【第四章】夜の図書室で、俺たちは魔王を調べた
城の図書室で、ハルキとシエラは夜通し魔王の文献を調べます。
剣も魔法も使えないハルキにできることは、知識を集めること。
二人の距離が、少しずつ縮まっていく第四章です。
城の図書室は、夜になると静かだった。
蝋燭の明かりだけが揺れている。本棚が天井まで続いていて、どこからかインクの匂いがした。俺は机に資料を積み上げて、片っ端から読んだ。
シエラが向かいに座って、魔法で文字を手早く書き写していた。俺が読んで、気になった箇所を指差すと、彼女がメモする。そういう流れになっていた。
(攻略wikiを読み込む作業に似てる。ダンジョンに潜る前に、ボスの行動パターンを全部頭に入れておくやつ。)
三時間が経った頃、一つのことが分かった。
「シエラさん、魔王グラオスって――何百年も前から記録に出てきますよね」
「……そうですね。三百年前の文献にも、七百年前の記録にも」
「不死身ってこと?」
「魔王は肉体が滅んでも、〈核〉が残る限り何度でも復活すると言われています。でも〈核〉の場所は誰も――」
「魔王城の最深部、ですよね」
シエラが目を上げた。
「なぜ……?」
「RPGの鉄則です。ラスボスの弱点は、必ず本人が一番大切にしているものの近くにある。自分の核を一番遠くて守りが厚い場所に置く――でも、そこに置くということは、逆に言えばそこが唯一の弱点だということを自分で示してるんです」
シエラはゆっくりと、手元の紙に何かを書いた。それからペンを置いて、俺を見た。
「ハルキさん。一つ聞いていいですか」
「どうぞ」
「怖くないんですか」
俺は少し考えた。
「怖いですよ。めちゃくちゃ怖いです」
「でも、調べるのをやめない」
「やめたら終わりじゃないですか。ゲームでも、詰んだと思ったときに攻略サイトを閉じたら、もう二度と開かなくなる。だから閉じない」
シエラがまた、あの微笑みを浮かべた。蝋燭の光を受けて、金色の瞳がきれいだった。
(……なんで、俺、こういうこと普通に言えてるんだろう。)
「私も、諦めません」
シエラが静かに言った。
「召喚魔法の術者として、私にも責任があります。あなたを巻き込んだのは私たちですから。最後まで、一緒に戦います」
俺は頷いた。なんか、胸のあたりがむず痒かった。
┌─ 称号獲得 ───────────────────┐
【本の虫】を獲得しました
一夜に五十冊以上の文献を読破した者に贈られる称号
INT(知識力)+15 分析速度+20%
└─────────────────────────┘
朝になっていた。
(INT+15。やっぱり俺のステータスは、戦闘系じゃないな。)
でも、もう気にならなかった。
読んでいただきありがとうございます。
次はいよいよ〈封印の迷宮〉ダンジョン攻略です。
ハルキ・シエラ・ガルドの三人パーティで挑みます。
はたしてハルキは大丈夫なのか? ご期待ください!




