15.回復魔法
「トライス殿下、今回は世話を駆けました。」
リアテムとミューリが会話をしているころ、ハロルドはトライスに声をかけていた。
「ハロルド、父も兄もいないんだいつも通りでいいよ。」
トライスは肩の力を抜くように言う。
「あ、ああ。本当にありがとう。恩に着る。」
「いや、礼は父と兄に言ってほしい。あの詭弁も段取りもすべて父と兄に相談したらすぐに答えを出してくれた。」
トライスは力なく笑う。
「しかし国王に相談してくれたのはトライスだ。トライスがあの場にいなかったらこうはならなかった。」
「まあ確かに。それはそうかもしれないな。」
二人が話しているとリアテムが近づいてきた。
「あ、あの…トライス殿下…本日は本当にありがとうございました。」
「お前らほんと似たもの同士だな。別れなくて正解だよ。」
深々と頭を下げるリアテムにトライスは苦笑する。
「そういえばハロルド、その傷いたくないのか?」
トライスは血の跡の残る口を指して言う。
「ん、ああ。まだ少し痛いな。腹の方は痛みは引いたが。」
「は、ハル…私が治してあげる。」
リアテムが赤らみながら言う。
「あ、いや…それはうれしいがここでは…」
ハロルドはなぜかごまかす。
「そういえばリアテム嬢が回復魔法使うの見たことないな。聖女様がリアテム嬢の回復魔法は彼女に匹敵するものだって言ってたから一度見たいと思ってたんだ。」
トライスが言う。
「あ、いや…彼女の回復魔法は…」
ハロルドはたじろぎながら言う。
「何か問題があるのか?本当は回復魔法が使えないとか?でも聖女様が妹も使えるって言ってたし…」
ハロルドはしばし考える。
「わかった…トライス、驚かずに見ていろよ。」
トライスはよくわからなかったが頷いた。
「リア、お願いできるか?」
「は、はい!」
返事をするとリアテムはおもむろにハロルドと口づけを交わす。
「え?おい…え?」
回復魔法を見せてくれると言ったのに突然キスをする二人に状況が読み込めず困惑するトライス。リアテムが唇を離すとハロルドの体が光る。光が収まると腫れていた顔が元に戻っていた。
「え?どういう事だ?」
「あの…私たち姉妹の回復魔法は体を接触させて発動させるものみたいなんです。姉は手から私はその…唇から…」
リアテムが恥ずかしそうに俯く。それを聞いてミューリが回復魔法をかけるときは相手の患部に触れていたなと思いだす。
「あ…あぁ~…なるほど。あぁ、それで何回もキスをしているという事か。あ~、なるほど?そもそも何でわかったんだ?」
トライスは納得いくような、いかないようなで混乱している。
「その反応はよくわかる。まあ、リアが回復魔法を使えるとわかったのも偶然だしな。」
ハロルドが頬をかきながら言う。
「は?どういう事だ?」
「まあ追々教えてやるよ。機会があったらだけど。」
本当は今知りたいという気持ちもあったがトライスは赤らむ二人を見て追及をやめた。
「まあいい。それより家族が待ってるぞ。行ってやれ。」
トライスはハロルドの背中をたたき、扉の付近で固まっていた家族の元へ送り出した。




