【第三章】「弱い」と言われたことは、もう慣れている
王国最強の騎士、ガルド・バルカンとの模擬戦。
結果は……まあ、想像通りです。
でもハルキは折れません。ゲーマーは詰んでも攻略サイトを閉じない。
第三章です。
翌朝、訓練場に連れてこられた。
王国最強の騎士、とやらが立っていた。ガルド・バルカン。年は三十代半ばくらい。身長は俺より三十センチは高い。胸が俺の額くらいある。
「まずは実力を見る。木剣で来い」
俺は木剣を受け取った。重かった。両手で持ってもぐらぐらした。
(ゲームだったら、ここでチュートリアルが始まって、適当に戦ってもなんとかなるやつだ。)
現実は、一秒だった。
ガルドが動いて、俺が吹っ飛んだ。それだけ。地面に背中を打ちつけて、空を見上げた。
「……立て」
「はい」
立った。また吹っ飛んだ。
三回目も、四回目も同じだった。五回目はガルドが少し手加減したのか、今度は倒れずに済んだ。ただし木剣は弾き飛ばされて遠くに転がった。
ガルドは腕を組んで俺を見下ろした。
「……正直に言う。お前は弱い。戦士としての素質はない」
(分かってた。)
「魔法は?」
「シエラが調べた。魔力がほぼゼロだ」
(分かってた。ステータスで見てた。魔力0って。)
周囲で見ていた騎士たちがひそひそ話していた。「これが勇者?」みたいな顔だった。
(慣れてる。その顔、クラスで毎日見てた。)
「お前に戦いは無理だ。正面から魔王に挑んでも死ぬだけだ」
「ですね」
「……諦めるのか」
「いいえ」
俺は砂を払って立ち上がった。全身が痛かった。
「ゲーム――戦略で言うと、弱いキャラクターが強い敵に勝つ方法は二つです。一つは、相手の弱点を突くこと。もう一つは、正面から戦わないこと」
ガルドが眉を動かした。
「魔王の弱点は?」
「まだ分かりません。でも、絶対にある。強い敵ほど、必ず穴がある。ゲームではそういうものです」
「……ゲーム?」
「こちらの話です。気にしないでください。」
しばらく沈黙があった。ガルドはじっと俺を見ていた。
やがて、ため息をついた。
「……シエラ」
「はい」
「こいつの護衛を頼む。どうやら、剣でも魔法でもない何かで戦う気らしい。巻き添えで死なせるな」
「……承知しました」
シエラが俺のそばに来た。
「ハルキさんは、私が守ります」
「ありがとうございます。あの、シエラさん」
「はい?」
「魔王について書いてある本って、城にありますか」
「……あります」
「全部読みたいです」
(攻略情報収集は、ゲームの基本だ。強くなれないなら、知識で補うしかない。)
┌─ スキル習得 ───────────────┐
【読書 Lv.1】を習得しました
書物からの情報収集速度が上昇します
【分析 Lv.1】を習得しました
対象の行動パターンを読み取りやすくなります
└──────────────────────┘
(……なんか、俺のスキルって、戦いと全然関係ないやつしか増えない気がする。)
それでも、増えた。
それだけで少し、前に進める気がした。
読んでいただきありがとうございます。
ガルドにボコボコにされたハルキですが、折れません。次は城の図書室で魔王の弱点を徹底調査します。ゲーマーの本領発揮です。
シエラとの夜の図書室、二人の距離が少し縮まるかもしれません。
感想・評価いただけると励みになります!




