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婚約破棄された伯爵令息はもう一度彼女にプロポーズをする  作者: あうまる


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11/18

11.話し合い 1

 そして話し合い当日、ヴィッジマーラは焦っていた。予想外の事が起きたためだ。


「さて、みなそろったな。それではこれよりリアテム・ルーテル令嬢による婚約破棄に関する一連の内容を確認させてもらう。」


 そう口を開いたのは国王だった。なぜ国王がここにいるのか?ヴィッジマーラの疑問は尽きない。この場にはあの舞踏会で対峙した面々や両伯爵のほかに国王、王太子、聖女も参列している。


「へ、陛下…まずはなぜ陛下がこちらにいらっしゃるのか聞いてもよろしいでしょうか?」


 疑問を持ったまま話を進められない。そう判断したヴィッジマーラは国王に問う。


「おお。そうだな。まずはそのことから話をしよう。」


 国王は咳払いをする。


「リアテム・ルーテル令嬢は我が王家に連なるものになる。」


 それを聞いてヴィッジマーラは息をのむ。なぜ?もしかしてリアテムは王家の隠し子だったのか?あたりを見ても誰もが驚愕の表情をしている。父親のドーフェでさえ。


「リアテム嬢の姉、聖女ミューリ嬢は我が息子で王太子のギュライアスと婚約しており、事の次第によってはミューリ嬢の名誉にもかかわることになる。これがもし結婚をしていればミューリ嬢の名誉が多少汚されていても王家となっていれば問題はなかった。しかし、今回の事により彼女の名誉が汚されれば王家としても彼女との婚約も考えなければならなくなる。よって、今回は私が指揮を執り話し合いの場の議長とさせてもらう。」


 詭弁だとヴィッジマーラは思った。さすがに無茶苦茶すぎる。確かに今回のやり取りでリアテムどころかルーテル伯爵家の名誉が汚される事態になれば姉のミューリの名誉も汚されるというのはあるだろう。だがミューリは聖女だ。多少名誉が汚されようと王家は構わず王太子との婚姻を認めるだろう。はっきり言って詭弁以外の何物でもない。しかしヴィッジマーラにそれを覆させる言い訳は思いつかなかった。こんな事なら自分の父親にもついてきてもらうのだった。今回の騒動に父親は関与していなかったため自分しか呼ばれていない。


「皆が理解したところで話を本題に戻そう。まずはリアテム嬢、事の顛末を話してくれないか?」


「は、はい!」


 リアテムは一礼してあの日の社交会で起こした出来事を語る。


「なるほどなるほど。して、リアテム嬢。ハロルド殿が婚約者としてふさわしくないという理由、そこにいるヴィッジマーラ殿に対する嫌がらせを行ったと言っていたがそれははっきりとそうだと答えられるのか?」


 国王は問い詰めるでもなくにこやかに聞いている。国王らしくない国王と言われた彼らしい問いかけだ。


「は、はい…ヴィッジマーラ様にハロルド様より受けた嫌がらせを記した証拠を、日記を見せていただいたので…」


 リアテムは震えながら言う。嘘をついて怖いわけではなく、初めて国王に対峙して緊張しての震えだ。


「そんなに震えなくても大丈夫だ。この場は裁判の場ではない。」


 国王は眉をひそませながら言い、リアテムを落ち着かせる。


「ヴィッジマーラ殿、その証拠、もちろん持ってきているだろうね。」


「は、はい!もちろんでございます!!」


 突然声をかけられヴィッジマーラは叫ぶように答える。そして国王に自分が学生時代につづった日記帳を差し出す。


 国王は日記帳をめくりいくつかの部分にしおりを挟んでいった。


「さて、ざっと目を通しただけだが確かに数か所ハロルド殿に嫌がらせのようなものをされたと綴ってあった。これに対して異論はあるか?」


 それに答えたのはハロルドではなくウェイラだった。


「兄上に代わり答えさせていただきます。兄上は確かにヴィッジマーラ殿とトラブルがあったことは事実です。しかしそれはヴィッジマーラ殿が他生徒に嫌がらせをしてそれを兄上が咎めたためです。」


「なるほど。ヴィッジマーラ殿、そう言われているがどうかな?」


 国王はヴィッジマーラに視線を移す。


「わ、私は他生徒に嫌がらせをしたことなどありません。言いがかりでございます。」


 ヴィッジマーラは焦ったように言う。


「ヴィッジマーラ殿に嫌がらせを受けたと証言をしてくれる在学中の生徒と、退学してしまった生徒の一覧です。さらに一部ですが日時を覚えていた人もいたためその人に詳細を聞いたものをまとめたものをこちらに。」


 ウェイラはまとめた資料を国王に渡す。それはトライスは王家が介入できることを知った直後、退学者の名簿を取り寄せ、それをもとに退学者に話を聞きウェイラに渡していた。


「事の起こりから一週間しかなかったのによくもまあここまで集めたものだ。ふむ…」


 証言の内容を数枚めくり、何かを確認するようにヴィッジマーラの日記帳を再び見る。


「なるほど、二日だけだがハロルド殿に嫌がらせを受けたとされる日と、この証言の日付に同じ日がある。たしかにこれならハロルド殿はヴィッジマーラ殿に咎められただけとも取れる。」


 ヴィッジマーラの表情が曇るが次の国王の言葉で晴れ渡る。


「しかし、他の日に嫌がらせをされていないという証拠にはなりえない。確かにこちらの証拠を見ればヴィッジマーラ殿が他生徒に嫌がらせをしていたと断定するには十分かもしれない。しかし、今回問題視されるのはハロルド殿がヴィッジマーラ殿に嫌がらせをしたか否かだ。していないという事を証明するのは難しい以上、こちらの日記帳に問題がないことを証明しなければならない。」


 国王がため息をつく。


「先ほど言った通り、ここは裁判の場ではない。これ以上はリアテム嬢がこれを見てハロルド殿を婚約者としてふさわしくないと決断したその気持ちを尊重する以外にどうしようもない。」


 国王の言葉にトライスは落胆した。父ならヴィッジマーラの嘘を見破れると確信していたのに、嘘の可能性があるが、それが証明できない以上何もできないと言ったと同じだからだ。


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