【第五章】最初のダンジョン、俺は何もできなかった――最初は
初ダンジョン・初ボス登場!
ハルキのゲーム知識がさく裂します。
無事攻略できるのか? 生きて帰れるのか?
第五章です。どうぞ!
王都から北に二日歩いた場所に、〈封印の迷宮〉はあった。
入り口は古い石造りのアーチで、内部は完全な暗闇だった。じっとりと湿った空気が漂っていて、奥から低い何かの唸り声が聞こえた。
俺、シエラ、そしてガルドの三人パーティだった。
(三人パーティ。剣士・魔法師・……俺。役割、何だろう。)
「ハルキ。お前は後ろにいろ。絶対に前に出るな」
「分かりました」
最初の10分は何事もなかった。11分目に、天井から何かが降ってきた。
大きなクモだった。体長1メートルはある。八本の脚が床を叩く音がした。
ガルドが剣を抜いた。1秒後にはクモが2つに割れていた。
俺は後ろで見ていた。何もできなかった。
(……学校でも、こんな感じだった。みんなが普通にやってることが、俺だけできない感じ。)
迷宮の中層に差し掛かった頃、俺は気づいた。
床の模様だった。通路の石畳に、微妙に違う色の石が混じっている。ゲームで言うと――罠だ。
「待ってください」
俺は二人を止めた。
「この床、踏んだらまずいと思います。色が違う石だけ避けたほうがいい。罠のトリガーかもしれない」
ガルドが眉をひそめた。でも一瞬考えて、小石を拾って投げた。
石が床に当たった瞬間、天井から太い鉄の柵が三枚、勢いよく落ちてきた。
もし普通に歩いていたら、三人とも真っ二つだった。
「……ハルキ」
「はい」
「お前、歩きながら床を見ていたのか」
「なんとなく。ゲームで罠部屋はだいたい床に仕掛けがあるので」
その後も、俺は何度か「待ってください」を言った。
分岐路では右が正解だと言った。宝箱の前では、触るなと言った。ミミックだと分かったから。
そして最深部。ボスがいた。
┌─ 鑑定 ────────────────────┐
アンデッドナイト レベル:42
弱点:光属性、炎属性
特性:【不死】打撃だけでは倒せない
【魔力吸収】魔法の一部を吸収する
行動パターン:右腕→左腕→突進→タメ→強攻撃
└────────────────────────┘
(行動パターンが見えた。これ、ゲームで言うと――対処できる。)
「ガルドさん、あいつの攻撃は右、左、突進の順番で来ます。突進の後が唯一の隙です」
「……本当か」
「分析スキルがそう言ってます。シエラさんは魔法を溜めておいて、突進の直後に全力で撃ってください。ガルドさんは突進を避けて、同じタイミングで首を狙う」
戦闘が始まった。
右腕、左腕、突進――ガルドが横に転がり、シエラが両手を前に突き出した。
「――燃やし尽くせ、《インフェルノ》」
白い炎が迸った。アンデッドナイトの胴が光に包まれた瞬間、ガルドの剣が首を叩いた。
骸骨が崩れ落ちた。
ガルドがゆっくりと立ち上がって、俺を振り返った。
「……ハルキ」
「はい」
「お前、今日何回役に立った?」
「数えてないです」
「俺は数えた。六回だ」
ガルドが、初めて笑った気がした。
「剣も魔法もない勇者が、ここまで使えるとは思わなかった」
「使える、って言葉、学校で一度も言われたことないです」
「……そうか」
シエラが俺の隣に来た。
「すごかったです、ハルキさん」
「俺、何もしてないですよ。指示しただけで」
「指示ができる人が、一番大切なんです。本にそう書いてありました」
┌─ スキル習得 ─────────────┐
【戦術指揮 Lv.1】を習得しました
パーティメンバーの連携精度が上昇します
竹中ハルキ Lv.1 → Lv.4
└────────────────────┘
(ゲームと同じだ。一個クリアしたら、次がある。)
(でも今は――次が来るのが、少し楽しみだ。)
お読みいただきありがとうございました。
次の第六章はシエラの特訓回です。
シエラの過去が明らかになります。
ハルキとシエラの距離が、少しずつ縮まっていきます。お楽しみに!
感想をいただけたら嬉しいです。




