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ブラックバスターズ  作者: 岩魚
物語の始まり
20/116

物語の始まり おまけ

おまけという名のあれこれです。最後に書き忘れ……ゲフンゲフン 話の都合で描かれなかった部分についてのお話です。それではどうぞ!

閑話1・形見


「行ってきます、お父さん、お母さん、おじさん」

 ある日の朝、私はお父さん達の遺影に手を合わせてからマンションの一室を出て大学に向かう。

 前までは遺影しかなかったけど、今はお父さんの形見も一緒に飾ってある。

 形見……とは言っても、ハイビーストじゃない。あれはあの後、田中さんに渡しちゃったから。

 今飾ってあるのは一枚の紙だ。お父さんが田中さんに向けて書いた、本当なら燃やすべきはずの紙。



「奴の指示は紗希、お前が平穏に生きられるようにする事だ。その紙一枚誰かに盗まれたとて秘密がバレる事はないだろう。だからお前が持っておけ」

 田中さんはそう言って私に緑の便箋を一枚渡してくる。

 その最初には、田中さんが書いてあることを伝えるように書いてあった。

「知らん。勝手に死んだのは奴だ。指示を聞くかは俺の自由だ、そうだろう?」

 田中さんは顔を背けながら冷たく言い放つ。きっと本心のところでは私に直接見せるために持っていてくれたんだろう。

 こういう姿を見てると、田中さんが本当は怖い地球外生命体だということを忘れてしまう。

 私は少し笑顔になりながら便箋を読んだ。

『紗希、もしお前が直接これを読んでいるなら、田中は私の予想通りの生命体だったということだろうな』

「プッ」

「何だ急に」

 どうやらお父さんにはお見通しだったらしい。

『紗希、私はお前に酷いことをした。内容は言えないが、そのせいでいつかお前が苦しむ日が来るかもしれない。もしかしたらこれを見るときにはその事を知っているかもしれない。私も隠したつもりだが、たまに夜こっそり起きていた事、お父さんは知っていたからな?』

「…………」

 怒るわけじゃないけど。

 それなら一緒にいて欲しかった。

 もっと話していたかった。

 私は………寂しかったのに。

『それは許してくれ。お前に構えば構うほど、私はお前と別れるのが辛くなる。私達夫婦にとって最愛の娘だ。本当はもっといっぱい愛してやりたかった。もっといろんなところに連れて行ってやりたかった。もっと…成長を見たかった』

「!!」

 お父さんの文章に私は驚く。初めてだった。初めて、本心を聞いたのだ。

『だが、悟ってしまった。私はおそらく間に合わない。田中に会って、ようやく可能性を掴んだ。もう少しでお前を幸せにしてやれると、全て終わらせられると、そう思った。だが奴らはそれまで待たないだろう。私が終わらせる前に行動に出るはずだ。感傷に浸っている時間はなかった』

「?」

 話が見えない。全て終わらせられるとは、どういう事だろう?

 私は考えた。考えて、一つの答えに辿り着く。

 彼女。私の中にいた、私ではない何か。

 ハイビーストが生まれる原因となった存在。

 空間が割れたあの時、彼女の最後の声を聞いた。

『ごめんね。奴の言う通り、僕は君の話を聞かなかった。君の想いを見なかった。自分勝手に、君を振り回した。君はそんな僕すら心配してくれるんだね。……ありがとう。それから……バイバイ。もう、僕の役目は終わりだ。でも、最後に一つだけ。君は死ぬと言ったけど、どうかこれからも好きなように生きてほしい。ここで終わりになんてしないでほしい。僕に、その姿を見せてほしい。もう、邪魔はしないから………』

 それが最後だった。

 消えたわけじゃない…とは思っている。だって彼女がいなきゃ私は生きられないはずだから。

 でも、もう話せることはないのだろう。

 これは仮定だけど。もし、お父さんの言ったことがあのことだったなら、ずいぶん時間はかかったけど、お父さんは私を、私たちをちゃんと救ってくれた……のかな。

『紗希、お前の近くに私達がいる事はもうない。だが、お前は1人じゃないはずだ。田中がいて、きっと友人もたくさんいるだろう。これからのお前の人生に光が溢れている事を、あの世から願っているよ』

「……お父さん………!」

 私は涙が止まらなくなる。

 もう二度と会えないけど。

 話もできないけど。

 最後に、お父さんからの愛を感じることができた。


「紗希ー、まだー?」

「あ、今行くー!」

 マンションの入り口から友人の声がする。火事に一緒に巻き込まれた子だ。

 あの後、店から抜け出せた私はすぐに救急隊に保護された。この子が呼びに行ってくれたのだ。

 私の上に乗ったテーブルを見て、自分じゃ助けられないと思ったらしい。だから私が店から出た時には泣いて謝られた。

 1人にしてごめん、怖かったよね、と。

 お父さんもそんな気持ちだったのかな。

「おい紗希、忘れ物だ」

 不意に私の後ろから声がする。田中さんが、手に弁当を持っていた。

 いや、それよりも。

「その仮面、どうしたんですか?」

 田中さんは顔にフルフェイスの仮面をつけている。友人もドン引きだ。

「仮面ではない。元々俺はこういう顔だ。いやというなら元に戻すが?」

 田中さんはヒソヒソと話す。

「元に戻してください」

「チッ、仕方ない」

 今舌打ちしました?

