13.プロポーズ
国王に問われてリアテムは一呼吸置いた。
「私は…どんなことがあってもハロルド様をお慕い申し上げております。」
リアテムの頬に涙が流れる。
「その契約があるから…しょうがないと…お父様を困らせてはならないと思ってました…」
「ふむ。その涙を見て本心だと理解しよう。そして、契約を盾にヴィッジマーラ殿が自分の都合のいいことを話したと。」
「ち、違います!私はそんな…」
ヴィッジマーラが口をはさむが国王は続けた。
「もちろん証明する術などない。しかしそれはお互い様だ。もし自分が言っていることが事実だというのであれば次は裁判を行うことになるな。そこでは証拠がすべてであり、その内容は公開される。」
ヴィッジマーラは息をのんだ。これは警告だ。今引けば公にはならないと…
「リア…」
呆然とするヴィッジマーラを無視してハロルドはリアテムの前に出た。
「ハル…」
リアテムは目をそらした。ハロルドはリアテムの手を取る。
「リア…俺は自分が情けない。君がどんな思いでこんなことをしたのか考えなかった。君がそうしたいのだからそうすればいいと、すべてを受け入れることが大事な人を守ることだと考えていた。」
「ハル…ごめんなさい…私も相談すればよかった…自分勝手に決めてあなたを傷つけた…」
リアテムの涙が再び頬を伝う。
「リア…いや、リアテム・ルーテル嬢。貴族としても、領主としても未熟な私だがずっと側にいてほしい。私と結婚してくれないか?」
ハロルドは跪きリアテムを見上げた。
「はい…私なんかでよければ…」
リアテムは涙を流し笑顔で答えた。そしてその場の全員から拍手を送られる。いや、一人だけ納得いかないものがいた。
「ふざけるな!!こんな茶番認められるか!!」
ヴィッジマーラが雄たけびを上げ、リアテムを掴み無理やり引き寄せる。
「ヴィッジ!何をする気だ!!」
ハロルドが2人を引き離そうと近寄るがヴィッジはハロルドを蹴り、ハロルドは後ずさってしまう。
「相変わらず弱弱しいな!そのせいで最愛の女性を守れないんだから自分を呪うといい!」
「何を…」
ハロルドが言い終わるか否か、ヴィッジマーラはリアテムの顎を掴み、無理やり唇を奪ってしまう。その場にいた全員が驚愕で目を見開く。離されたリアテムはへたり込んでしまう。
「は~はっはぁ。残念だったなハロルド。リアテム嬢の初めての相手はお前ではない!このヴィッジマーラ様だ!お前はキズモノにされたご令嬢でも快く迎え入れるのかな!?」
ヴィッジマーラの高笑いがこだまする。その場には驚愕な表情を向ける王家の面々と呆れを見せる婚約者の関係者たち。その表情の違いにヴィッジマーラはたじろぐ。
「…ヴィッジ…正直恥ずかしい話だから家族以外知らないことなんだが…俺とリアは…その…何度もしている…」
ハロルドはわずかに赤らみながら言う。リアテムを見ると同じように目をそらしながら赤らんでいた。後ろではウェイラと二人の父親、聖女ミューリも頷いている。
「この…この…あばずれが~!!お前のように穢れた女を私は…」
どの口が言っているんだと誰もが思った。
「だが、リアに傷をつけたのはその通りだな。ヴィッジマーラ、お前に決闘を申し込む。」
ハロルドはポケットにしまっていた手袋をヴィッジマーラに投げつける。ヴィッジマーラは床に落ちたそれを拾い上げた。しかしそのことに異議を唱えたのはトライスである。
「ちょっと待てハロルド!いくら何でも決闘は駄目だ!お前が負ければリアテム嬢はおろか伯爵の地位すら失うぞ!!」
決闘にかけるものは己の意地とプライド。負ければ相手が望むものすべてを渡すというものだ。
「構わない。それだけの覚悟だ。」
トライスはチラリと国王を見る。国王は頷き、やらせるよう合図した。
「…お前の気持ちはわかった…少し待て、場所を広げる。」
トライスは外にいた使用人に命じて部屋にあった装飾品を危険がないように持ち出させた。




