死の館と霊能少年 プロローグ
久しぶりです!また少しの間彼らの物語にお付き合いください。
「なあなあ、この星行ってみたくねぇか?」
時間的には前回の2年ほど前、どこか遠い星の大きな図書館で一冊の本を広げる少年。
「急にどうしたんだよ?」
「退屈すぎてとうとう現実が見れなくなったか?」
少年に無理やり連れてこられた、少年の二人の兄弟は揃って訝しげな顔をする。
「そうじゃ……いや、そうだな、退屈なんだよ!親父やジジイはいつも仕事ばっかだし勉強も飽きてきたし、ここらで一つ刺激が欲しいんだ!」
少年はイライラしながら話す。
「『青と緑の星』なぁ……どうやって行くんだよ?」
青い髪の青年が少年に問う。
「ほら、この間親父がどこかの星に落ちてたとか言って星渡りの船を拾ってきてただろ?あれ使えば行けるんじゃねぇかな?」
「……だそうだけど、どうなんだ、ヒカドラ?」
青年がもう一人の兄弟である白い髪の青年、ヒカドラに尋ねる。
「馬鹿を言え。誰があれを動かすのかも、そもそもあれにその星の情報があるのかもわからないだろ
「アニキなら全部知ってるだろ?」
少年がニヤニヤと笑いながらヒカドラを見る。
「…おい、俺も初耳だなそれは」
青い髪の青年は少し不満げににらむ。
「……ったく、なんでお前らはそういうことは耳が早いんだ」
確かにヒカドラは知っていた。
なぜならばこの中で唯一、仕事をする身分であるからだ。それもこの星のシステム関連に関する仕事の統括者だ。少年の言う船とやらについても、立場上操作を試みたことがあった。
「大体、俺が許可を出すと
「出さねぇならこれ、ばらまいてやろうかなぁ~?」
青い髪の青年が一枚の紙をひらひらと動かす。
「……アクルス、貴様……」
ヒカドラの本気の殺意が青年……アクルスを襲う。
「ハハッ、そう怒るなよ。脅してはいるけど本気じゃねぇさ。だってお前、最初っから反対する気ねぇだろ?」
アクルスは少し笑みを浮かべるヒカドラを見ながら笑う。
「どっちみちお前が反対してもこいつはやるよ。下手なことされて余計に状況が悪化するくらいなら俺らで監視しとくのがいいと思うがね」
アクルスは笑いながらも冷静に諭す。
「……そういってお前も行きたいだけだな?」
「ご名答!」
「………一つ教えろ。刺激が欲しいというだけじゃないだろう。なぜそこなんだ?」
ヒカドラはしばらくの沈黙の後、あきらめたように問う。
「あの堅物国王が面白そうなんて書いてる星、一度は見てみたいだろ?」
少年は本を閉じ、表紙をヒカドラに向ける。
本の名前は『惑星探査日記』、著者はバスター・ドラゴ。
少年達の父親であった。
少年たちはそれからしばらく経った後、無事地球に到着した。
しかし、その生活は波乱の連続であった。言葉は通じず、常識もなく、持ってきた食料は尽き、食料の買い方も分からない。
そんな中で彼らは必死で適応した。言葉と常識を学び、食料を手に入れるため『何でも屋』という仕事を始めた。もちろん生活を支えるためにほかにも様々な仕事に彼らは取り組んでいる。
どうしてそうまでして異星で頑張るのか。
「……親父の本によ、書いてあったんだよ。『面白い星があった』ってな。元の星は別に悪かったわけじゃねぇけど、俺らには生活しにくくて仕方なかった。だからここらでいっそ、面白い生活ってのを送ってみたくなったんだよ」
少年は目の前の女性に話す。
「でも……龍なんですよね?」
女性…神奈川紗希は問いかける。
「ああ。本来の俺の姿は尻尾のある灰…いや、ちょっとくすんだ白くらいか。そんな色の肌と鱗の龍さ。ヒカルのアニキもマコトのアニキも、本当の姿は別だな」
少年は特に隠す様子もなく答える。
龍。西洋ではドラゴンともいわれるそれは高い知能と大きな体、そして爬虫類のような鱗や皮膚に火を噴く、翼で空を飛ぶ、高い魔力を持っていて魔法を使うなどと言われる存在である。
「龍が人の生活に興味を持ったら変か?差別か?」
少年が少し不満そうに尋ねる。
「そうじゃないですけど……」
でも龍としての生活の方が面白そうではないだろうか。そう女性は言いたかった。
「いろいろあるんだよ。気軽に友達作ったりとか、一緒に勉強したりとか、そういうことが俺だってしたかっただけさ」
少年はそういって立ち上がる。
「いろんな奴に会っていろんな世界を見てみたい。それが俺たちがここに来た理由だ。その為の『ブラックバスターズ』だ。またなんか困りごとがあったら御贔屓に、ってな」
少年は最後にそう言って笑う。
彼の名前はクロニクル・ドラゴ。物語の名を与えられ、本来ならとある星を治める立場になるはずであった、正真正銘本物の龍で、本物の王子様である。
彼らのスタート点のお話でした。次回より時間軸は前の続きに戻って新たなお話のスタートです。それではまた!
追記(2022/07/16):設定上、人化術は生まれた星で身につけているため矛盾する部分を修正しました。申し訳ございませんでした。