 前の特徴のない顔に一瞬で戻った田中さん。

 そうですそれでいいんです。こういうのはしっかりこれから教えていかないと。

 私の幸せの為にもね!


 手紙の最後にはある事が書かれていた。

『ちなみに、だ。まさかとは思うが、彼氏なんぞいるわけではないな?もしいるならすぐに別れろ。結婚なんてお父さん認めませんよ!ほら、そこに丁度良い地球外生命体がいるでしょ!彼しか許しませんよ!』

 亡くなったくせに随分勝手だとか、地球外生命体は丁度良くないとか、色々思ったけど。

 一番最初に思ったのは………

「これからずっと一緒に生活するんですから、しっかりしてくださいね♪」

 許可が出た。その一点だけだった。


 閑話2・事件後の彼ら

「まぁそりゃあ警察も張るよな」

「どうすんだよクロ。お前の荷物あの中だろ?」

 ボロボロの家の近くから警察に見られないようにひっそりとその様子を見ているクロとアクルス。

「他の荷物はいいのかよ?」

「良いも何も、食器など別に無くなったとて問題はない。問題なのはあの荷物にはクロの名前が入っている事だ」

 ヒカドラがため息を吐きながら話す。

 あの家は彼らの家ではない。アクルスの水の力で鍵の型を取り、ヒカドラが電気をこっそり引いて間借りしていただけのただの空き家である。

 しかしその空き家には、クロの名前……どころか中学の名前ががっつり入った、教科書入りのカバンが置いてある。十中八九もう見つかっているだろう。

「あの中には?」

「ある。が、警官が一人、二人……四人いるな」

 ヒカドラは光の力で周囲を探知し警官の数を把握する。

「四人か………」

「「……………」」

 …………。


「よし!無事に荷物も取ったし、家に帰ろうぜ!」

 クロは満面の笑顔で四人の警官が倒れて気絶する空き家を後にするのだった。


 時は変わって現在。クロたちと紗希、田中が再会した後の事。

「つまりここが本当の住所と」

「ああ。秘密だぞ?」

 クロがしーっとジェスチャーする。

「……ところで…」

「それなら知っている」

 買い物を終えてレジ袋を二つ抱えた田中と紗希は、クロたちの部屋のリビングで机に座りながらその上に置かれた新聞紙に目を向ける。

 そこにはヤクザや研究者たちのその後が書いてあった。

 ヤクザのグループは銃刀法違反と器物損壊、研究者たちもビルの器物損壊で逮捕された。余罪もたくさんあるようで追及が進むようだ。

「あの状況を器物損壊か……ま、説明できないよな、それ以外」

「それよりもだ……逃げる力なんて残っていたのかねぇ?」

 ただし、一人だけ。ヤクザの若頭……アクルスが相手をした男だけは現場におらず、現在逃走中とのことらしい。

「馬鹿言えよ、アニキたちまとめて紐で縛ったんだろ?仮に起きて逃げることができたとして、あいつだけ逃げるなんておかしいだろ。ほかに逃げたやつがいなきゃ」

「逃げたことに気づかれてないだけなんじゃ……」

 紗希が主張する。

「それはない……はずだ。警察がヤクザの構成員を把握してないなどということはないはずだし、俺の知る限り起きられたとしてもあの場から逃げられるほど傷が浅いやつはいない」

「……?ずいぶん自信なさげだな。なんかあんのか?」

 ヒカドラの態度をアクルスが疑問視する。

「……別にどうということはない。ただ、俺たちがあの場を離れてすぐに警察が来たはずだ。あの短い時間で俺たちに気づかれず逃げることはできないし、していたような気配もなかった。となれば……」

 ヒカドラはある可能性を想像する。

「……やめようぜ。考えたってしょうがねぇよ。仮にそうだとしてな」

 アクルスはやれやれと言わんばかりに夕飯の調理を始める。

「おい泥棒」

「いいだろ、お互いそれなりに面倒な関係なんだ、仲良くしていこうぜ?」

 もちろん紗希たちの買ってきた食料で。

「……なんかアクルスのアニキ見てたらこっちまで馬鹿らしくなってきたぜ」

 言い合いを始める二人を面白そうに眺めながらクロも食事の準備を始める。

「ええ~……」

「ったく、その意識がだな……」

 ヒカドラが小言をつぶやき紗希は彼らの姿にあきれる。

「さあ、今日もご飯はカレーだ!」

 彼らの悩みなどお構いなしに、アクルスは今日も、あの日のようにカレーを作るのだった。







「……ねぇ、確かに何とかしてほしいけど、本当に大丈夫なの?」

「……わからない。けど、彼ならわかってくれて協力してくれそうな気がするんだ」

 同時刻、どこかの家の寝室で、話し合う少年少女がいた。

「……あれが?ただの不良じゃない」

「そんなことないよ。彼……竜野君なら、きっと大丈夫さ」

これにて本当に第1章は終了です!第1章です、まだまだ続く予定です!

ここまで長い間読んでいただいている方、本当にありがとうございます!つたない文章で読みづらい部分も多いですが、それでも読んでいただけていることには感謝しかございません……!

私自身、投稿が不規則ですがこれからもお付き合いいただけますと幸いです。

最後に出てきた彼らは何者なのか、次章で明らかになります!少し空いてしまいますが、また投稿した時はtwitter(@ohiwanaaa)でもお知らせするのでお付き合いいただけますと作者は泣いて喜びます。それではまた……

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