔石を残して燃え尽きた。


 光属性魔法と相性がいい干城が以前ラシーグルを討伐するときに効率を重視して考えた魔法で、マイクロ波を使って対象を発火させている。ダンジョンでは埋めなくても吸収されるが、だからといって何もせず魔石やドロップ品を放置するのはマナー違反として戒められているため。魔石を取り出す手間が省けるのでこの魔法でゴブリンを焼いていた。


 二人はマッピングを続け6階層に来たところで昼食にした。干城が空間収納から椅子とテーブルを出し、奈津希が用意したサンドイッチとカレーパン、緑茶で一息ついた。セーフティエリアではないので食事中もゴブリンはやってきたが、食事を止めることもなくフォルティアミグオンで撃退した。


 干城はふとグローブスフィアではダンジョンはどう見えるのだろうと思ったが、グローブスフィアは使えなかった。他も試すとバーチャルエリアも駄目だった。


「奈津希、ダンジョンではグローブスフィアとバーチャルエリアは使えないみたいだ」

「えっ!? そうなの……本当ね反応がないわ。やっぱりダンジョンって特殊な空間なのね」


「ダンジョンにバーチャルエリアみたいな、ものが持ち出せない特性があったからね」

「そういえばそうね、バーチャルエリアって広義ではダンジョンなのかしら?」


「お! それ面白い着眼点だね」

「アタシ達にもダンジョンマスターのスキルがあったじゃない、だから関係あるのかしらって思ったのよ」


 なるほど、流石ラノベ好きだと思いながら干城は考えてみた。だがすぐに諦めた。考えるための材料は少なく、スキルとか魔法とかダンジョンなんて科学や理屈が通用しない面が多々ある、理屈屋が考えたところで「下手の考え休むに似たる」だろうか。だがそこで考えを止めるからこそ科学の発展を阻害するとも思った。


 次の階層からはゴブリンではなくコボルトになったが、正直大した差はない。二人で話しながら散歩のようにダンジョンを歩きマッピングは順調に進んでいった。10階層に辿り着き大きな扉があった。奈津希はこれがボス部屋ね、ラノベの描写にありがちだわとテンションが上がっていた。


 ボス部屋の扉は大きさの割に軽く開いた。外から中に開く観音開きのドアで内側にとってがないないので、中からは開けられそうもない。そんな感想を考えていると奥にある二つの扉がシャッターのように上にスライドしてゴブリンとコボルトがうようよ出てきた。


「干城、流石にこの数だと匂いがキツイわ。早めにやっちゃって」

「匂いには同意するよ、獣臭さとも違う悪臭が酷い」


『(レーザーフォルテ)』


 干城は天井付近に大きめのミラーボールのようなリフレクターを展開して、レーザーを拡散反射させゴブリンやコボルトには頭上から光が雨のように降り注いでゴブリンとコボルトは溶けて蒸発するように消え、数秒でボス部屋はクリアになった。




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